2004年6月。
主人とデート感覚で受けた“人間ドック”で、
【特発性血小板減少性紫斑病(ITP)】が発覚しました。
本格的な梅雨になる前の、お天気の良い日でした。
平日の早朝、新宿の高層ビル街を、これまた高層ビルの
素敵なホテルのような病院へ向かいました。
人間ドック・フロアでも私たち夫婦は、窓からの景色に感動したり、
バリウムの味を笑いあったり、骨密度や肺活量、聴力や視力を、
まるで、スポーツでのゲームの勝敗を競い合うように楽しみながら、
検査室巡りをしていました。
聴力や骨密度のブースでは検査技師さんに、
私の数値を驚かれ、褒められ、私の数値に負けた主人は
とても悔しがっておりました。
ランチも、そのフロアでバランスの良い食事を出して頂き、
大きなテレビ、雑誌を、明るく座り心地の良いソファーで楽しみながら、
検査を受ける事が出来ました。
全ての検査が終わり、検査結果の概要をドクターから伺う為、
一人一人、個室に呼ばれました。
主人も私も、成人病予防の為に受けたのですが、
お蔭様で、成人病関連の数値は一切出ませんでした。
ところが、私の検査結果に一ヶ所だけ【L】と表示が。
その異常に低い数値、【L】が、血小板の数値でした。
そしてその場で、ITPの可能性を告げられました。
ドクターは
「紹介状を書きますから、明日!直ぐに受診して下さい!!!」
私
「え!明日?明日は仕事で・・・・、来週とかでは・・・・?」
ドクター
「この数値ですと、緊急入院の可能性もあります。」
私
「え?そんなに大変な事なんですか?その・・・とっぱつせい・・・・?」
ドクター
「いえ!突発性ではなく、特発性です!特発性血小板減少性紫斑病!
あなたの検査結果を見ると、他の項目は全て正常。
血小板だけが異常に低い数値です。今まで、自覚はありませんでしたか?」
私
「腕や脚に、内出血がよく出来ましたが、スポーツしたり、
オートバイ乗っているので、そのせいだと思っていました・・・・」
ドクター
「とにかく、ITPに詳しい医師がいらっしゃるので、今、紹介状書きます。
明日!必ず!受診して下さい。」
それから、主人も診察室に入って、
2人でドクターから、この難病の可能性と今後の検査の説明を受けました。
私は、病院の窓から入る夕日の色を
「きれいだなぁ~」と感じながら、
とても早口ではありましたが、ドクターが丁寧に説明して下さっている内容を、
うつろに・・・・・まるで人ごとのように、聞いていました。
生まれて初めて!耳にする病名でした。
帰宅途上、関西の兄(医師)にメールしました。
平素は、妹の私からのメールなんて、全く!スルーされる事が多く、
数日経ってから、思い出したように返信メールが来ることが多かったのですが、
その日は、まだ大学病院に勤務している時間であったにも関わらず、
メール発信して数分後、私の携帯に兄から電話が!!!
その兄の対応の速さに、私は自分の体に起こっている異変を、
初めて!自覚しました。
「私・・・・そんなに大変な病気なの?」と。
今現在は、数値が低いながらも、緊急入院をしなければならないほどではなく、
血小板が少ない自分の体を、しっかりと!自覚しながら生活しております。
(私の場合、ITPに関与している可能性が高いとされているピロリ菌も
皆無だった為、全く!原因が分からない発病でした。)
勿論、数値が低くなってきたら、大好きなスポーツも自粛せざるをえません。
それでも、私は恵まれている!と思っています。
2004年以降、重篤な患者さんがいらっしゃる大病院に
数え切れないほど通院したので、
色々な病気をかかえながら生活していらしゃる方々の気持ちを、
また、そのご家族の気持ちを、少しは・・・、想像出来るようになりました。
健康である!という事が、どれほど!感謝するべきことなのか・・・・・。
私の舞台(歌)を観て下さったお客様から
「元気をもらった。」
「いつも明るくて、こちらまで明るくなる!」
と、おっしゃって頂き、本当に嬉しく思います。
私のイメージは、元気・明るい・パワフル!!!
そんなイメージを持って頂けるようです。
私と病気とは、とてもかけ離れた存在に思って頂いているようです。
とても有り難いことです。
歌(音楽)は、その歌詞がどんなに哀しい内容であろうと、
演奏する側の“心が元気”でないと、
その曲本来の魅力を表現する事は不可能だと、私は思っています。
奏者の心が健全でないと、音楽に内在する哀しみも伝えきれない・・・と。
ITP発覚後、日々の生活で、どんな苦境に立たされても、
常に前向きに!その現状をしっかり受け止め、
<自分自身と向き合う事の大切さ>を知りました。
まだまだ・・・・自分に負けてしまう事は多々ありますが・・・・・・。
例えば・・・譜読みや暗譜に忙殺されている時、
ついつい・・・・テニスばかりしてしまう・・・・とか・・・。
完璧な、現実逃避・・・・・。
それでも、それまでは全く知らなかった重篤な患者さんばかりの
大病院の風景や、まだまだ明らかにされていない沢山の難病の存在を、
知る事が出来たことに、感謝する日々です。
(C.M.)