2020年最初の書き込みは、ツッコミどころが多い成年後見制度の話です。

 

2019.12.26に開催された有識者会議(成年後見制度利用促進専門家会議 第4回中間検証WG)において、任意後見制度の問題が取り上げられました。

資料はこちら→資料4 法務省における制度の周知、不正防止の取組の現状等

 

ちなみに、任意後見制度とは、本人が選んだ信頼できる人に頼む”契約”です。

何を頼むたいか、報酬はいくらにするか、契約書に記載して、頼む人・頼まれる人の双方が合意すれば契約成立です。

契約書は、公証人が作成した公正証書でなければいけません。

後に本人の判断能力が低下したら、任意後見監督人の選任申立てして家庭裁判所に選任してもらい、契約が発効します。

監督人には、弁護士、司法書士の専門職が選任されますので、資産にも因りますが報酬が発生します。

頼まれた人のことを、契約を結んだ直後は、「受任者」と呼びますが、契約が発効した後は「任意後見人」と呼びます。

任意後見人には取消権はありませんので、本人がした不利な契約を無効にすることはできません。(法定後見の後見類型なら、無効にすることができます)

すでに任意後見契約を結んでいる場合、後から法定後見の申立てをしても、任意後見の優先の原則があるため、法定後見の申立ては却下されます。(本人の意思を尊重するため)

ただし、「本人が不利な契約をすることが多いため」という理由ならば、任意後見契約済みでも法定後見に切り替えることができます。

 

任意後見契約を結んだのが、平均年齢80歳だったそうな。

このぐらいの歳になって初めて、自分が認知症になったときのことを心配する、ということがわかります。

 

任意後見制度には3つのタイプがあります。

(1)移行型・・・任意後見契約と一緒に、見守り契約、財産管理委任契約、死後事務委任契約を結ぶタイプ。財産管理委任契約を結んでおくと、本人の判断能力が低下する前から、本人の銀行口座からお金を下ろせることになり、誰もチェックできないため問題になっています。

(2)将来型・・・任意後見契約を結んだあとしばらく経ち本人の判断能力が低下してから、任意後見監督人を選任するタイプ。本来はこれを想定している。

(3)即効型・・・任意後見契約を結んだ直後に、本人の判断能力が低下したとして任意後見監督人を選任するタイプ。そもそも任意後見契約を結んだ時、本人に契約能力があったのか疑問があり、問題です。

 

平成30年10月~11月に結ばれた任意後見契約(約1900件)を調べたところ、移行型が75%、将来型が24%、即効型が1%という結果になったそうです。

 

親族に頼んだ人が70%、専門職に頼んだ人が17%、友人知人6%、その他団体6%という結果になったそうです。

 

一番左のグラフ、任意後見契約が11万件以上あるのに、監督人が選任されているのは3510件、たった3%しかありません。

※この監督人選任3,510件という件数、疑問があります。なぜなら、成年後見関係事件の概況によると平成30年12月まで利用者数2,611件でした。たった7ヶ月で約1,000件も増えるのは、今までの増加傾向から見ると、かなり異常です。

 

一番右のグラフ、本人死亡により登記が閉鎖されたときに、監督人が選任されていた割合が34%、監督人がいない状態の割合が66%でした。

認知症にならずに、ガンや脳卒中、心臓疾患などで亡くなることも考えられますが、契約開始が80歳ということを考えると、認知症になり判断能力が徐々に低下して、最期を迎えた人の方が多いはずです。(私の直感)

※認知症は正確には病気ではないので、死因ランキングに入りません。そのため、亡くなった時、認知症になっていたかどうかは、統計はありません。

 

それなのに、監督人が選任されていないということは、本人の判断能力が低下しても、監督人を選任していない受任者が多いと、容易に想像できます。

 

その理由として、任意後見契約の75%が移行型で、受任者は財産管理委任契約を結んでいるため、本人の判断能力が低下する前から、本人の口座からお金を下ろせるのです。

この移行型では、監督人を選任しなくても任意後見人の仕事ができます。

監督人がいないということは、受任者の仕事をチェックする人が誰もいないのです。

誰もチェックしないということは、横領してもわからない、横領し放題、ということです。

本人がチェックすれば良いと言う人もいますが、本人が認知症ならチェックできません。

 

逆に、監督人を選任すると、資産によりますが月1万円~の報酬がかかりますし、任意後見人は定期的に監督人に対して後見事務報告をしなければいけません。(仕事が増えます)

 

家庭裁判所は何をしているかというと、役所なので、監督人選任申し立てがあれば仕事をしますが、監督人選任申し立てがなければ基本”待ち”で、何もしません。

 

契約書には、本人の判断能力が低下したら監督人選任の申立てをする旨の記載があるはずですが、受任者は、契約通りにしていません。(契約不履行)

 

この任意後見制度の移行型の問題は、任意後見契約法に欠陥があると思います。

有識者会議でどのような対策が議論されたか、注目していきたいと思います。