今回取り上げるのはプレミア第14節、ウィガンVSマンC。この試合を取り上げようと思った理由は、ウィガンがマルティネス監督の下で3バックをベースに戦っているからだ。そして、シティのマンチーニも3バック導入を試みている。

ウィガンは順位こそ15位と下位だが、やっているサッカーは面白いとの情報を得ていたので、ピックアップしてみる事にした。

☆マルティネスの挑戦

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ウィガンは想定通り3バックで試合に臨んだ。一方のシティは4-2-3-1でのスタート。

まず、ウィガンとシティでは選手個々の能力に違いがある。それを自覚した上で戦いに臨まなければならない。

ウィガンはFWも自陣に撤退し、スペースを限りなく消そうと動いていた。WBも中央に寄せて守備をしていた。

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目に付いたのは、相手を挟みこむパターンだ。上図でいうと、SHのアグエロが中に入ってきた動きに対し、ボランチとWBでうまく挟んでいる。ウィガンのボランチはなかなか守備がうまく、序盤はボールを奪い取るシーンが目立つ展開となった。

シティの両SHは共に純粋なサイドプレーヤーではないので、中央でプレーしたがる傾向にある。序盤のシティは攻撃が真ん中に偏り、ウィガンの守備網にかかるシーンが目立った。マイコンも度々上がったが、ウィガンはFWが下がるなどして対応していた。

ウィガンペースで動いていた試合は、ウィガンの攻撃面にも表れていた。

シティは相手にポゼッションさせないように高い位置から守備を仕掛けてきた。

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相手の3枚のCBに対し、シティも3枚ぶつけたのだ。ウィガンのCBは3人とも攻撃能力が高くない。よって、何度もGKにバックパスするシーンが目立った。

しかしここがウィガンの1つの狙いでもあった。相手の選手をおびき寄せて前方に蹴る事で、相手の中盤が間延びしやすくなる。前線にはディ・サントとコネという強さに定評のある2トップが揃っていたので、彼らの競ったこぼれ球から攻撃を構築しようと試みていた。

ウィガンの攻撃が得点に結びつく事はなかったが、やりたい事は明確だったと思う。

☆マンチーニの策、当たる

前半を0-0で終えた試合は、後半に動きを見せる。シティはシルバを自由に動き回らせ、ピッチを広範囲に使うようになった。ウィガンの守備も粘り強く頑張っていたが、徐々に疲労が出てくる。

ここでマンチーニが動く。

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守備的MFのハビ・ガルシアに代えてミルナーを投入。さらにアグエロを下げてコラロフを投入し、システムを3-4-2-1に変更する。

3バックに変更してから、シティのポゼッションはさらに安定した。

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上図はウィガンの守備が噛み合っていない事を象徴しているシーンだ。シティはCBが3枚になった事で、DFラインでのポゼッション率が高くなった。そしてWBの2人が高い位置を取る事で、サイドに寄ったシルバを誰も見ていない。

シティは才能豊富なタレントを多く抱えるが、シルバはその中でも抜きん出た存在だ。彼がフリーかどうかでシティの攻撃はかなり変わってくる。

後半22分にバロテッリのゴールで先制したシティは、その5分後にマンチーニの交代策が当たる事となる。

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完全に無双状態に入っていたシルバが3人に囲まれながらボールをキープし、中央に上がってきたミルナーにパス。これをミルナーが豪快に決めて追加点を奪った。マンチーニが守備的なガルシアを代えたからこそ生まれたゴールだった。

3バックの変更とミルナー投入。最近失敗続きに終わっていたマンチーニの策がようやく当たったという印象だった。

試合は0-2でアウェイのシティが勝利。シティは未だリーグ戦で無敗を貫いており、現在勝ち点1差で首位マンUを追撃している。なお、監督交代に踏み切ったチェルシーが2戦連続スコアレスドローと足踏みしたため、優勝争いは早くもマンチェスター同士の戦いになりつつある。

ウィガンは試合に敗れこそしたが、ほとんどの時間を自分たちの思い通りに進める事が出来ていた。悲観する内容ではない。

☆まとめ~プレミアに吹く風~

ウィガンのマルティネス、リヴァプールのロジャースと近年はプレミアでもパスサッカーをやろうとする監督が増えた。どちらも成績はあまり良くないが、プレミアのフィジカルサッカーに変革をもたらしているのは確かだ。

昔イングランドのサッカーは、肉体を鍛える一環として行われていた。そのため、体でぶつかり合うスタイルを好む人々がまだまだ多いのだ。ロングボール中心の縦に速いサッカーが主流で、スペインのようなポゼッションスタイルは邪道と考えている人までいる。

しかし2010W杯の惨敗以降、イングランドのサッカーも変わりつつある。マルティネスもその1人として粘り強く自分のスタイルを貫いてもらいたい。

ちなみに、ウィガンには日本人の宮市が所属している。現在はケガの影響で試合に出ていないが、今日の戦いを見る限り、宮市がスタメンを勝ち取るのは難しそうだ。3バックのサイドプレーヤーには守備の機会も多い。宮市がそれをこなせるかは疑問だ。

残念な話だが、宮市は海外で埋もれてしまうかもしれない。ウィガンへはレンタル移籍だが、明らかにサッカースタイルが宮市とマッチしていない。使われるといっても、負けているラスト20分くらいが関の山だろう。

つくづく思わされる。サッカーは単純に足が速いだけでは出来ないのだということを。