十代の者 : まだまだ若輩者、勉強あるのみです。
二十代の者 : 若い頃はよく勉強したものです。今は実践・経験あるのみです。
三十代の者 : 勉強も実践も経験してきた。自分の考えはある程度、定まった。
四十代の者 : なにを言うか! この歳になって今まで見えぬものが見えてきたわ!
五十代の者 : ついに人生を悟ってしまいました。私の歳でこう思うのですが、
先生は、どのように思われるのですか?
先生 :
六十にして 五十九の非を知り、
六十にして 六十化す。
人間は歳をとればとるほど、人生の結論に達したと錯覚するようになる。
人生を悟ったなどと思ってしまっては、自分を肯定しようとする意志が働き頑固になる。
こうなってしまえば、人間の成長は完結する。
思えば、私はいくつの歳でも、過ちをし、そのたびに正してきた。
六十になった今、大きな五十九の過ちを知っている。
この六十でも、また過ちを犯すであろう。
しからばまた、正しい人間に変化するとしよう・・・。
*参考
「行年六十にして 六十化す」
「五十九の非なり」
(荘子 雑篇 則陽)
「年五十にして四十九の非を知る」
(劉安 淮南子 原道訓)