FWのジルーに復調の兆しが見え始め、ようやくアーセナルらしい攻撃的サッカーが展開されるようになった中で迎えるノース・ロンドン・ダービー。

対するトッテナムには、お馴染みのアデバヨールとギャラスがいる。彼らは常にアーセナルサポーターからブーイングを浴び、そして彼らの反骨心がこのゲームをより一層熱くする。プレミアリーグ第12節だ。

☆前半18分までの支配~攻撃的CBの魅力~

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トッテナムのヴィラス=ボアス監督は、普段の4-2-3-1ではなく、2トップを選択。いつか試してみたかったシステムなのだそうだが、なぜこのダービーマッチだったのかは謎だ。

試合を動かしたのはトッテナムのCB、ヤン・フェルトンゲン。彼はビルドアップ能力が高く、アーセナルも獲得を狙っていた逸材だったのだが、今夏にトッテナムに入団した。

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トッテナムは露骨にフェルトンゲンに繋ぎの部分を頼っている。相棒のギャラスは古典的なCBなので、繋ぐ事は得意としていない。ボランチが相手に抑えられた際、CBからのビルドアップが有効である事をフェルトンゲンが示してくれた。

そんなフェルトンゲンをアーセナルは抑えようとしない。ただジルーが追いかけるだけである。今季のアーセナルの試合を何度か見たところ、トップ下のカソルラの守備がぼやけている。4-4-1-1で守る事を徹底するあまり、相手に自由にボールを運ばれてしまう場面が何度か見受けられた。

対するトッテナムは、アーセナルのキーマンをよく抑えていた。

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キーマンとは、アルテタ、ウィルシャー、そしてカソルラの3名である。最近のアーセナルはボランチにアルテタとウィルシャーを配置しているのだが、ウィルシャーはどちらかといえば前方でプレーしたがる傾向にある。

そのせいもあり、トッテナムのデフォー+ダブルボランチの網に完全にハマってしまっている。ウィルシャーは時折ビッグなプレーを見せていたが、ミスが目立ち、まだまだ試合勘が戻っているとは言い難い。

上図のように相手の守備にハマってしまったのも、ウィルシャーが1つの原因といえる。もう少しポジションをずらしたり、工夫してプレーするべきだったと思う。

☆アデバヨールの乱とヴィラス=ボアスの賭け

試合が動いたのは前半10分、フェルトンゲンのロングパスから始まり、最後はアデバヨールがゴール。ゴールが決まった後はお得意のアーセナルサポーターに対する挑発行為である。個人的にはこれを見るのが楽しい。

しかしその8分後、危険なタックルをカソルラにかましてしまい、一発退場となってしまう。開始から18分でこれほどピッチを混乱の渦に巻き込める選手も珍しい。トッテナムは一瞬でゲームプランが崩れてしまう。

その後アーセナルに反撃を許し、3-1とアーセナルがリードして前半を折り返す。反撃を許した理由は単純だ。4-4-1で守るだけの状態となり、耐えきれなかっただけの話だ。

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後半、ヴィラス=ボアスは賭けに出る。3バックの導入だ。ノートン→ドーソン、ウォーカー→デンプシーと交代する。ちなみに左SBのノートンはウォルコットとの1対1で負け続けていたため、色んな意味での交代となった。

1人少ない状況ながら、DFを1人削って攻撃的な選手を投入したヴィラス=ボアスはなかなか立派である。最近は便利システムとして欧州で流行っている3バックだが、使い方を間違う事なかれ。

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トッテナムの攻撃を構築していたのは、間違いなくフェルトンゲンである。後半から3バックの左に入ったフェルトンゲンだが、相手の猛プレスを受けて繋ぐ事が出来なかった。単純に考えれば、4枚のDFが1枚減ったのだ。さらにピッチの上には10名しかいない。最終ラインで数的同数が生まれるのも無理はない。

試合はその後5-2でアーセナルが大勝。ダービーマッチはアデバヨールが引っかき回した形で終了した。

☆まとめ~ヴェンゲルの悩める出来ごと~

今回私が着目したのは、先ほども書いたアーセナルの中盤の3名。長期離脱から復帰したウィルシャーをボランチで起用しているのだが、少々バランスが悪い。

ウィルシャーは昨季もボランチでプレーする事があったが、相棒にはバルセロナに移籍したA.ソングがいた。彼が守備のタスクを担う事で、ウィルシャーが攻撃参加しやすい状況だった訳だ。

現在はアルテタが後方からゲームを作り、ウィルシャーは前でプレーしているようだが、アルテタには守備力が無い。今日の試合でもベイルに中央をドリブルで独走されるシーンが2,3度あった。

ウィルシャーは今季からアーセナルの10番を背負う。負傷していた選手に10番を与えるところにヴェンゲルの期待が窺える。そんな彼を起用したい意図はよく分かる。本来なら彼はトップ下でこそ活きる選手なのかもしれないが、トップ下にはカソルラがいる。

現在のアーセナルの攻撃の中心人物であるカソルラを外す事は出来ない。よって中盤には攻撃的な選手ばかりが揃う結果となっている。その恩恵を受けた5得点なのかもしれないが、守備に不安があるのも事実。ビッグクラブとの対戦では弱点が露呈するかもしれない。

このまま3人を起用し続けるのか、それともカソルラとウィルシャーをトップ下で競わせるのか、ヴェンゲルはどうする・・・。