「赤だよ!!」
私は、大きい声で叫んだ。
対面の信号が赤なのに、自転車に乗った同業の人が、進もうとしたのだ。
「赤信号で渡ろうとするなんて、
もはや当たり屋だよ!!」
相手もちゃんと停止して、すでに信号を待っているのだから、これ以上の注意をやめてもいいはずだった。
しかし、私は止まらなくなっていたのだ。
「車の迷惑を考えて!
ぶつかったら絶対にダメだよ、車の迷惑になるからね!
飛ばされるにしても、ぶつからずに飛ばされて!!
プロの当たり屋としての自覚を持って。
しっかりと。」
次第におかしな話になってきているのが否めない。
何、プロの当たり屋って。
「プロの当たり屋は、周囲の方々にご迷惑をかけず、
ぶつからずに飛ぶ。これ基本だよ。
それから、飛ぶにしても、絶対に、横とか斜めとかに向かったらダメだからね。
飛ばされた先に車や歩行者がいて、その方々に当たったりしたら大変だから。
飛ばされる時は上に。
まっすぐ上に飛ぶんだよ。
それもできるだけ高く。
大事なのは高さだから。」
一体これは、何の話をしているんだ、とお思いだろう。
プロの当たり屋の話である。
>それは一体何の話
「まっすぐ上に飛びながら回転をいれるといいね。
2回転くらいして、
そこから月の高さまでいこう。
思い切って、月を隠して。
それを人々は、『月食』というだろうね。
>言わない
周りで見てる人たちを楽しませて。」
こうなってしまった私は止まらない。
「大丈夫。
最近のドライブレコーダーは優秀だから。
上に飛んでく姿を、きちんとカメラが追ってくれるよ。
>どんな機能
月食ができたら、その映像がTwitterで拡散されて、
少しはニュースに出るだろうね。
それから、着地もしっかりね。
きっちり、両手を上げて着地して。
そこまでできてこそ、プロの当たり屋だから。
赤信号で前に進むって、そういうことだから。」
信号が青にかわっても、延々と説教を続ける自分に、
「確かに、説教は快楽かもしれない・・」と思ったのだ。
>説教ではなく、完全に世界びっくり人間の話