今日は「パターナリズム」について考えてみたいと思います。

 

「いきなり何言ってんの?」と思う気持ち、わかります!(笑)

 

きっかけになったのは、NHK Eテレバリバラ(2023/1/6放送)で、
「NOTHING ABOUT US WITHOUT US! 国連勧告を受けて(1) どうする!?日本の精神医療」
を見たからでした。

NHK Eテレ バリバラ
https://www.nhk.jp/p/baribara/ts/8Q416M6Q79/

NOTHING ABOUT US WITHOUT US!(自分たちのことを、自分たち抜きに決めないで!)
このスローガンのもと
2006年に国連で採択されたのが、障害者権利条約です。
 

2014年に日本も批准したこの条約では、

障害があっても なくても
一人一人の尊厳が大切にされる世界を目指すこと

が目的になっています。
 

昨年2022年9月に、国連から日本に出された総括所見(勧告)では
冒頭このような懸念が示されたと、バリバラで紹介されていました。
※バリバラでは、わかりやすい文章にしていましたが、

 私はあえて、原文(英語)と日本語訳を載せます!

III.Principal areas of concern and recommendations
III.主な懸念事項と提言

A.General principles and obligations (arts. 1?4)
A.一般原則と義務(1~4条)

7. The Committee is concerned about: 
7. 委員会は以下の点を懸念している。

(a)Lack of harmonization of disability-related national legislation and policies with the human rights model of disability as contained in the Convention by pertaining a paternalist approach to persons with disabilities;
(a)日本の障害に関連する法律や政策が、
障害者に対する父権主義的なアプローチを取ることによって、
当条約に含まれる人権モデルと調和していないこと。

総括所見(勧告)の原文(英語など)は、こちら↓
https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRPD%2fC%2fJPN%2fCO%2f1&Lang=en
 

いきなり出てきた言葉、この「父権主義的(パターナリズム)」とは何でしょうか?
 

Wikipediaによると、

強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、

本人の意志は問わずに介入・干渉・支援することをいう。

と書いてあります。
 

例えば、医師患者の関係では、
医師=強い立場にある者、
患者=弱い立場にある者、

になります。

 

医師は、患者の利益(生存、健康)を保護するためであるとして、
医師患者に干渉し、患者の自由・権利に制限を加えることは当然だと思い、

本人の意思を無視する場合があります。
 

代表的な例が、「医療保護入院」です。
 

医療保護入院は、医師の診察の結果、
・精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者と診断され、かつ
・その病気のため任意入院が行なわれる状態にないと判定され、かつ
・家族等のうちいずれかの者の同意、または居住地の市町村長の同意がある

なら、患者本人の同意なしに、強制的に入院させることができる制度です。
 

任意入院とは、精神科病院への入院であっても、まず本人自身のインフォームド・コンセント(医療同意)を得ることを基本とした仕組みです。

上記の、任意入院を行うことができない状態には、本人が入院することを拒んだ状態も含まれます。

 

そもそも、インフォームド・コンセントとは、

医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。(医療法第1条の4第2項)

と法律で規定されています。
 

患者本人は、医師から治療方針の説明を受けて、納得をすれば、同意しますが、
治療方針に納得がいかないなら、その治療を拒否することができるのが、
あるべき姿というか、そういうルールなのですが、
医療保護入院」はこの医療法の規定に反することを可能とする"例外的な仕組み"
と言えるでしょう。

 

繰り返しになりますが、国連障害者権利条約は、
NOTHING ABOUT US WITHOUT US!(自分たちのことを、自分たち抜きに決めないで!)
がスローガンなので、
もちろん、「医療保護入院」もダメだし、
立場の強い人が、立場の弱い人に対して、上から人を見下すような「パターナリズム」にも懸念を示しているのです。
 

また、このパターナリズムは、「親切主義」と訳される場合もあります。

そこで、最近流行っているChatGPT(※)に、「親切主義とは何か?」と聞いてみました。
※AIを利用した自然言語処理ツール(現在は無料)
https://chat.openai.com/chat

 

ChatGPTは、

親切主義とは、障害者に対して特別な扱いをすることを意味します。
これは、障害者が自立して生活することができないと考えられるため、彼らに対して保護や援助を提供することが必要だと考えられるという考え方です。
しかし、このアプローチは障害者の人権を尊重しないため、障害者が自分自身で自立し、独立した生活を送ることを妨げる可能性があります。

と答えました。
 

そこで私は、

障害者が自分自身で自立し、独立した生活を送るためには、何が必要ですか?

と聞いてみました。
 

ChatGPTは、

障害者が自分自身で自立し、独立した生活を送るためには、様々な要素が必要です。それらには次のようなものがあります。

1.障害者に対する差別や蔑視をなくすことが大切である
2.障害者に対して適切なアクセシビリティーを提供することが大切である
3.障害者が自分自身を表現できる、自己表現を尊重することが大切である
4.障害者に対して適切な教育や職業訓練を提供することが大切である
5.障害者が社会と共に生きることができる環境を整えることが大切である
6.障害者が適切な医療やケアを受けることができる環境を整えることが大切である
障害者の自立と独立を支援するためには、これらの要素をすべて取り入れたアプローチが必要です。

と答えました。
 

そこで私は、

認知症などの病気で判断能力が低下している人に対して、私たちは何ができるでしょうか?

と聞いてみました。
 

ChatGPTは、

認知症などの病気で判断能力が低下している人に対して、次のようなことができます。
1.理解を示す: 認知症の人は理解することが難しいため、わかりやすく説明しましょう。
2.時間をかけて話をする: 認知症の人は記憶力が低下しているため、話をする時間をかけましょう。
3.目的を明確にする: 目的を明確にすることで、認知症の人は何をすべきか理解しやすくなります。
4.寛大にする: 認知症の人は、判断能力が低下しているため、間違ったことを言うことがあります。それに寛大に対応しましょう。
5.支援を提供する: 認知症の人は、日常生活において支援を必要とすることがあります。そのような場合は、適切な支援を提供しましょう。
6.社会参加を促す: 認知症の人は、社会から孤立しないように、社会参加を促しましょう。
認知症は様々な症状を伴い、それぞれの症状に対しても異なる支援が必要です。

そのため、認知症の人に対してのサポートは、専門家によるアセスメント後に行うことが望ましいです。

と答えました。

 

ChatGPT、すごくないですか?!
 

話がそれましたが。。。

私たち支援者は、ふだん
相手の方にとって良いと思うこと(※)を、やってあげていませんでしょうか?
 

※相手の方にとっての「最善の利益」・・・この言葉も国連からの勧告(第12条の項)で懸念を示されていることは、以前のブログに書いた通りです。

 

今回の「パターナリズム」への懸念・勧告は、第1条~第4条に関しての指摘ですが、

それぞれ独立している様で、実は、第12条の懸念・勧告と関連性があるのでは?!

そして、相手の方にとって良いと思ってやってあげることって、
パターナリズム(親切主義)なのかもしれない!
と思いました。

本人が困っている状態であれば、助けてあげるのは当たり前ですが、
本人が困っていないのに助けてあげる行為は、余計なお世話なのです。

支援って奥が深いですね。。。