川崎市では、地域福祉の推進を目的として、川崎市地域福祉計画(以下、市計画)と各区地域福祉計画(以下、各区計画)に基づく取組を進めています。
令和3(2021)年度から令和5(2023)年度までの3年間は第6期として、市計画と各区計画を策定していました。
さらに、第6期市計画から新たに、「川崎市成年後見制度利用促進計画(案)」が策定されました。
 

行政がこのような施策を制定するときには、必ずパブリックコメント(意見)を募集して、
その一部を反映することになっています。
川崎市では、2月5日までの期間で、パブリックコメントを募集していました。

参考)第6期川崎市地域福祉計画(素案)及び各区地域福祉計画(素案)に関する意見募集について
https://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/350/0000122677.html

 

私が所属している市民後見団体でも、第6期川崎市地域福祉計画(素案)と川崎市成年後見制度利用促進計画(案)の
成年後見に関する部分を読み合わせして、市民後見団体からパブリックコメントを提出していました。

提出した意見に対する直接の回答はありませんが、確定した市計画を見れば、私たちの意見が採用されたかどうかはわかります。
うちの会から提出した意見は8件でしたが、ほとんどの意見が採用されていたように思います。
 

確定された市計画は、以下で見ることができます。
https://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/cmsfiles/contents/0000122/122677/00_20210331_shi_keikaku.pdf

 

この確定した市計画は、140ページ近くありますが、
成年後見に関係するところは、80~85ページになります。
 

市計画の素案と確定版を比べてみたところ、成年後見に関する主な変更点は、以下の通りでした。
80ページ (4)権利擁護の取組 の図


中核機関から家庭裁判所に延びる矢印の説明が、「市民後見人候補者」→「後見人等候補者」に変更になってます。
→当会からの意見(中核機関が行う後見人候補者選定の支援は「市民後見人」に限定されていない)が反映されました。
 

81ページ 1 川崎市成年後見制度利用促進計画の策定について
素案では計画を策定する目的が、国の基本計画で作れと言われたから作る、みたいな文章でしたが、以下の通り変更(追記)されました。

 

83ページ 4 基本的な施策と取組
素案では、チームの役割の中に、権利擁護が必要な人を早期の段階から発見するという地域連携ネットワークの役割が記載されていましたが、分割されました。
→当会からの意見が反映されました。

 

84ページ (1)権利擁護支援の地域連携ネットワーク
④に「不正防止効果」が追加

→当会からの意見が反映されました。

 

84ページ (2)④後見人支援機能
「また」から始まる文章(後見人の交代等)が追加されました。
→当会からの意見が反映されました。

 

提出したパブリックコメントがほとんど採用されたことは嬉しいことですが、
個人的に特に嬉しかったのは、(2)④後見人支援機能です。

「後見人との関係性が良くない場合は、後見人の交代等を検討し、家庭裁判所に情報提供する」、と明記されたことです。
 

残念ながら、今の成年後見制度の運用では、一度選任された後見人は、不正でもしない限り交代させることはできません。
なので、「関係性が悪くなれば、後見人の交代等を検討して家庭裁判所に情報提供する」と市計画に明記されたことは、とても大きな変化、と言えると思います。
 

市計画で「中核機関が後見人を交代させる」とは書けなかったのは、理由があります。

後見人を選任・解任することは、家庭裁判所の専権事項だからです。

しかし、利用者がメリットを実感できないような後見人等を選んでしまうことがあることは、専門家会議で指摘があり、家庭裁判所も認識しています。
なので、改善するために、本人にとって適切な後見人を、中核機関から候補者を推薦してもらい、それを家庭裁判所が選任することを目指しています。

もちろん、一度選ばれた後見人も、メリットを実感できない場合には、交代もあります。

↑R01.11.20 成年後見制度利用促進専門家会議 資料2より
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000568759.pdf


また、最高裁判所も、

適切な後見人等の選任,後見開始後の柔軟な後見人等の交代や,後見人等の支援を実現するためには,中核機関等と家庭裁判所との間で,本人や後見人等に関する情報を提供・共有することが必要不可欠

と、発表しています。

↑R01.11.20 成年後見制度利用促進専門家会議 手嶋委員(最高裁判所家庭局長)提出資料より

https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000567857.pdf

 

なので、中核機関が家庭裁判所に情報提供すれば、家庭裁判所が後見人を交代させることもあるのです。
 

成年後見制度は、メリットだけでなく、デメリットもたくさんある制度です。
国の基本計画で、「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」を提起していても、
市計画でそれが反映されていなければ、川崎市の中核機関(川崎市成年後見支援センター:R03/7月開設予定)が設置されても、以前と変わりません。
 

今回の市計画の変更は、「小さな一歩」にすぎません。
残念ながら、今年度の川崎市成年後見支援センターの運営事業仕様書には、後見人の交代については載っていません。
その理由は、市計画が確定する前に、川崎市成年後見支援センターの運営業者の公募が行なわれて、確定したためです。(ちなみに、運営業者は「川崎市社会福祉協議会」に決定)

それに、中核機関は、最初からすべての機能を実現しなくても良い、徐々に機能を増やしていっても良いとされています。
運営業者の公募は、次回は一年後にありますので、次回の運営事業仕様書が変更されるかどうか、チェックしたいと思います。