*長いです。興味ない人はスルーして?

 

 

読了。

 

そもそも横山秀夫は好きだった。

全部を読んだわけではないが、ちょっと男くさすぎる点を除けば

ストーリーの重厚感やジリジリとした緊迫感がなんともいえずよかった。

映像を見ようと思ったとっかかりは「クライマーズ・ハイ」だった。

何かの書評を読んだのか?父に勧められたのか?

何気なく図書館で借りて読んだのだろうと思う。はっきりは覚えていない。

面白かった。夢中で読んだ。映画があるのを知った時に見たいと思った。

 

そして見たのだった。酷かった。酷いなんてもんじゃなかった。

山崎努が演じる社主と堤真一演じる悠木との関係性や、山崎努の無意味なセクハラシーン。

鼻につくような男くささが表現できていないかといえばそんなことはないと思うが

ゾワッとしたのが忘れられない。そんなシーンに枚挙に暇がない、そんな映画だった。

ああ、映像化なんてこんなもんか ー。

そんな風に思ったのを覚えている。

 

その後オット氏と知り合って邦画が好きと聞いて見たかと聞いたと思う。

オット氏は見ていた。映画もえぬえいちけー版ドラマも。

そして言った「圧倒的にえぬえいちけードラマのほうがいい」。

そんなことがあるのか ー。信じられない自分がいた。

なぜなら民放でドラマ化された横山秀夫の作品を幾つか見て

ほぞを噛むような思いをしたからに他ならない。

そんなだからすっかり忘れていてタツヤへ行っても借りようなどとは思うどころか

探しさえしなかった。一体何をやっていたんだ?

 

そんな思いになったのは何気なく予告を見て録画しておいたえぬえいちけーの

ドラマ「ロクヨン」をまとめて見る気になったあの日だった。

オット氏が飲み会か何かで晩御飯が要らない、そんな日だった。

朝からだらだらと時を過ごし、何気なく録画リストを見た。

5話か ー。まぁ1話か2話見てみようか。つまらなかったら途中で止めればいい。

せっかくの家事さぼりデーを台無しにするのはいやだもんな。

そして再生したのだった。

 

止まらなかった。

オープニングの暗くて寒い映像からいきなり昭和64年の誘拐事件へと吹っ飛ばされた。

そして14年後に広報官となった三上の境遇 ー。

刑事を捨てきれず警務の仕事で行き詰まる三上とそれに絡んでくる過去のロクヨン。

何より映像が素晴らしかった。トーンを落とした画面に背景が生きるカメラワーク。

そして昭和がちゃんと画面に再現されていた ー。

見終わった後は部屋がもう暗かった。日が暮れていたのだった。

 

映画化の話を聞いたのは一昨年だったか。

キャストを見てそわそわしたのを覚えている。好きな俳優が沢山出ているではないか。

観たい、そう思った時に「クライマーズ・ハイ」がよぎった。

前後編 ー。レディースデイに行けるとは限らない。

今は自由に出かけられる曜日が限られている。

ハハと一緒にチチの介護 ー というほどではないが見守りをしているからだ。

1,800円×2か。それで同じ轍を踏んでしまったらどうする?

wowowまで待とう、それでいい。

 

横山秀夫風(似てないとかいいんだ自己満足だから)終わり。

こっからネタバレあるから未見、未読の方は読まないでねー。

 

というわけでやっとwowowで「ロクヨン」の映画前後編一挙放送があったよ!

録画してまず前編を見た。ハァアアアアア〜?!

なんなのこれ!冒頭の三上と美那子が失踪した娘か?の報を受けて遺体確認に行くシーンがない。(後であるかなと思ったらない)つかそのあとのロクヨンの事件をなぞるシーンでの犯人の声が!えぬえいちけーでは絶対に視聴者にさえ聴かせなかった当時の犯人の声がこんなにはやくあっさりと!(ここでもう警戒して見出す。つまりナナメに。なので抜けてたり見間違えご容赦)醜形恐怖という病気がどこにも出てこない。たしかにあゆみが自分の顔を憎悪している描写はあった。でもあれでは足りない。なんで???ただの家出娘のようになっているじゃないか。日吉君の描写がこれだけ?三上の一通目の手紙どこいった?「君は悪くない」だけ?「君がどこにいるか教えて欲しい。行ける場所なら会いに行く」あの手紙は鍵になってはいないの?ていうか三上しゃべりすぎ感情的すぎ。人身事故の加害者の実名を明かすシーン余計なことしゃべりすぎてねぇ?読み上げるだけじゃなくて演説入ってるよ意味わかんないわしかも銘川さんの留守電のエピソード飛ばしてるしぃい!そこ重要だろ?!後々の伏線だろ大事だろ?!なんで幸田に直に会いにいってん。そこ触れたらあかんとこやろ?飛ぶかもしれんやろ?しかも会いに来たってあれまさか夢オチじゃないよね前後と会話ちゃんとあってたよねおかしなシーン作ってんじゃねぇええ!

 

なんてブーブー言いながらこんなんじゃやってらんねぇと思って図書館で本を借りた。

正直映画を見た後に原作を読もうと思ったのである。でもだめ、我慢できなかった。

原作に忠実なだけがいい映像化とは必ずしも言わない。

だけどどこが付け足しでどこを引いたのかはストーリー上重要なんである。

えぬえいちけー版とちゃんと比べたいのである。

で、2/3くらいまで読んだとこで放送があって、オット氏が残業で遅かったから

暇つぶしに後編を見始めた。

 

なんじゃあこりゃぁああ〜!!なんで幸田と雨宮さんが話してるシーンとか出すん?なんで雨宮さんもしゃべりすぎるの?意味わかんないつか主筋がわかんなくなってない?!記者会見のシーンも二課長と講堂と会見場の行ったり来たりとかの大変なシーンの描き方が軽い!大変さが伝わらん!描写がおおざっぱすぎ!余計なシーンが多すぎるのに大事なシーンカットしすぎなんだよ〜!って身悶えして見てたらオット氏帰宅。

ちょうど身代金を持って目崎が家を出て〜くらいのところから一緒に見る。

 

そこ違う!こんなセリフないし!えええ?なんで雨宮さんが目崎の次女車に乗せて泣いてんの?なんなのこのシーン原作にあんの?ねぇじゃねぇかばかやろう!バラすなよここでネタばらしてんじゃねぇよ。ってかなんでお前指揮車から出てんの?最後まで広報官やれよ!広報官やるって決めてんだろ?伝わってこないんだよなんなんだよもう。なんだとぉ〜!!!何目崎おびき出してんの?これじゃあストーリー台無…ぎゃ〜もみ合ってる〜意味わかんない〜!これで逮捕になるとか?不当捜査になるんじゃないの?これで逮捕になる意味も分かんねーし!日吉君なに?もう出てきてんの?!そこ描写なし?日吉君とのエピソードやっぱりカットかよ!あれなかったら美那子さんがあゆみの生存を信じて不在を受け入れるのが宙に浮いてしまうじゃろうが!おまけに辞職だとぉおお〜!?あの二渡に「借りじゃないなら貸しでいい」つって松岡参事官のお供をするって広報官としての決意は?!三上が警務の皮を被った刑事から広報官になる話じゃねぇの?そこ余計だと思ったの?なんなのこの映画!!

 

というわけでえぬえいちけードラマ版は主筋をぐっと引き立てるためにエピソードを

そぎ落としてぐっとストーリーに引き込む脚本とピエール瀧の容貌と寡黙でありながら

ザ・公務員的な演技が素晴らしく、周りを演じているし・ば・た・恭兵ら刑事達のシブさと

キャリア組の本部長古今亭菊之丞、超イヤな奴平岳大(でもどんな嫌な役やっても

嫌いになれない平岳大)とどっちなの二渡?!な吉田栄作とか太鼓持ちのおっちゃん達とか

新井浩文、永岡卓也、山本美月の広報室メンバー、記者クラブのメンツ(永山絢斗の青臭さ!)

ああもうキャスト全部だわ。魅力を存分に引き出したキャスティングとその演技!

絶対雨宮さんは段田安則さんだから!萩原聖人とか村上淳とか高橋和也とかもう

最高にぴったりだから!木村佳乃さんの躁鬱的なシーンとかすごくリアリティだし!

尾美としのりの被害者親から覗く犯人の顔が!全編に流れる効果的な音楽が!

機会があったらロケ地巡礼したくなるような魅力的な背景の鉄塔群と

昭和な喫茶店その他のお店等々ほんと素晴らしいドラマ。

 

映画だって楽しみたかったよ。ほら「ガラスの仮面」で同じ「たけくらべ」を

北島マヤバージョンと姫川亜弓バージョンと見て(読んで)楽しんだでしょう?

「紅天女」もどっちも見たいでしょう?そんな風に楽しみたかったんだよ。

でもだめよ。ここまで主筋をめちゃくちゃにされたらもうロクヨンじゃないよ。

それにピエール瀧が大好きだから目にフィルターかかってるんじゃないんだよ〜。

三上さんだったらこうかな?三上さんだったらこんなことしないだろうなとか

思いながら演じていたっていうピエールの言葉を借りれば

三上さんは絶対こんなことしないんだよっていうのが映画版。

ひたすら「中の人は悪くない…中の人は悪くない…」って自分に言い聞かせてた。

(そうよ悪いのは俳優じゃない。このキャストでアナザーロクヨン見たかったもん)

 

というわけで今度「クライマーズ・ハイ」のえぬえいちけードラマ版を

借りてきてみようと思います。今度は!今度こそはきっと楽しめると信じて!