ファウジーヤの叫び〈上〉
ファウジーヤの叫び〈下〉

ファウジーヤ・カシンジャ
レイリー・ミラー・バッシャー

ヴィレッジ・ブックス

その美しい模様は結婚の印。逃げられない風習の印。

上巻の表紙の黒人の女の子の手に染められた美しい模様に惹かれて手に取った本。
女性性器切除という風習から逃れてアメリカへ渡ったアフリカの女の子のノンフィクションのお話。
イスラム教にも(宗教そのものというより宗教学として)興味があるので読んでみた。

上巻のファウジーヤの少女時代の描写はとても瑞々しくて幸せに溢れていて
読んでいるこちらまでが幸せな気分になってくる。
中でも興味深いのは敬虔なイスラム教徒であるファウジーヤ本人のイスラム教観というか
コーランの解釈の仕方。イスラム教への偏見(コーランも読んだことないくせに)が改まる瞬間。

また彼女を取り巻く人たちのそれらも全く逆の意味で興味深い。
女性性器切除、彼女の父親が亡くなった後の彼女の環境の激変と意に添わない結婚。
ムハンマドも人々の平和を願ってイスラム教を作っただろうに
受け取る側によってここまで曲がって解釈されるのかとぞっとさせられる。
全ての大元はと考えると人間というのはなんて…などと思いつつも自分もその一人である。

どちらかというと違う部族間や個々の微妙な宗教観の違いとその摩擦から起きた事とはいえ
イスラムの風習からファウジーヤは愛する家族や国から離れなければならなくなるのだけれど
どんな状況になってもアッラーへの信仰心は決して捨てない。(ちょっとはぐらつくけど。)
そしてそれがなければきっと辛い時期をやり過ごすことなどできなかったのではと思うからなお
感慨は深い。

オリジナルタイトル:DO THEY HEAR YOU WHEN YOU CRY