またまた成年後見制度の話です。

 

法定後見では、成年後見人等を選ぶのは家庭裁判所になります。

たとえ本人の配偶者や、本人の子供が、成年後見人等に立候補しても(申立書の後見人候補者欄に名前を書いても)、候補者が選ばれるとは限りません。

 

例えば、こんな場合には親族は選ばれない、と言われています。

・親族間で対立がある。 → 中間的な立場として、紛争に強い弁護士などが選ばれます。

・本人の財産がたくさんある。 → 親族がなると、横領するのではないかと思われます。

※ただし2012年以降は、後見制度支援信託または後見制度支援預金に大部分の財産を預ければ、親族が後見人になるケースが増えてきています。

・利益相反になる。 → 遺産分割を目的に子供が申立てした場合など。

 

また、以下のような、”そもそも後見人になる資格がない”場合も選ばれません。

・過去に後見人等を解任されたことある。

・本人に訴訟を起こしたことがある

・行方不明の人

・未成年者

 

「・・・と言われています」と書いたのは、具体的に、

・どんな場合は親族が後見人に選ばれるのか

・どんな場合は親族ではなく第三者が後見人に選ばれるのか

などは、家庭裁判所は公表していないので、正確にはわかっていませんでした。

 

ところが、2019.5.27に開催された有識者会議(第3回成年後見制度利用促進専門家会議)および、2019.11.20に開催された有識者会議(成年後見制度利用促進専門家会議 第3回中間検証WG)に、今後はこうやって選びますという資料が公開されています。

 

それがこちら↓

 

フローチャート(流れ図)になっています。

①本人のニーズ・課題の確認をして、親族等の後見人候補者がいるか確認します。

 「親族等の後見人とは、研修を受けた市民や法人を含む」と書いてあるので、市民後見人や法人受任団体も含むのでしょう。

 もし候補者がいなければ、第三者後見人を選任します。

 上記以外なら、②に進みます。

 

②親族等の後見人を選任していいか、確認します。

 もし親族間で対立があるなどの事情がある場合は、第三者後見人を選任します。

 上記以外なら、③に進みます。

 

③親族等の後見人候補者が、本人のニーズ・課題に対応できるか、不正行為の可能性を確認します。

 もし中核機関の支援があっても、対応するのが難しい場合は、専門職後見人を単独選任、または、専門職後見人と親族等後見人を選任して分担してもらいます。

 もし不正行為の可能性がある場合は、親族等後見人と専門職監督人を選任します。

 もし中核機関の継続的な支援があれば対応できる場合は、親族等後見人を選任します。

 

④選任した後も、本人のニーズ・課題・不正行為の可能性があるか、定期的に確認して、問題があれば専門職後見人に交代したり、追加選任したりします。

 

このような流れ図を書くのは、プログラマーの私にとって得意なことです。

プログラムを書くときは、○○をするとか、もし~~ならば、△△をする。そうでない場合は□□をする。というように、流れ図を書いておくと、そのままプログラムを書くことができます。

今年から小学校で必須となるプログラミング教育は、このような流れ図を書くことで、論理的に考える能力をつけるのが目的だと言われています。

 

この資料を作成したのは最高裁判所家庭局なので、家庭裁判所を中心に書いてあります。

まず親族等が後見人にふさわしいか判断し、ふさわしくなかったら専門職後見人をつけるという流れになっています。

 

ブログの1つ前の記事で紹介した資料でも、後見人の選任・交代について紹介していましたが、ちょっとニュアンスが微妙に異なることに気が付きましたでしょうか?

 

1つ前の記事で紹介した資料は厚生労働省が作成した資料なので、中核機関がどんな人がふさわしいか判断して、家庭裁判所に推薦して、家庭裁判所が最終的に決める流れでした。

 

中核機関はまだ整備されている途中です。中核機関がある市町村もあれば、ない市町村もあります。

まだ中核機関が整備されていない場所では、今まで通り、家庭裁判所が誰がふさわしいか判断しますが、中核機関が整備されている場所では、中核機関が誰がふさわしいか判断することになる、ということでしょう。