あとがき


 私にとっては人生最大の決心!くらいの勢いで乗り込んだ旅でした。帰ってきて今、大きな声で言えます。「行って良かった! この先何があったって、この選択を後悔することはない!」と。


 本当にいろいろ考えた旅でした。本文を読んでくださった皆さんはもうお分かりだと思いますが、ただおいしいものを食べて、きれいな景気を見て、買い物を楽しむだけの旅ではありませんでした。地球上のいろんな場所を訪れながら、その土地のことや生きていくということを考える毎日でした。船に持ち込んだB5サイズの日記帳は、ほとんどが旅の記録ではなく自分の思いを書いていただけなのに200ページを超えました。

95日間の旅行を終えて、今私が一番思うのは、「体験することこそ、何ものにも代えがたい宝だ」ということです。今の時代、テレビやインターネットなど、さまざまな媒体を通して、私たちは世界各地の情報を知ることができます。でも、どうしても他人事です。少なくとも、旅に出る前の私はそうでした。地球の裏側で人が生活していることなんか、全然リアルに想像できず、切り離された「関係ない世界の出来事」でした。

でも今回、船に乗って、95日間で地球をぐるりと一周、まわれてしまった。西へ西へ進んでいたら、もとの場所に戻ってきた。

 おおっ、地球ってホントにまるいんだー!そんなおバカさんな実感こそが、「情報」だけでは得られない、大切なものなんだと思います。地球の大地とそこで生きる人を、自分の五感で感じることで、今後、そこで暮らす人のことを、実感をもって、具体的にイメージすることができる、これは大きな違いです。

そしてまた、今後の自分を育てていくうえでも、体験は大きな力になります。私たちが何か考えるときに一番の材料になるのも、人に話をするときに一番の説得力を持つのも、「自分が体験したこと」だと思うからです。

毎日同じ生活をして、同じ人とだけ会っていてはできないことを体験できる、旅はそんな大きな魅力を持っています。


 帰ってきて、何人かの人たちに、「考え方は変わった?」と聞かれました。大きな根っこは変わっていない、でも、ひとつひとつ小さな物事を考えるときに、この旅で体験し、考えたことが絶対に影響してくるはず、というのが私の答えです。毎日仕事に追われて忙しかった日々には見出すことができなかった「考えるための時間」を、たっぷりと持つことができた、これは大きな財産になりました。

 何も地球一周しなくてもいい。時間やお金の面で都合をつけるのはなかなかに難しいですもんね。だけどやっぱり、忙しく過ぎていく毎日のなかで、たまにはぎゅっと立ち止まって、旅に出かけてみることをお勧めします。

 普段とは違う景色と時間の流れのなか、見えてくるものが絶対にあるはずです。

 たとえばあなたが、今回の私と全く同じ旅にでたとしても、あなたならあなたならではの感じることがあるはずです。それは私とは全く違うかもしれない。あなた独自の思いは、あなたがその場に行かなければ感じられないものです。


 そうした機会をつくるかどうかは、あなたの気持ち次第です。

読んでくださってありがとうございました。

この旅行記が、あなたのこれからの楽しい旅と、ハッピーライフの参考になりますように。


(写真/地球を一周し、たどり着いた東京の景色。日が昇るなか徐々に近づく大都会東京に、万感の思いだった)

地球一周のように長旅をするときは、なにかテーマを持ってお土産を買い集めていくのも楽しいと思う。定番としては絵葉書や切手など。各国のものを揃えていけば、帰ってからのいい思い出になる。Tシャツやピアスなどなら、日本で身に着ける度にその国に思いをはせることができる。お酒が好きな人たちは、各国でスーパーに立ち寄り、ビールやワインを買っては、船内で飲んで楽しんでいた。日本に帰る頃には跡形も無かったわけだから、これはお土産とは言わないか・・・。これ以外にも、各国のコインを集めたり、ワインのラベルをとっておいたりと、人それぞれに旅の思い出作りが行われていた。

南太平洋6

いよいよ、今クルーズ最後の寄港地に来てしまった。神戸まではあと1週間。最後に訪れたのは、ミクロネシアのポンペイ。泳げるようなビーチは本島にはないと言われ、最後にもう一度美しい海を見ようと、オプショナルツアーに参加し、シュノーケリングポイントへ連れて行ってもらった。

セイシェル島、タヒチのモーレア島、そしてサモアと、十分に海の美しさを堪能してきた。だけどここには、また違う色の海が広がっていた。信じられないほどの透明感。何十メートルも先の砂が、すぐそこにあるように見える。エメラルドグリーンに近いような、明るい色だった。

シュノーケリングポイントに着くとボートがそこに停まり、海と魚を楽しむ時間が十分にもらえた。ここもまた、すごい種類と数の魚たち。時間がたっぷりあったので、ひととおり泳いだ後、MDで音楽を聴きながら、ボートの上で海を眺めた。

すごく贅沢な時間がすぎた。ちょうどいい気温、やさしい風、お気に入りの音楽、そしてキレイな海。どれだけでもボーっと眺めていられた。歌を口ずさみながら、キラキラと輝く海の青をいつまでも見ていた。

20枚くらい撮ってきた写真を後日現像に出したのだけど、その美しさは写真ではやはり伝わらないなと思った。光の当たり方など、全然違う。見てきたこの目、感じてきた心で、ずっと覚えておこうと思った。

どうしたって再現できない、その瞬間その場にいることでしか知ることのできない美しさを、感じられた幸せ。忘れない。大切な大切な記憶。

(写真/キラキラ輝く海をバックに。この旅で出会った大切な友達たちとハイチーズ!)

南太平洋5

 服や靴、カバンなど、身につけられるものを買うのが旅行の大きな楽しみという人も多いだろう。私も旅の中でさまざまな「自分のための」お土産を買った。

 まず、旅行先で買ってみて欲しいのは、各国の民族衣装。今回の旅では、特にアジアが充実していた。香港はチャイナドレス、ベトナムはアオザイ、シンガポールではサリーが買えた。また、民族衣装とは少し違うが、シンガポール航空のスチュワーデスさんの衣装もお土産として人気だった。

 日本でも普通に使える品々を買うなら、南米。特にアルゼンチンのブエノスアイレスには、安くておしゃれな洋服や靴が並んでいる。特にサンダルはかわいい。カバンは、皮ならやはりブエノスアイレス、手編みのオリジナルカバンはチリのプエルトモンで手に入る。

 また南米では、宝石も日本と比べてずいぶん安く買える。ブラジルのリオデジャネイロには有名な宝石店が並ぶ。日系のところもあった。美しいカットを施された宝石が、手の届く値段で売られているので、その気がなくても目の前にすると買ってしまいそうになる。チリではラピスラズリが有名。ただし、露店のようなところでは偽モノをつかまされることもあるので、信頼のおける店に行ったほうがいい。

 ちなみに、男性陣の間で人気があったのは、サッカー王国ブラジルやアルゼンチンで売られていた、サッカーのユニフォーム。地元チームのユニフォームをさっそく買って着ていると、現地の人たちの反応も上々だったようだ。


(写真/ベトナムでアオザイを購入。それも赤と白と2着も。この赤のアオザイは、友人の結婚式などでも活躍してくれています)

南太平洋4

 とうとう3月に入り、旅もあと2箇所の寄港地を残すのみとなった。16箇所目となった寄港地は、サモア島のアピア。観光案内所で情報を得た「美しい海」を目指して、タクシーに乗り込んだ。

南太平洋の海、美しさはどこも素晴らしかったけど、足の着く場所で見えた魚の種類は、ここサモアが一番多かった。アピアからはちょうど島の反対側に位置する「ラノマヌビーチ」でおよそ3時間、私は飽きもせず、サンゴに隠れる魚たちをずっと見ていた。青・黄色・黒と、色とりどりの魚がいたのだが、そのなかで一種類、いつ見てもにらめっこになってしまう魚がいた。

茶色っぽくて体長は7~8センチ。他の魚は、私が近づくとたいてい違う方向にスイッと逃げていくのに、この魚だけは、ぷくっとしたからだをひよひよと動かして、真正面から私を見る。またその顔が、スマートでない。どうも間抜けな感じなのだ。なんだかとても愛しくなってしまった。名前が分からないのが残念だが、私の持ち歩いていた水中カメラにはちゃんと愛らしいお顔が写っていた。もちろんしっかりカメラ目線の正面顔で。


(写真/ラノマヌビーチの美しい海。この島も地球温暖化が進めば真っ先に犠牲になる島のひとつだそうだ)

南太平洋3

 13カ国17箇所もまわれば、各地でさまざまなおみやげ物に出会える。今回訪れた国は南半球が多く、皆さんにはなじみの無いところも多いと思うので、これは知っておいて!というお勧めの有名お土産をいくつか紹介しておこう。

○ケニアの木彫り製品


キリン・ゾウ・シマウマ・カバなどサファリの動物をかたどったものや民族衣装姿のマサイ族など、種類豊富でかわいらしい。

○ナミビアの塩

ナミビアは海岸沿いに広い塩田が続いていて、良質の塩がとれる。スーパーを覗くとけっこういろんな種類があって楽しい。

アルゼンチンのマテ茶

あっさりとして飲みやすい、アルゼンチンの家庭でよく飲まれるお茶。茎入りのお茶の葉を買うと良い。マテ茶には専用の容器があるので、お店の人に使い方を聞きながら、お茶と茶器をセットで買ってみよう。

イースター島のモアイ

モアイの置きものをはじめ、モアイTシャツ、モアイピアス、モアイキーホルダーなど、イースター島の土産という土産はモアイで占められている。そのカタチは、どんなお土産よりも「すごいところに行ってきたぞ」という迫力に満ちている。

タヒチのパレオ

どこのお土産屋にも、すごい数のパレオが揃っていて、色もデザインも豊富なので目移りしてしまうが、それだけにお気に入りの一枚が見つかるはず。南国気分満点のお土産。


(写真/タヒチで購入したパレオ。髪に花を挿せば、タヒチな乙女の出来上がり!?)

南太平洋2

モーレア島のビーチからの帰り道、初めてヒッチハイクを体験した。軽トラックのような車のおっちゃんが止まってくれて、荷台のところに乗せてくれたのだ。乗った人数、およそ10人・・・。時間にしたらほんの5分くらいだったのだけど、初めてのヒッチハイクでゲットしたトラックの荷台は、なんだかとても楽しかった。10人乗るには狭くて、動くと落ちるぞ!と怒られたりしたけど、吹き抜ける風が最高だった。

でも、10人はさぞかし重かっただろうなぁ。ごめんね、そしてありがとう、おっちゃん!!


(写真/トラックの荷台から写したわけでは無いですが、心に染み入るタヒチの夕日)

南太平洋1

イースター島に続き訪れた島は、南太平洋に浮かぶタヒチ。「楽園」と呼ばれる美しい島だ。今回のクルーズで2日間滞在できるのはここが最後。パペーテからはフェリーで移動してモーレア島を訪れ、海の美しさをたっぷりと味わう!

水着になるのは12月末の寄港地、セイシェル島以来。さらに今回は、シュノーケリングセットと足ひれも登場し、存分に海を楽しもうという意気込みである。

モーレア島の海の透明度は抜群!足が着く場所でさえすでに、カラフルな魚が見える。さっそく足ひれをつけて海にダイブっ!と思いきや、あらら、その手に持っているのは浮き輪かしら?ワタクシったら。確か私は泳げたはず。足が着かなくたって、軽く25メートルぐらいは進めたはず。なのに、あら?あらら?

 試しに浮き輪を手放してみたのだけど、全然前に進まない。確かにおぼれはしないんだけど、「泳いでいる」子たちとは進み具合が、一線を画している!!

 あきらめて、その後の時間は浮き輪とともに過ごした。

これは、重大な発見だった。その日から私は、「何をもってして、『泳げる』というのか」が、さっぱり分からなくなったのだった・・・。

「泳げる」と思っている皆様、ごったがえす日本の海だから気づかないだけで、実は泳げなくなってる、なーんてことはないですか?


(写真/青い空、青い海。水の透明度が日本とは全く違う!)

南米17

モアイの製造工場だったといわれる山を訪れた。それぞれが自分のペースで見学に歩いていると、イースター島の民族衣装かなと思わせる格好をした男の子が私たちの周りをつかずはなれず歩いている。船のオールのようなものを持って、身につけているのはふんどしのようなものだけ。「おぉ!イースター島ならではの格好ね!」と思った私。「写真撮らせてくれる?」と彼に聞くと、ニコッと笑顔で言われた。「ワンピクチャー、ワンダラー」。どうやら彼のもくろみにまんまとはまったらしい。それでも、「こんな現地の人の写真、もう二度と撮れないわっ」と思って、1ドル払って撮影させてもらったのだけど・・・。

12歳くらいに見える彼の写真を写しながら、なんだか複雑な気分だった。

イースター島の人たちはほとんど英語なんて話せないのに、彼は「ワンピクチャー、ワンダラー」だけはちゃんと言えるし。撮られるのに慣れているらしく、こちらが何も言わないのにポーズつけてくれちゃうし。「観光地化」という言葉が頭に浮かんでいた。

イースター島には、もともとの文化や生活習慣があるのに、お金が入ってくる手段が観光となれば、観光のための島に変わっていくんだ。2年前に一度この島を訪れた人は、お土産屋さんが港に整然と並んでいるのにビックリしていた。「2年前はこんなことなかったのに・・・」。たった2年で大きく観光地化したイースター島。モアイ像のある島は、訪れてみたいと憧れる人も多い。これからきっと、ますます変わっていくだろう。素朴であることの美しさをなくさないでと願う私の気持ちなんて、所詮そこで生活をしていないから言える勝手な望みにすぎないんだな、と淋しくなった。


(写真/1ドル払って撮った写真がこれ)

南米16

私がイースター島に期待していたのは「モアイ」、それだけだったので、島から見る海の美しさには言葉を失った。

朝、「オロンゴ岬」の絶壁から見た海は、わすれな草のような色の青。静かに、ただ静かに、海は広がっていた。お昼過ぎに訪れた「アナケナビーチ」の海は、明るいセルリアンブルー。遠くにいくほど、色が深みを増していた。バスの窓から海を眺めながら、この地球上に『色』があることをしみじみと嬉しく感じた。光を受けた海の青、この美しさは写真やビデオでは伝えきれない。そこを訪れた人だけが、本物の美しさをその目で見ることができる。その色を見られただけで、たとえばどんな「物」を手に入れるよりも、幸せな気持ちになった。

イースター島と言えばモアイだけど、この海を見るだけでも、十分価値のある島だと思う。いろんな『青』を、豊かに見せてくれるこの島で、心の底までゆったりしてみてはいかが?


(写真/イースター島の海。どこまでも青い)