手術後4日目


今日も朝から廊下を歩きました。


痛みはピークの時から比べると3割減くらいになりました。


歩く時に痛みで腰が曲がっていましたが、この日は直立して歩けました。


それでもまだまだ痛みはあるので、本当に痛みが取れる日なんて来るの?と半信半疑でした。


「シャワーの予約表を掲示しました」という放送がかかったので、すぐに予約をしに行きました。


4日間、体はホットタオルで拭いていましたがシャンプーだけは出来なかったので頭が凄く痒かったです。


何よりも頭皮のにおいが部屋に充満してるんじゃないかと思うと、嫌で仕方なかったです。


この日の朝食もお粥でした。

あまり食べる気にならず、ほとんど残してしまいました。


午前中は特にやる事がないので、横になったりテレビを見たり歩いたりしていました。


10時30分頃、久しぶりに栄養士さんが部屋に来ました。


栄養士「末っ子さん、昨日の夜も今日の朝もほとんど食べられてませんが食欲ないですか?」


私「そうですね、食欲はあるんですがお粥が苦手で食べられません」


栄養士「そうですか。パンなら食べられますか?」


私「パンなら平気です」


栄養士「そしたら今日のお昼からメインはパンに変更しますね」


私「ありがとうございます!」


お昼からパンになるの嬉しいなぁと思ってウキウキしました。


お昼になりご飯が届きました。


献立はサンドイッチにコンソメスープでした。


どちらも大好きなのでとっても幸せでした。


久しぶりに病院食を全て食べられました。


この日は天気がとても良くて、部屋から外を眺めているだけの自分が凄く辛かったです。


ちょうどゴールデンウィークの時期でもあったので、みんなはお休みにどこへ行くのかなと思ったり、こんなに天気が良いなんて羨ましいなと思ったりしました。


13時になり主治医が来ました。


主治医「末っ子さん、これから抗がん剤の説明をしますね」



私「はい。お願いします」



主治医「使用する抗がん剤はパクリタキセル、カルボプラチンになります。それと同時に免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブを使います」



私「はい」



主治医「パクリタキセルはタキサン系の抗がん剤で、手足に痺れが出る事があります。アルコールが入っているので抗がん剤投与日は車の運転が出来ません。でも末っ子さんは車の運転しないもんね。お酒は飲めるかしら?」



私「はい、運転はしません。お酒は辞めてしまいましたが昔は飲んでたので大丈夫だと思います」



主治医「分かりました。次にカルボプラチンはプラチナ系の抗がん剤で、吐き気が出ると思います。特に末っ子さんは吐き気が出やすい体質なのでしっかり吐き気止めを出していきます。前回のように食べられなくなっちゃうんじゃないかって心配はしています」



私「吐き気は本当に心配です・・・」



主治医「それと、パクリタキセルもカルボプラチンも脱毛があります。前回のシスプラチンでは末っ子さんは脱毛しなかったよね?」



私「はい。前回は何ともなかったです」



主治医「今回は高確率で抜けます。でも抗がん剤が終われば髪の毛は必ず生えます」



私「そうですよね。脱毛は凄く嫌ですが受け入れます」



主治医「それと、関節痛や筋肉痛のような痛みが出る可能性があります。末っ子さんは大腸内視鏡検査でも痛み止めが効かなかったので、痛み止めが効くかどうかも心配です」



私「痛いのほんと嫌いです・・・」



主治医「色々な痛み止めがあるので状況を見ながらになりますね。最後に免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブは副作用が読めないんです。特に多いのは糖尿病や甲状腺の病気。あとは間質性肺炎とか。これは1回投与しただけで出る人もいます。誰がいつどのタイミングで副作用が出るか分からないです。副作用が出たらその副作用の治療をします。がんセンターでは治療が難しいものはA医大に紹介状を書くのでそちらで治療をしてもらいます」



私「そうなんですね・・・」



主治医「ペムブロリズマブはキイトルーダと呼ばれていますが、子宮頸がんでは最近保険承認されたばかりになります。効く人にはよく効く薬で、副作用が出なければ長く使う事が出来ます」



私「なるほど~」



主治医「本当はこの3剤にアバスチンという分子標的治療薬をやりたいところですが、腸に癒着していた部分が薄くなっていて、アバスチンを使うと穴があいて出血する可能性があるので今回は使いません」



私「わかりました」



主治医「それと、根治治療ではなく緩和延命治療になります。癌の無増悪期間の中央値は10ヶ月です。癌と上手く付き合っていくことが目的です」



私「・・・」



主治医「ペムブロリズマブはこの後別の医師から詳しく説明します」



私「わかりました」



主治医「費用なんですけど、ペムブロリズマブが高くて3割負担でも1回15万くらいします。高額医療についてはもう大丈夫かしら?」



私「はい。限度額申請してるのでそこは大丈夫です」



主治医「良かった。あと、セカンドオピニオンを考えていたらそれは遠慮なく言ってください」



私「はい」



主治医「これで一通りの説明は終わりますが、何か質問ありますか?」



私「この抗がん剤は6クールやればいいんですか?」



主治医「まずは3クールやってCTを撮ります。効いているようだったらもう3クールやってMRIを撮ります。そこで大きくなってなければ継続できます」



私「継続?6クールで終わらないって事ですか?私、仕事復帰したいんです」



主治医「末っ子さんは仕事復帰したいってずっと言ってますもんね。でもね、何クールって言えないんです。効いてる間は続けていきます。でも抗がん剤は耐性がついてしまうので長くは使えないのも事実です」



私「えっ!じゃあずっと抗がん剤やってなきゃいけないんですか?」



主治医「例えば、画像上でも細胞検査でも問題ないってなれば経過観察に入るって事も出来ますが、そういった事がなければずっと続けます。もちろん副作用が強くなってしまえば辞めざるを得ないかなとは思います」



私「んー・・・。わかりました」



こうして説明同意文書に署名をし、主治医からの話は終わりました。


時計を見るとシャワーの時間が迫っていました。


自宅から持って来たシャワーセットを持って、シャワー室へ行きました。


点滴は、この日の朝に外してもらったので体についている管は何もありません。


とにかく頭が痒いので、まずはシャンプーからしました。


案の定、頭皮の脂で泡がへたってしまいました。

それでも構わずシャカシャカシャカシャカ洗いました。


抜け毛も凄いです。

排水溝に流れないように1箇所にまとめました。


結局、シャンプーは3回しました。


とてもスッキリし、次は体を洗いました。

傷はこの時に初めて見ました。


傷口にはテープが貼られています。

思ったより酷い見た目ではなく、カサブタが付いていました。


傷はしみないと先生は言っていましたが、本当かな?と思いながらよく泡立てたボディソープを優しく傷口に置きました。


普通にしみました。


その後、優しく優しく撫でて洗いました。


シャワーの時間は1人30分なのでゆっくりはしていられません。


すぐに出て体を拭きました。


鏡越しで見る傷跡は、実際に見た傷跡よりも思った以上に重症な感じだなと思いました。


急いで身支度をして部屋に戻りました。


部屋に入りすぐにドライヤーをしました。


運動不足で背中や腰がバキバキです。

ドライヤーを持つ腕も段々と痛くなりました。


どうせ髪の毛結ぶし・・・と思い、前髪と頭頂部だけ念入りにドライヤーをして終わりにしました。


しばらくすると看護師さんが来ました。

この日の担当も浣腸をしてくれた看護師さんです。


看護師「末っ子さん、シャワー予約表見ましたよ。シャワー浴びれましたか?」


私「浴びれました!シャンプーしてスッキリしました」


看護師「良かったです!体調どうですか?」


私「体調は大丈夫です。お腹の痛みがまだありますが、何とかやってる感じです」


看護師「何かお手伝い出来ることないですか?」


私「今はないです。大丈夫です」


看護師「何でもいいので力になりたいです!んーと、眩しいからブラインドを下げるとかどうですか!?」



見た感じ、私より少し年下な感じの可愛い看護師さんです。ここまで熱心な看護師さんがいるんだなと感心しました。



私「あー、じゃあブラインド下げてもらいたいです」


看護師「わかりました!・・・こんな感じですかね?もう少し開いてた方がいいですかね?難しいなぁ・・・」


私「あはははは笑い泣き色々ありがとうございます」


看護師「他にも何かあれば遠慮なく言ってくださいね。んー、ティッシュ取ってほしいとかそんなのでもいいので」



そんなのどんだけワガママな患者だよと思いましたが、この看護師さんが前に居た消化器内科には色々な患者さんが居たんだろうなと思いました。



一旦看護師さんが出て行き、ベッドでゴロゴロしていました。


コンコン。


部屋のノックがしました。


医師「末っ子さーん。入りますよ」


医師1人と婦人科の看護師さんが2名入ってきました。そのうちの1人は先程の看護師さんです。


医師「さっき主治医の先生からも話があったと思いますが、ペムブロリズマブについて詳しく説明しますね」


私「あぁ!はい、お願いします」


医師「看護師2名も同席して良いですか?」


私「もちろん構いません」


医師「じゃあ椅子を3脚持って来てもらえる?」


医師は看護師にお願いしていました。


準備が整い、ペムブロリズマブについて説明が始まりました。


医師「これがペムブロリズマブの説明書類一式になります」


私「はい」


医師「ペムブロリズマブはキイトルーダと呼ばれています。なので、キイトルーダと覚えてください」


私「キイトルーダ。わかりました」


医師「今から15分程度DVDを観てもらいます」


そう言って先生はキイトルーダのDVDを見せてくれました。



がん細胞はPD-L1という物質を出して免疫細胞のT細胞が出すPD-1という物質と結合する事で、免疫細胞の攻撃から逃れているそうです。



キイトルーダは抗PD-1抗体で、T細胞と結合する事によってがん細胞が発するPD-L1がT細胞に結合しないようブレーキをかける役目だそうです。



そうする事でT細胞は再びがん細胞へ攻撃をする事が出来るとの事でした。



ただ、副作用が沢山あります。



免疫を高める事で自分の免疫まで攻撃してしまうと、自己免疫疾患が起きるそうです。



糖尿病や甲状腺機能障害、間質性肺炎には気を付けていかなければならないようです。



その他にも目に異常が出たり、心臓や腎臓、皮膚障害も有り得るそうです。



ちょっとでもいつもと違うと思ったら、すぐに病院へ連絡する事と言われました。



糖尿病は、尿糖をチェックするものが市販で売っているので購入し、週に2回必ず測定するようにと言われました。



医師「以上で説明は終わりです。先程お渡しした資料の中にも同じDVDが入ってます。退院したらご家族の方にも見てもらってください」


私「わかりました」


キイトルーダの説明はこの時点ではあまり理解していませんでした。


ただ、副作用が沢山ある事は分かったので何かおかしいと思ったら主治医に言おうと思いました。


夜ご飯は食パンでした。

果物はバナナだったので、朝ごはんっぽいなと思いました。


抗がん剤の話や副作用を沢山聞きましたが、私の頭の中は脱毛する事でいっぱいでした。


ウィッグはどうしよう。

脱毛、ほんと嫌だなぁ・・・。


そればかり考えていました。


退院まであともう少しです。

この日は疲れたのか、早めに就寝しました。


こうして手術後4日目が終わりました。