先日の意思決定支援の講演会・シンポジウムで、後半から出てきた社会福祉士さんが、こんなことを言っていました。
「これからの発言は、私個人の見解を示すものであり、私が所属している団体の見解ではないことをあらかじめ、ご承知おきください」
まぁ、これはよく聞く話です。
でもその後、「あれ?」と思うことが何度もありました。
この社会福祉士は、ぱあとなあ(社会福祉士の成年後見団体)に所属しており、ぱあとなあの法人後見を受任もしていると言っていましたが、「現在何十名も担当している」と言ったんです。
ぱあとなあの場合、ご本人に最低月に1回は直接会うルールになっています。
そして、受任している間は、ぱあとなあに月1回事務報告をしなければいけません。
ちなみに、家庭裁判所への報告は年1回、司法書士のリーガルサポートは6ヶ月に1回、行政書士のコスモスは、3ヶ月に1回ですから、かなりの頻度ということがわかります。
もし社会福祉士の後見人の場合、月1回以上面会していないとバレたら、後見人の交代もあり得るのです。
社会福祉士は、弁護士や司法書士と異なり、身上の保護が重視される案件を受け持つので、家庭裁判所は、最低でも月1回は面会することを期待して選任しているのです。
それなのに、この社会福祉士は、何十名も担当していると言いました。ありえないのです。
またこの社会福祉士は、閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画のこの図(↓)を引用しながら、
「後見人は支援者ではありません。月1回しか会わないのですから支援者にはなることはできません。支援するのはチームの役目であり、後見人の役目ではありません」と言い放ったのです。
「私が後見人になったら、まず最初にチームを作ります」
「チームとは、家族だったり、福祉サービス事業者、医療機関、相談支援専門員などであり、月1回しか会わない後見人は、チームに含まれません」と言いました。
そりゃぁ何十人も担当していたら、月1回しか会えないよな・・・。
でも、この図(↓)をよく見てください。
これは、厚生労働省のホームページからダウンロードした原本です。
一番下に「※チーム:本人に身近な親族、福祉・医療・地域等の関係者と後見人がチームとなって、日常的に本人を見守り、本人の意思や状況を継続的に把握し必要な対応を行う体制」と書いてあります。
ですが、社会福祉士が作成した資料には、この文章がまるごと削除されていました。
自分の見解とは違うから、削除したのでしょう。ひどいです。
この社会福祉士、良いことも言っていました。
「後見類型は、本人の意思を反映しませんので、保佐・補助がいいでしょう」
「後見人には大きな権限が与えられています。ですが、後見人の役目は、その権限をできるだけ使わないことだと思います」
また後見人として心がけていることとして、「チームや関係機関とは、仲良くならず緊張関係を維持」していると言っていました。
これは、同じチームであれば、友好関係を築いて、協力的な態度を示せば、相手も協力してくれて、信頼関係を築ける、ということがあります。
でもこの社会福祉士は、「場合によっては脅すこともあります。」と。
「毎週の様に面会していたら、言うべきことが言えなくなります。チームを客観的に見るために、面会は月1回で十分なのです」
たしかに、成年後見制度はあまり知られていない制度なので、中には後見人がなんでもやってくれるんだろうと思っている人もいます。
そういう意味で、「後見人がすることは財産管理と身上監護だけなので、他の事は依頼されても絶対やりません!」という意味なのでしょう。
でも、全国にライブ中継されているシンポジウムで、それも弁護士の目の前で、”脅しています”は、よくないと思います(笑)
この人は、社会福祉士として、本も何冊も書いている人らしいのですが、主催者(日本精神保健福祉士協会)は、呼ぶ人をもう少し考えるべきだったかも、しれません。
2018/12/9 成年後見制度における精神障害者の意思決定支援に関するシンポジウム
動画 https://www.youtube.com/watch?v=ikouzsS4-gE&t=14s