私は、母親の成年後見人をしています。

成年後見人は、「法定代理人」とされています。

でも、私は母親の代理人だとは思っていません。

 

※私は根っからの理系なので、このような言葉遊びみたいなことは苦手です。

 私は弁護士などの法律の国家資格を持っていない素人なので、間違いがあるかもしれません。間違っている部分があったら、教えてもらえると助かります。

 

代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」があります。

法定代理人・・・民法で定められた代理人で、「親権者」「未成年後見人」「成年後見人」がいます。「私的自治の補充」のために使われます。

任意代理人・・・法定代理人ではない代理人です。例えば、入院している本人の代わりに配偶者が、市役所で住民票などを取得する手続きをするのが、任意代理人です。「私的自治の拡張」のために使われます。

 

法定代理人は、法律の規定で代理権を持ちますが、任意代理人は本人から代理権をもらって代理人になります。

成年後見人、保佐人、補助人は家庭裁判所が選任した法定代理人ですが、任意後見人は、本人が選んだ任意代理人です。

 

また代理人は、代理権の範囲で、代理人自身の判断でいかなる法律行為をするか決め、意思表示をします。

すなわち、法定代理人は、本人の意思とは異なる法律行為(本人がした不利な契約を取り消すなど)ができます。この取り消す行為は、任意代理人にはできません。

任意後見人においても、民法第120条2項の場合は、取消権の代理権を付けることは可能。

 

2021.10.3追記

令和3年8月23日に開催された「第10回成年後見制度利用促進専門家会議」において、新井誠委員(中央大学研究開発機構教授、日本成年後見法学会理事長)より、以下の発言がありました。

任意後見人には,その固有の地位に基づく取消権は付与されていないが,このことは任意後見人にいかなる取消権も付与されていないことを意味しない。民法120条2項の「代理人」には任意後見人も含み,本人があらかじめ取消権を授権しておくことは可能であり,公証実務では既に承認され,登記の嘱託も受理されており,任意後見制度の利便性が高められている。

議事録はこちら。

以上のことより、任意代理人においても民法第120条2項の場合、取消権の代理権を付けることは可能、であると、訂正させていただきます。

 

 

民法第858条では、成年後見人は、本人の意思を尊重して、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない、とされています。

 

代理人自身の判断で法律行為をする部分と、本人の意思を尊重して法律行為をする部分は、本人の意思と代理人の判断が同じだったら良いですが、異なっていたら矛盾が起きます。

後見人は、どっちを優先したらいいんでしょうか?

 

成年後見制度のパンフレットには、「代理人」という言葉は出てきません。

判断能力が不十分な人を保護し、支援する制度だという説明になっています。

 

↓成年後見制度のパンフレット(法務省)

 

成年後見制度のパンフレットの多くには、成年後見制度のメリットはいくつか載っていますが、デメリットについては載っていません。

「後見人は、後見人自身の判断で法律行為を行うことができる」も、場合によってはデメリットになるからでしょうか?

 

「本人の意思を尊重する」ことは、言葉では簡単ですが、実際に認知症の方の意思を確認することは、ちょっとしたコツが必要になります。

 

私は、倒壊する恐れのあった実家の車庫(母親名義の不動産)を取り壊して、カーポートを建てる際も、母親に相談して許可をもらいました。

母親が大腿骨の骨折をしたときも、手術をするかどうかは姉から母親に説明して、母親の本人の意思で手術することになりました。(そもそも、成年後見人には医療同意権はありませんが)

 

私はこれからも、「私自身の判断で法律行為をする代理人」ではなく、「本人の意思を尊重する後見人」でいたい、と思います。