2月13日、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は、東京高裁の有罪判決をくつがえし、無罪判決を言い渡した。
この裁判は、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)に問われ、一審千葉地裁の裁判員裁判で無罪判決を受けたAさんが、東京高裁で逆転有罪(懲役10年、罰金600万円)となり、上告していたもの。裁判員裁判による初めての無罪判決が、控訴審で覆されたものであり、裁判員制度そのものの正否にかかわる裁判として、最高裁の判断が注目されていた。
判決は、まず「控訴審は事後審であること」を再確認した上で、一審判決を覆すには、その判決が「経験則・論理則に照らして不合理であることを具体的に示す必要がある」と判示。さらに「裁判員制度の導入にともなって、裁判の直接主義、口頭主義はより強く妥当するものとなっている」と述べた。
その上で「覚せい剤であることを認識していなかった」という被告人の弁明を否定はできないとして無罪を言い渡した一審判決通りの判断も可能であった、としてこれを否定した東京高裁(小倉正三裁判長)の判決は破棄を免れないと結論づけた。
この判決は、控訴審判決が経験則・論理則に照らして合理性に欠けることを認めて破棄したようにも読めるが、その実は、裁判員制度の下では一審判決を覆すことは望ましくないという裁判員制度推進のための最高裁の政治判断が色濃く反映されたものと読むこともできる。
冤罪Fileが何度も指摘したように、控訴審を担当した小倉正三裁判長は、およそ合理的判断のできる裁判官ではなく、神戸質店主事件で一審無罪だったOさんを逆転有罪とした際の論理などは支離滅裂なものであった。(弊誌第8号の当該記事参照)最高裁は、この時には、この小倉の非合理的事実誤認を見逃し、ずさんな上告棄却で、無実のOさんを無期懲役刑とした。同じ小倉正三の同様にデタラメな判決でありながら、裁判員裁判で無罪となったケースのみを救済した最高裁の態度からは、裁判員裁判推進という政治目的が先行した判決であると考えざるを得ない。
また、裁判員裁判の結論を動かしがたいものとして固定化することは、一審における誤判を上級審で救済する手段を極端に狭めることとなり、裁判員裁判なのか否かによって、三審制度のもつ意味が異なってくると言うダブルスタンダードを生み出す。(裁判員制度によって、上級審の事後審としての性格が強まるなどという判断は、それを露骨に示している)
無罪判決とは言え、きわめて問題の多い判決と言わなければならない。
