先月、地元市民後見団体の定例会がありました。

私は、厚生労働省の有識者会議(成年後見制度利用促進専門家会議)ではこんなことを検討していると、「後見人等における意思決定支援の在り方の指針」についての資料を、コピーして、以下の様に説明しました。

 

・厚生労働省、裁判所、4士業団体、および、みずほ情報総研で、意思決定支援ワーキンググループを作って、検討中。

・検討する背景になったのは、民法第858条では本人の意思を尊重しなければならないと規定されていること、閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画には、意思決定支援の在り方の指針が検討されるべきと書いてある。

・基本計画のKPI(数値目標)として、来年3末末までに、指針が策定され、全国47都道府県で研修が実施されることになっている。

・意思決定支援は、特定の課題が生じてからいきなり意思決定支援をやろうと思っても大変なので、日頃から意思決定支援をする態勢づくりが必要。

・一番大切なことは、すべての人は、意思決定能力があることを原則とする、という点で、日本が批准している国連障害者権利条約に沿った形になっている。

・そしてある場面で意思決定能力が欠けると評価されても、将来に渡り同能力がないことにはならないこと。

・意思決定支援の方法はいろいろな方法があり、認知症の方だと「ゆっくりと説明する」「わかりやすい言葉で説明する」などがあるが、それ以外にも、「写真やイラストを使って説明する」などの方法もある。

・代行決定は、あらゆる手段を使っても本人の意思を確認できない場合に限定される「最後の手段」である。

 

この説明をした後に、会員のみんなから、質問・意見を話してもらいました。

ある会員からは、「後見人は代理決定できるから後見人だと思っていた。すべての人は意思決定能力があるというのは、衝撃的だ。」という意見がありました。

 

また、「私は知的障害の方を後見しているが、この人は、あ~、う~しか話せない。食事で何食べたいか聞くときは、さっき説明のあったようにイラストを使って、どれがいいか、どっちがいいか聞いている。これでいいのだろうか?」

みんなは、「すばらしい取り組みだ」と称賛していました。

 

またある会員(元市民後見人)からは、「本人は意思能力がない人だから、後見人は本人に確認せず、自分の判断で行動していいんだ」という意見もありました。

この人は私の話を聞いていなかった様です。私は「それは、民法第858条に違反していますよね?」と聞いたら、その人は黙り込んでしまいました。

市民後見人は、川崎市から委託を受けた社会福祉協議会の「市民後見人養成研修」を約1年間受けて合格した人ですが、民法第858条を知らないとは驚きでした。

市民後見人養成研修の講師には、多くは、弁護士や司法書士、社会福祉士などがなっていますので、弁護士会が弁護士に実施している研修や、リーガルサポートが司法書士に実施している研修も同様に、民法第858条を詳しく教えていないのだろう、と思いました。

 

それを裏付けるものとして、日弁連が取ったアンケートによると、「本人の意思確認をしない」「しないこともある」と答えた弁護士・司法書士は、65%(6250人)もいました。理由の多くは「本人は合理的な判断ができない/しにくいから」(75%)でした。

 

少なくともうちの会では、そんなことを言う会員は一人もいない、と胸を張って言えるようになりたいと思っています。