村上春樹「偶然の旅人」新潮3月号 | 1日5秒のパグセラピー ペコログ

村上春樹「偶然の旅人」新潮3月号

ひさしぶりに、本のことを。 今年101年目の文芸誌、新潮の3月号に村上春樹の「偶然の旅人」(連作 東京奇譚集1)という文章が載っています。結構長いですが(17頁)、書店で一気に立ち読みしてしまいました。新潮社さんすみません。これは、どうしてそうなったのか上手く説明がつかない「不思議な出来事」についての文章で、本編の前に村上自身が登場して自分が体験したふたつの不思議な出来事を紹介している。どちらもジャズにからんで村上の身に起こった偶然で、これだけでも十分魅力的(私が村上ファンであることを差し引いても、と控えめに思う)。この前置きで文章に引き込まれ、気付いたら読み終わっていた、という文章です。本編は村上の知人が語ってくれた話で、彼は話し終わった後、こう言います。
(以下引用)
きっかけが何よりも大事だったんです。僕はそのときにふとこう考えました。偶然の一致というのは、ひょっとして実はとてもありふれた現象なんじゃないだろうかって。つまりそういう類のものごとは僕らのまわりで、しょっちゅう日常的に起こっているんです。でもその大半は僕らの目にとまることなく、そのまま見過ごされてしまいます。まるで真っ昼間に打ち上げられた花火のように、かすかに音はするんだけど、空を見上げても何も見えません。しかしもし僕らの方に強く求める気持ちがあれば、それはたぶん僕らの視界の中に、ひとつのメッセージとして浮かび上がってくるんです。
(引用終わり)
どう感じましたか?全体を通して読んだ私は、この文章がすっと身体に入るような気がしました。パウロ・コエーリョの「アルケミスト」がちらと頭をかすめもしましたが。文章の最後も、村上らしく、かっこよく、ヒュウマンにしめてあります。お手にすることがあれば是非一読ください。きっとあとから思い出すことのある文章だと思います