地元市民後見団体の内部勉強会で、最高裁「市民後見人の選任の拡充に向けた取組」について、意見交換をしました。

参照⇒資料1-2 市民後見人の選任の拡充に向けた取組(最高裁判所)[PDF形式:209KB]
 

この資料は、2021年6月28日に開催された厚生労働省の専門家会議、第8回 成年後見制度利用促進専門家会議(web会議)の資料で、最高裁から提出されています。

 

なぜ厚生労働省の専門家会議に最高裁が出席しているかというと、専門家会議の委員の1人として、最高裁判所事務総局家庭局長(現在は手嶋あさみ氏)が選ばれているからです。

 

提出された資料はこちら↓

 

資料を見ていただくとわかりますが、現在専門職後見人が選任されているケースにおいて、
選任当初にあった課題が解決している等の理由で、専門職でなくても良いケースがあるので、それなら、専門職後見人から市民後見人に後見人をリレー(交代)してもらおう、という提案です。
 

どうして市民後見人を活用しようというアイデアが出てきたのでしょうか。

実際、市民後見人 の選任は311件(令和2年)しかなく、養成者数と比べても、他の専門職に比べても、市民後見人の選任された数は少ないのです。

 

成年後見関係事件の概況(令和2年)より、8-1 成年後見人等と本人の関係より、親族以外を100%とした場合の割合↓

この少ないのは令和2年に限られたわけではなく、市民後見人の集計が始まった平成23年以降、最高に多い時で、320人(平成30年)となっています。

 

では、どうして市民後見人が選ばれることが少ないのでしょうか?

原因として考えらえるのは、以下です。

①市民後見人を養成している市町村がまだ少ないため。

②市民後見人が選任されるための条件があるため。

 

①例えば川崎市の場合、川崎市社会福祉協議会が市民後見人の養成を行っていますが、

人口の多い市町村では市民後見人の養成をしているが、人口の少ない市町村では市民後見人の養成をしているところが少ない傾向があります。

 

②川崎市の場合ですが、市民後見人が選任される条件として、以下があります。

 ・首長申立てである(親族照会したが、申立てをすることや後見人になることに協力してもらえなかった)

 ・本人の財産が少ない(300万円以内)

 ・本人が施設入居中または入院中であり、困難事例ではない

川崎市では年間40~70件ほどの首長申立てがありますが、さらにこの条件にあった人がいないため、市民後見人が選任されたケースは数件~10件程です。

 

現在、厚生労働省の専門家会議では、次期基本計画についての検討を行っているところですが、

中間とりまとめでは、適切な後見人の選任、地域住民同士が支えあう 地域共生社会 の実現のために、市民後見人の育成・活用の推進が望まれている、という指摘があったため、最高裁がこの資料を提出したのです。

 

うちの会のメンバーには市民後見人が何人かいますので、定例会の内部勉強会の時に、この資料についてどう思うか聞いてみました。

 

うちのメンバーからは、以下の様な意見が出ました。
・後見人は1度決まるとほぼ交代できないと言われており、適切な後見人をつけるという意味では歓迎したい。
・川崎市の市民後見人のフォローアップ研修の中で、川崎市で後見人を社会福祉士→市民後見人に交代した事例が紹介されていた。
 川崎市ではすでに実例があり、流れとしてやりやすいのかもしれないと思った。
・私も後見信託の利用を条件として、専門職後見人→親族後見人へリレーした経験があるので、市民後見人に限らず、状況に応じてふさわしい後見人にリレーすることが今後広まっていけば良いと思う。
・川崎市の場合中核機関は川崎市社会福祉協議会がやっているが、専門職との力関係では、専門職の方が上なので、社会福祉協議会が後見人を誰にするか決めることはできないのではないか。
 首長申立て案件など、社会福祉協議会が担当している案件だったら、希望は言えるとは思うが。
・市民後見人が選任されるケースは、川崎市の首長申立てで、本人資産が300万円以内で、施設入居中または入院中で困難事案ではないことが条件になっている。
 リレーで市民後見人になっても、選任当初の財産調査とか大変なことはしないので楽かもしれない。
→市民後見人が最初に選任されるケースでも、あらかじめ財産調査とか身辺調査は役所である程度やってくれるので、財産調査はしない。
・市民後見人が選任される条件として本人の財産の金額制限があるので、本人に財産がたくさんある場合は、後見信託または後見預金に大部分の財産を移してから市民後見人に引き継ぐこともあるのではないか。
・後見人を辞任するときは、辞任許可の申立てと選任申し立てとセットで申立てをする必要があるため、基本的には、次の後見人の調整をしてから辞任するのではないか。
・弁護士さんが高齢で辞任する場合、(仲間の)弁護士が引き継ぐことは聞いたことがあるが、他の専門職に交代する例は聞いたことがない。
→詐欺に合った方の案件で、最初弁護士が後見人になり賠償請求とか裁判を担当したが、ひと段落ついて社会福祉士に後見人を交代した案件があると聞いたことがある。
・次の後見人を誰にするかは、中核機関が決めることは難しいのではないか。
現在、後見人になっている専門職後見人が自分の案件を簡単に手放すとは思えない。
 中核機関はすべての案件を認識していないので、すべての案件を知っている家庭裁判所が言い出しっぺになり、家庭裁判所から、中核機関、専門職後見人などに相談するべきだと思う。

→後見制度支援信託の場合は、あらかじめ口座開設したら親族に後見人を交代してくださいねと、専門職が選任されるとき通知があったので、事前に言われていればスムーズかもしれない。

→問題が解決すれば交代させられるとわかっていれば、わざと時間稼ぎするかもしれない。
・中核機関がきちんと機能するかどうかによって、大きく変わる可能性がある。
→現在は、各自治体によって受任者調整をする中核機関と、受任者調整しない中核機関がある。
 川崎市の中核機関(川崎市成年後見支援センター)では、月1回法律・福祉の専門職団体等と「受任調整会議」を開催することになっている。

 

以上です。

みなさんは、この資料についてどのような意見をお持ちでしょうか?