夏休みも終わり、2学期になりました。授業中のシーンです。吉田稔が先生が話をしているのに何か声をだしたり「して、授業妨害をしています。
「吉田君、静かにしなさい、みんなの授業の邪魔になるでしょ。」
先生が注意してもいう事をききません。悪ふざけをし、紙飛行機をとばしたりしています。八鍬先生はとうとう稔を廊下にひっぱりだしました。稔はこっぴどく叱られています。
「何で何べん注意しても授業を真面目に聞かんかね。」
稔はうつむいています。
「何か言ったらどうなんかね。いっつもはいらんことばっかりしゃべって。こういう時は何にも言えんのかね。ホント性根の無い子じゃねえ、あんたは。」
相変わらず何にも言いません。
「お前は反省をしちょるんか。このバカたれが!この手と足が悪い。」
稔は先生に手足をつねられました。
「しばらく廊下にたっちょきなさい。もう授業うけなくてよろしい。」
先生はそれだけ言うと、教室に戻り、ドアをバタンと閉めました。
数日後のこと、2組は授業が少し初めに終わったようです。担任の石村先生が楽しい話を始めました。石村先が昔から親しくされている先輩教師で島田小学校で教頭をされている先生にお孫さんができたようで、そのお孫さんの話をされています。2人目です。
「千田先生のとこに2人目の孫ができた。お姉ちゃんのみどりちゃんはゆうたくんが生まれて大喜びしてるよ。かわいいねーっがらがらふってあやして。うちの子たちも小さいころそうだったなっておもわず笑ってしまった。お前らも弟や妹がかわいいか?」
「末岡のとこって妹3歳じゃないん?」
亜土が言いました。
「お、そうだったな。末岡、妹かわいいだろ。」
「かわいいですよ。お兄ちゃん本読んでって絵本もってくるんです。」
「おー、そりゃかわいいな。みどりちゃんもゆうたくんをを抱っこしてゆうたおーいおーいってやってるらしいぞ。」
「緑ちゃんのところも双子の弟いるんじゃないの?」
明子が言いました、
「もう来年1年生よ、生意気よ。」
「おー。そうか。ほかにも妹や弟が来年1年生になる人いるんじゃないのか?よし手を挙げてみろ。」
数人が手を挙げました。
「どうだ、妹、弟はかわいいか?」
由美が先生と目があいました。
「うるさいですよ。うちの妹。」
「いいじゃないか。もし一人だったらさみしいぞ。」
そこにチャイムがなりました。
「よし、今日の宿題は本読みだけにしよう。」
「ヤッター!」
みんな大喜び。そして先生は自分の席に戻り、タバコを吸っています。
10月になりました。1組の上野のり子が神奈川県の小学校に転校します。最後の日、先生がのり子のためにお別れ会をしてくださっています。班ごとに出し物。最後はのり子たちの班です。ピンクレディーのペッパー警部を振り付けでうたっています。歌が終わりました。
「すごーい、みんな上手だねえ。」
みんな拍手し、先生がすごいほめてくれました。同じ班の健吾たちは大喜び。この班は6人。7人の班もあります。
「先生いつもどんなときもほめてくれて俺うれしい。」
この先生は本当によくほめてくれます。班ごとの出し物終わりました。
「みなさん、最初にも言いましたが、上野さんが転校します。みんなさみしいだろうけど、上野さんは来週からもう来ません。」
「のり子、元気でね。」
「仲良くしてくれてありがとう。」
同じ班の美智恵と亜弥が代表してみんなで書いた寄せ書きを渡しました。
「みんなありがとう。」
のり子は椅子にまるくなって座っているクラスの仲間たち一人一人にえんぴつを一本ずつ渡しました。みんな「ありがとー」って喜んでいます。
「じゃあ、上野さんに一言いってもらおっか。」
先生が言い、みんな拍手しました。のり子はみんなの輪の中に立ちました。
「家庭の事情で突然転校することになり、みんなと別れなければならなくなってとっても寂しいです。優しい先生、楽しい友達に囲まれて毎日学校にくるのが楽しかったです。4年になってこんな先生ははじめてでした。休み時間一緒にあそんでくれてすっごく楽しかった。私、先生のこと大好きでした。アヤ、みっちゃん、実くん、トシ坊、勇吉、博士と一樹の双子ちゃん、仲良くしてくれてありがとう。ほかのみんなもありがとう。私、転校しても友達いっぱいつくります。」
のり子はとうとう泣き出してしまいました。「上野さん・・・」先生がすぐかけよりました。みんなも近づいてきました。何人か泣いている人もいます。のリ子は先生にしがみつきました。
「ヤダよー。もう先生にもみんなにも会えないなんてー。」
「のり子ちゃん、またいつでもかえっておいで先生もまだしばらくはこの学校にいられると思うから。」
「ホント?先生結婚していなくなったりしないよね。」
「えー、先生結婚するのー?」
「ってより彼氏いるの?」
「いるでしょう。すっごい男性にモテそうだし。」
そんな声もきこえます。のり子はやっと泣き止み、先生から離れました。
「のりちゃん、また遊びにきてよ。」
「また一緒にあそぼーなー。」
友達の声です。
「さあみんな、泣いてばかりいたら上野さん安心してお引越しできないよ。」
「そうだぞ。みんな。先生、最後にみんなで何かしようよ。」
利昌が言いました。
「そうだね。雨で運動場使えないから、フルーツバスケットでもしようか。」
「ヤッター。」
「じゃあ、最初私が鬼になるからフルーツバスケットっていわれたら全員が移動ね。りんごっていったら1班2班が移動、みかんっていわれたら3班4班が移動。バナナっていわれたら5班6班が移動ね。じゃあはじめるよ席ついて」
先生は自分が座っていたイスをのけ、いすをととのえました。みんなすわりいよいよ始まります。
「りんご。」
いわれた人たちは移動します。
「バナナ」 「みかん」
「フルーツバスケット」
いよいよ全員移動です。
「キャッ」席がそこに一つしかなく悦子は座る寸前で先生とぶつかってしまいました。
「いいよ座って。」
「えー、先生いいんですか、じゃんけんしなくて。」
「悦ちゃんいつもいい子だから座っていいよ。」
「ヤッター!」
悦子は大喜びです。
「フルーツバスケット」
今度は先生も座ってやるぞって感じです。みんな本当に楽しそうです。
家に帰って・・・。のり子は寄せ書きと友達がくれた手作りのプレゼントを見ています。
「元気でね。片桐奈緒美 転校しても友達いっぱい作ってね大庭朋子 ずっと友達だよ。手紙忘れずに書いてねアヤ 忘れちゃだめだぞー!!美智恵 上野元気でな、また遊びに来いよ博士 博士と双子の一樹、忘れんなよーカズキ ・・・。」みんなよく書いています。そして先生も・・・。「これからもいろんなことにチャレンジして下さい。」と書いてくれています。のり子は寂しそう。
(先生若くて明るくて優しくて大好きだった。また会いたいな。)
のり子はまた、泣き出してしまいました。ギュッと抱きしめてくれた先生の温かい手は一生忘れないでしょう。でもきっと明るい彼女のことだから次の学校でも友達いっぱいできることでしょう