本当はラツィオとローマのダービーを書こうかと思ったのだが、雨でピッチがグチャグチャになったり、デ・ロッシが暴力を振るったりと面白くなかったので、急遽この一戦に切り替えた。

リアクションサッカーからの脱却を目指すリヴァプールは、ついに3バックを導入し始めた。今後継続するのかは不明だが、ロジャースの考えに迫りたい。



☆システム論の落とし穴~リヴァプールにとっての3バック~

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ザッケローニがインタビューで3バックについてこう語っていた。「3バックとは、MFを1枚増やす事だ」と。パスサッカーを目指すリヴァプールのロジャースからすれば、3バックは目指すべきポイントだったのかもしれない。しかし、システム論には落とし穴も存在する。

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上図はリヴァプールのCBから攻撃を開始するシーンだ。チェルシーはWBを抑えるのではなく、マタやアザールがボランチをマークしていた。シャヒンとアレンという繋ぎのキーマンを抑えるのが狙いだったのだろう。

当然リヴァプールの攻撃はサイドが中心となる。恐らくサイドからの攻撃はロジャースが理想とするものではない。ロジャースの右腕であるジョー・アレン、ヌリ・シャヒン、そしてスティーブン・ジェラードの3人が細かくパス交換をしながら攻めるスタイルを求めているのだろう。しかし中央を固められたこの日は、この3人が共演するシーンは数えるほどしかなかった。

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リヴァプールは18歳の若さでレギュラーを張るラヒム・スターリングがよくボールに触る。彼の特徴はドリブルだ。左サイドに流れてチャンスメイクを行うのだが、ここからシュートに持ち込めない。

なぜならクロスに合わせるタイプの選手がいないからだ。昨季は長身FWのアンディ・キャロルがいたが、今はスアレスしかいない。スアレスは足元でボールをもらって仕掛けるタイプの選手で、どちらかといえばチャンスメイカーである。

チェルシーに上手く攻撃をコントロールされたリヴァプールはチャンスを作れない。前半20分のテリーのゴールで、チェルシーが1-0とリードして後半を迎える。

☆全員守備と単独特攻

結局リヴァプールの攻撃はスアレスの特攻が中心となる。彼は中盤まで下がり、そこからドリブルを開始するのだが、いかんせん距離が長い。この距離を個人技だけで崩すのはかなり難しい。

スアレスがボールをロストすれば、チェルシーのカウンター攻撃に繋がる。チェルシーの前線はスペースを与えると危険極まりない。アザールやオスカルが高いテクニックでチャンスを作るが、リヴァプールが後1歩のところで防いでいる。

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防げている理由は、リヴァプールが守備時に5バックになるからだろう。上図のように5-2、あるいは5-3の形になるのだが、ラインが低い。ラインが低いので、ゴール前でギリギリ防げるパターンも何度かはあった。

しかしラインが低いという事は、ボールを奪取するポイントも低い。そのぶん攻撃に距離や時間がかかり、チェルシーの強固なブロックを崩すには至らなかった。

その後もリヴァプールはテクニシャンのスソを入れて中央を強引に崩そうとしたが、結局はCKの1ゴールのみ。1-1の引き分けに終わった。

☆まとめ~シーズン終了までの試行錯誤~

初めに書いたシステム論の落とし穴とは、「システムは決して自己満足に終わってはいけない」という事だ。3バックにすればポゼッションを高められると考えたのかもしれないが、ちゃんと相手の事も考えてシステムは作らなければいけない。ロジャースは相手の事まで考えて3バックを導入したのだろうか。

アレンとシャヒンを抑えられた3バックは狙い通りではなかったはずだ。自分だけの考えに陥ってしまうのが、システム論の落とし穴である。

パスサッカーを理想としているのは分かるが、前線にはスアレス、スターリング、途中出場のスソとドリブラーばかりが顔を揃える。ボールロストする回数も多く、決して良い人選とはいえない。

もう1つ気になったのは、アレンのボール捌きだ。アレンは今夏ロジャースと共にスウォンジーからやってきたアンカーの選手なのだが、バックパスを多用する傾向がある。これはスウォンジーがCBをビルドアップに組み込んで戦ってきたからだ。

つまり、CBの攻撃能力に自信があった訳だ。しかしリヴァプールのCBで繋げるのはアッガーしかいない。今日のキャラガーも若手のウィズダムも繋ぐ能力はほとんどない。攻撃がアッガーのサイドに偏ったのも、それが理由の1つだろう。

とても今のリヴァプールにアレンがマッチしているとは思えない。ロジャースは今後も彼を右腕として使い続けるだろうが、前へ行こうとするチームに対し、彼はゆっくり行こうと考えているようにも見える。

現在11位と下位に低迷するリヴァプール。繋げる人材が少ない中でロジャースがどういったサッカーを展開するのか、今季が終わるまで試行錯誤は続きそうだ。