手術が終わり病室に戻りました。


移動はベッドでの移動で、私はとにかく眠たくて寝ていました。


バタバタとする音と声が聞こえました。


『部屋に着いたんだな。眠たいなぁ』


そう思っていました。


看護師「・・・・・・完了しました。今の時間は12時45分です」


看護師さんが別の看護師さんに何かを話しながら最後に時間を伝えている声が聞こえました。


『あれ・・・?今日の手術って、確か終わって部屋に戻れるの14時頃って言ってたような・・・』


1時間ちょっと早く部屋にいる事に、不安になっていました。


でも、眠たくて時間を自分で確認する気力がありません。そのまま寝てしまいました。


ようやく目が覚めた時、口には酸素マスク、足はシュポシュポと音がしている血栓予防のマッサージ機、腕には点滴、私が見える範囲ではそれらが体に付いていました。


しばらくボーッとしていると、部屋に主治医が来ました。


主治医はベッドの脇に座りました。


主治医「末っ子さん、手術お疲れ様でした。気分が悪いとかそういうのはありますか?」


私「特に大丈夫です。でも先生、やっぱりトイレ行きたいんです。おしっこが漏れそうな感覚がずっとあるんです」


主治医「尿管の管が膀胱を刺激して、それで尿意を感じてしまう人がいるんです」


私「そうだったんですね。なんか凄く嫌な感じです」


主治医「そうだよね。でもおしっこは管から出てますからね」


私「わかりました。あ、先生、腫瘍取れましたか?」


そう聞くと、先生は首を横に振りました。


私「え・・・?子宮と卵巣は・・・?」


主治医「そのままです」


私「そのまま・・・?」


主治医「腫瘍がS字結腸にくっついていて、簡単に剥離出来ましたがS字結腸の表面が硬くなっていて中まで浸潤している可能性があります。それと、腫瘍が右側の骨盤底にくっついていて、スペースが取れず子宮が取れませんでした」


私「そうですか・・・」


主治医「5月1日に大腸内視鏡検査をして中まで浸潤してるかどうか確認します。また下剤を飲むのは大変なので、それまでは点滴にします」


私「わかりました」


主治医「経過が悪くなければ退院を早めて、その翌週から抗がん剤をやります。抗がん剤は3種類の抗がん剤になります」


私「3種類も・・・?」


主治医「はい。パクリタキセル、カルボプラチン、キイトルーダです。この説明は後日行います」


私「わかりました」


主治医「今日はゆっくり休んで。また来ますね」


そう言って主治医は部屋を出て行きました。


腫瘍、取れなかったんだ・・・。そう思ってとても落ち込みました。


抗がん剤が効くかどうか分からないので、これからどうなるんだろうと不安でした。


それと、抗がん剤の副作用が耐えられるものなのか、それも不安でした。


主治医が出てしばらくすると看護師さんが来ました。


看護師「起きたんですね。飲み物飲みますか?」


私「はい・・・冷蔵庫にストロー付けてあるお水があるのでお願いします」


事前に100均でストロー付きのペットボトルキャップを買って取り付けておきました。


お水を少し飲んで、冷たくて美味しいと思いました。


看護師「何か必要なものがあったら取りますよ」


私「あ、そしたら引き出しにスマホが入ってるので取ってもらっても良いですか?」


そうしてスマホを取ってもらいました。

時間を見ると15時過ぎでした。


看護師さんが部屋を出て、私はLINEを開きました。


『お兄ちゃん達に言わないと・・・』


そう思い、LINEを送りました。


お兄ちゃん達は淡々と返信してきて、とりあえず今日はゆっくり休めと言われLINEを終えました。


手術後、お父さんとお母さんがどんな気持ちで帰ったのかを考えると胸が痛かったです。


お母さん、泣いてた理由はこれだなと思いました。


私よりずっと、お母さんは辛かっただろうなと思います。


私は主治医から話を聞いても、涙が出ることもなくただただボーッと考えていました。


そして、おりものが出てくるのを感じ、ほんとに腫瘍は取れなかったんだなと痛感しました。


初めての手術は、試験開腹で終わってしまいました。