4/17に、私が所属している地元市民後見団体の定例会がありました。

いつも内部勉強会を1時間ぐらい実施していますが、今回の定例会では、

「鹿沼市社会福祉協議会の使途不明金問題」をテーマに取り上げて、

意見交換会を実施しました。

 

ニュースの記事は、こちら↓
被後見人の311万円が使途不明 鹿沼市社会福祉協議会が発表 担当職員の自宅から通帳発見 Yahoo!Japanニュース

 

ニュースの概要は、↓こんな感じです。

・鹿沼市社協が法人後見している高齢男性名義の通帳2通から計311万円が引き出され、使途不明になっている。
・被後見人の通帳が職員自宅から見つかり、職員家族からの連絡で発覚。
・職員は現在入院中で、回復を待って事情を聴く予定だが、見つかった通帳は財産目録に載っていなかった。

・見つかった通帳は届出印が社協印に変更されており、本人家族は引き出せない状態。
・鹿沼市社協は全額補償する方針で、本人には伝えていないが、北海道在住の親族に謝罪したとのこと。
・家庭裁判所は、鹿沼市社協で受任している全16件について、後見人交代の手続きを進めているとのこと。

 

メンバーから出た主な意見・対策案はこちら。
1.鹿沼市社協のチェック体制に問題がある
・親族から引き継ぎ、財産目録の作成など、最初から1人で担当すべきではなく、複数人で担当するべき。

※川崎市社協の法人後見では、複数人で担当しており、弁護士のチェックもある。
・社協の印鑑の管理にも問題がある。通帳も金庫で管理しているはず。印鑑だけ借りた時点で怪しむべき。内部監査で気づくべきではないか。

→もしかしたらあらかじめ振込用紙を何枚か用意して、社協印を先に押しておき、あとから職員が自由に記入していたのではないか?

※川崎市社協では、印鑑を借りるとき「公印使用簿」に記入する手続きがある。
 

2.親族にチェックしてもらったらよかったのでは?
・親族は通帳を預けているので、作った財産目録などを親族に見てもらえば気づけたはず。

→社協には守秘義務があるので、むやみに提供してはいけないのではないか?
 

3.家庭裁判所がもっとちゃんとチェックしていれば・・・
・家裁への報告に不備があっても家裁が気づけないのは、監督していると言えない。

・金融機関は、名義や届出印が変更されたことを家庭裁判所と連携すれば、家裁も気づけたのでは?
→家裁は手間を省く傾向があるので、報告があっても何もしない可能性が高い。

→金融機関を個人情報を、家裁に情報提供しないのではないか?
 

4.担当職員の問題
・社協は担当職員の身上調査をして、サラ金に借金があるなどの状況があれば、担当から外すべき。
 

5. その他
・職員家族が連絡しなければ、最後まで気づかれなかったのでは?
・職員が隠していた通帳について、銀行に聞けば教えてくれるのでは?

→今回の事件は、親族も知らない本人名義の口座があった訳ではない。

→相続が発生した際には、相続人が関係がありそうな金融機関に聞きまわることはある。

→親族から通帳を預かる際、「本人名義の通帳は、これで全部です」ということで預かっているはずなので、それ以外に通帳があるかどうか調査はしないだろう。
・(百歩譲って)職員は、途中で財産目録に含めていなかったことに気づいたのでは?

→もしそうならすぐ家庭裁判所に報告するべき。3年間放置していたので、悪意を感じる。

・(百歩譲って)職員は、お孫さんにお年玉をあげたいとか親戚に香典を出すためにお金を引き出していたのかもしれない。
→もしそうなら3年間で36回計311万円も引き出す必要はないし、きちんと家裁に報告すべき。
 

この問題は、鹿沼市社会福祉協議会の問題ですが、法人後見をやっている団体にとって、”とても良い学習教材”になるはずです。

私が所属している地元市民後見団体では、法人後見は受任していませんが、違う団体で法人後見をやっているメンバーもしますし、市民後見人もいますし、私の様に親族後見人や、社協の生活支援員(日常生活自立支援事業でお金を引き出し届ける)をやっている人もいますので、今回の意見交換会はとても有意義な会になりました。


家庭裁判所の監督は、基本的に後見人から提出された書類をもとに行われますので、

今回のニュースの様に、隠した通帳を財産目録に載せないことをされると、家庭裁判所では気づきません。

家庭裁判所が気づくことができないため、国家賠償請求訴訟を起こしても認められないでしょう。

 

今回の時間は、法人後見だから複数人でチェックするなどの解決策を実施できますが、

通常の後見業務は、後見人が1人で実施しています。

上記の様に、家裁の監督には漏れがあるため、後見人をする人には、”非常に高い倫理観”が求められます。

 

今回事件を起こした社協の職員のように、成年後見制度をよく知っている人が、こうすれば家裁にバレずに不正ができると知っていて起こした事件なら、成年後見制度の根幹を揺るがす非常に悪質な事件と言えるでしょう。

私も母親の親族後見人をしているので、こういうニュースを目にするたびに、改めて身が引きしまる想いがします。