灼熱のアッザム・リーダー | サボリ通信

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大村幸太郎ブログ

先日家の掃除をしていた時に見つけたガンプラの「アッザム」。



僕が購入したものではない。約20年前N君が僕にくれたものだ。
N君とはバッテリー工場のパートで知り合った友達でもない知り合いでも無い、仕事上での関係者だ。

大学を出てからというもの、僕は先行き定まらず常時フラフラしていた。バイトをしていてもやっているのかやっていないのか変則なシフトばかりで要は自分に都合のいいように組んだシフトで遊ぶお金を稼ぐだけというようなものだった

そうしたダメ人間がその先に考える事と言ったら「このままではいけない。何かをしないと。」とみたいなのが出てくる。さらにその先に何故か海外へ行く。という選択肢もでてくる。日本から出れば何か変われる。なんて、安直なよく分からない答えに僕も海外一人旅へ出かける事を決める
日本に居ようが海外に行こうが場所が変わるだけで自身の中身は何も変わらないわけですが、、 とにかく居辛さからの脱出です。(機会があればこの話もいずれ)

そうなると滞在費などそれなりのまとまったお金が必要になるわけで、とりあえず長い時間働けて短期間で出来るだけ稼げる職を探したところ12時間二交代のバッテリー工場を見つけます。面接を受け即採用!朝の8時半から夜の8時半まで休憩挟み、当時はえらい稼いだであろうスタート切ったばかりの携帯電話。そのバッテリーをひたすら作りまくるラインに配属されました。

5日働き2日休み、シフトが夜勤に変わり5日働き2日休んでまた日勤5日を繰り返すという具合だ。
それを約4カ月か続けてたしか100万円ちょい持って旅にでました。 スノーボード一人旅計画だったので働きながら、滑る事とお金以外はあまり考えてなかったと思う。 ヤンキー上がりの嫌〜なオッサンもいたので若干イジメられつつも、4カ月後にはこんなトコとはおサラバさ、なんて思って毎日を乗り切っていました

なので、って言ったらダメなのかもしれないけれどその工場内で友達とか連れ合いなんか作るつもりはハナから無く、ロクに話しもせず休憩も一人、弁当食うのも一人(余談ですがこ後の弁当が本当物凄くマズイ)で過ごしていました。
実際ラインは二人体制だったので作業しながら向かいには同僚がいるのだけれどとりあえず自動的に仕事してる、というか、言うのもアレですが目が死んでいるというか、そうした目は他のラインを見ていても多いように感じました。まあ僕の目も死んでいたのですが、、

そうして2カ月ほど経った頃、ラインが変わり同僚が新しく変わった。そこでN君が別ラインから鞍替えしてきたのだ。僕と仕事をする相方となる。
さてN君ですが、皆さんどんな想像されています?僕にアッザムをくれたN君です。 どーせアンタと同類のガンダムヲタとかでしょ? なんて思ってらっしゃるかもですが、バリバリの輩です。なんていうかクローズに出てくるようなイケてる方のヤンキーみたいな感じでしょうか?
なかなかの男前ですがここではやっぱ目が死んでいる−そして初対面で金髪のロン毛ですわ。
とりあえず無愛想で「あー」「あん?」みたいなもんだったので、こりゃ2カ月残りは殻閉じて私は過ごそうと心に固く決めたのです。

仕事だけの同僚。そんなお互い無愛想なまま一カ月か過ぎた頃、休み明けにN君がやって来て向かい合っていつものように仕事にかかっていると、腕にプラスチック製の輪っかを付けている事に気づく。蛍光色の輪っか。
そう、フジロックのリストバンドだ。

今でこそフェスというのは年がら年中溢れているけれど20年前はフェスって言葉すら無かったように思う、というか単一フジロック!だった。
N君はフジロックに行っていたのだ、ついでに頭もドレッドなっていた。金髪で。

それ見た瞬間、「フジ行ったん⁉︎」と僕は冷戦無愛想状態からいきなりそんな事を話しかけるものだからN君もオ、オオオッとなって今までのわだかまりが一気にぶっ飛んだのだった。

レイジとかフーファイターズから今では懐かしのマッドカプセルやNOFXが出てきたりその日から学校の友達のようになった。
「オームラ君(僕)がパンクとかメロコア好きとは思わなんだわ〜笑」と、それもそのはず当時の僕はコンタクトも買わずお金貯めていたので黒縁メガネに髪の毛ボサボサ、勉三さんのような浪人生な風貌だった。
それからは毎日音楽の話ばかり
年齢は僕より二つくらい下だったかな?とにかく僕より若かった。

お互い笑顔を見せるようになり、笑うとなかなかかわいい奴であり僕に懐いてくれた、というよりからかいやすかったかそれなりに突っ込んでもきてくれて、まあまあ可愛さも余ってじゃれ合い過ぎで機械壊してライン止めたりもしたけれど、、とりあえず僕の殻にこもったパート生活は少し変わっていった、仕事は変わらずシンドいけれど

相変わらずお互い目は死んでいたけれど、でも目の死に方にも色々あってN君は良い目の死に方をしていたと思う。ある日、
「ここに居るとホンマ自分がしょうもなくおもえるやろ?まわりもつまらん奴ばっかやし?ローダウンとかパチンコの話とか、、」N君はポツリそんな事を言った。
今まで音楽の話ばかりでいわゆるマジ話みたいなのはしなかったのだけれど、−あ、こいつ分かってるほうの奴か− と思えたら僕も、「いや、実は俺あと二週間くらいで辞めんねん。」と言ってスノーボードの話だとかハナから辞める予定で来たとか、、N君は辞めると聞いて少し黙ったような感じだったけれど空気変えるように「だからかーメロコア好きなん!スノボな」と言ってまた音楽の話に戻った。

その日から言葉少なくなったような気がします

それでついに最後の日を迎え、白々しい「僕やっぱ夢追っかけます!」みたいな嘘ついて辞めるつもりは無かったけれど、しかし僕の夢がそうさせなかったと、、皆さんに挨拶をしN君は薄く笑い、有難い事に、というかすみません皆さま送別会なんぞやってもらうという事態になってしまって、、

居酒屋から始まり何件かまわって最後カラオケバーに行った時にN君が僕にポツリこう言った。
「俺もな、来月辞める事にした。東京行く。」と言いやがる 何やねん

僕はN君の事を本当知らない、知ってる事はこの職場ではまあまあベテランという事と、四条大宮に一人暮らししている事、あと音楽がめちゃくちゃ好きな事。それぐらいしか知らない
生活がどうで、何でここに居て、どんな過去とか。
知る必要がないのだ。たかがパートなのだ、そういう間柄なのだ、ハナから辞める前提での同僚だ。この送別会の後僕は海外へ旅に行き、こんな仕事の事など微塵も忘れ滑りまくりそこで素晴らしい仲間を作る予定なのだ。 このパートはハナからそれだけのモンだと思ってんだ。金を貯めるためだけだ、こちとら

の予定なのにN君が放つ「東京行く」はめちゃくちゃ嬉しかった。
つーかダメ人間の安易な考えその2は東京行くやんけ笑 なんて思いながら、そうか頑張れよ、何を頑張っか知らんが良いやん、すげー良い。頑張れよ って思っていた。
あのカラオケバーの出来事は五本の指に残っている。 お互いに何かが始まるそれを今も僕は知ってる

そこでもらった餞別がアッザムだ ベタに「いや、アッザムって、」って僕は言ったと思う
N君は「連れがフィギュア屋やっててな、そこで買ってん」みたいな事言ってた

アッザムと言えば機体自体が謎で兵器も謎で劇場版では丸々カットされたモビルスーツでもアーマーでもない、、
ガンプラ他にも色々あるやん笑



目上の人から良く聞く語録に「一生の友達ってーのはな、小中高の学生のうちや。それが一生の友になる」と聞いていた
まあ多分そうだろうな、そう思います。

あれから20年経つわけだけれど、僕はその後スノーボードに行き見事に何も変わらず半年後に帰ってくる 東京に行ったN君はどうなったか知らない

でも当時もっと自分が偏った奴じゃなくもっと開いていたらN君とは友達になれた気がする。最後の日ももっと喋りたかった。おい、もうちょい話そうや、そう言えば良かったと今でも思っている。けれどそう思えば思うほど一人旅への期待は揺らぐような気もしていた 俺はここじゃない みたいな


合う奴ってのは過ごした年月とかあんま関係なく、ある日ひょっこり出てくるものなのかもよ、出来れば当時の僕に言ってやりたい



くれたガンプラを見るたび、あいつやっぱセンス良いなと今でも思うのだから




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