また成年後見制度に関するお話です。

みなさんは、生活保護の申請は、代理人では出来なかったことをご存じでしょうか?

 

生活保護手帳 別冊問答集には次の様な記載があるそうです。

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(あるツイッターに投稿されていた写真を勝手に引用…)

 

「民法における代理とは、代理人が、代理権の範囲で、代理人自身の判断でいかなる法律方位をするか決め、意思表示を行うものとされている」

※本人の意思とは関係なく、勝手にできると言いたいのか?

「生活保護の申請は、本人の意思に基づくものであることを大原則としている。」

「十分な意思能力がない場合は、生活保護法第25条の規定により、実施機関は職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない」

「以上のことから代理人による保護申請はなじまないと解することができる。」

 

この法律見解について、日弁連は意見書を出しています。

「代理人による生活保護申請はなじまない」とする厚生労働省の新設問答の削除を求める意見書~2009年6月18日日本弁護士連合会

 

これによると、「これは代理制度の解釈を誤り,その結果,市民の権利行使を制約するものであることから,前記問答を直ちに削除するよう強く求める。」

と書かれていますので、結構怒っていることがわかります。

 

これを踏まえて、先日令和3年9月15日に開催された厚生労働省の有識者会議、成年後見制度利用促進専門家会議 第2回運用改善WGに、

参考資料4として、「生活保護問答集を改定しますと、9/1に通達を出しました」、と報告がありました。

9月1日に通達が出ており、成年後見人が保護申請できるようになるのは、10月1日からになります。

資料はこちら

新旧対応表はこちら↓ 左側が改定後、右側が現行です。

原則として、代理人申請はなじまないけど、

成年被後見人は事理弁識能力を欠く常況にある人だから、保護申請の判断能力がない、

かつ

成年後見人の代理権には財産管理も含まれている、

だから、成年後見人による保護申請は有効なものとして取り扱うこととする。

と変更されました。

 

何がきっかけで厚生労働省を動かしたのかは不明ですが、

9月15日の厚生労働省の成年後見制度資料促進専門家会議では、専門家会議の委員の1人である司法書士の西川委員から、この問題点を指摘した資料が提出されています(ただし9/1連絡で解消)

なので、もしかしたら、これがきっかけになった、のかもしれません。

 

↑資料3 有識者等報告資料「専門職団体(リーガルサポート)から見た現状と課題」(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート 副理事長  西川 浩之 氏)から一部抜粋

 

ただし、生活保護の代理人申請、注意しなければならない点があります。

・本人の同意があることが望ましい。

・出来るのは成年後見人のみ。保佐人、補助人は今まで通り代理人申請はできません。

※ただし、本人自らの意思で記載した申請書を代理人が提出した場合は、「使者」となるため、申請は有効となりますので、注意が必要です。

 

使者(ししゃ)とは、本人が既に決定している意思を相手方に表示、または本人の意思表示を相手方に伝達する人のこと。(Wikipediaより)

 

生活保護の制度が良い方向に改善されていくのは、良いことですね。