miao
西川治
角川書店

地中海の猫
岩合光昭
新潮文庫

写真家さんというのはよくもまぁ、こんな写真が撮れるもんだといつも思う。
というのは通勤路にいる顔なじみの半ノラだってうまく撮れたためしがないからである。
猫というのはふぃっとタイミングをはずして動くものである。そこが猫らしいといえばそうなのだけど。

miaoは西川治さんがイタリアで飼い始めて日本へ連れ帰ったズッケロとカピートの物語。
子猫のズッケロとカピートをもらい受けるところから日本へ連れ帰るまでをモノクロ写真で追っている。
小さくて丸い子猫の二匹がやがておだやかな雌猫と精悍な雄猫に成長し
二匹でまた子猫たち(二匹にそっくり!)を産み育てる様子は胸がいっぱいになる。
背表紙でもあるコリント式の柱のところにいるズッケロとカピートの写真を見たときは
なぜかぐぐぅっと涙が溢れた。

一方地中海の猫は野生生物を撮る写真家として有名な著者が、地中海の島々を飛行機の中から見た時
ふと思い立ったところから決心し地中海の国々の猫を四年間かけて撮ったもの。
ギリシア、イタリア、スペイン、トルコ、エジプト、モロッコ…猫なんてどこでも同じ?なんて思っていたら
そこここの風景にとけ込んだ彼らは、やっぱり日本の猫とはちょっと違って見える。
サントリーニ島の見えない猫の道、まっ白い塀からあくまでも紺碧な海を見下ろす猫
はるか昔シリアから渡ってきたネズミ捕りのマエストロたち。
岩合さんの文章と相まって、眺めているとついふふふっと笑ってしまう。

同じ猫の写真集といってもこのふたつはとても対照的でおもしろい。