こんにちは、詩人オウィディウスです。
前回は、ガイウスが戦いに勝って凱旋するときの話で終わったね。
今回は、君がそのパレードを見に来たとして
そんな場面で女の子と会話するときのアドバイスだ。
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(その行列を)歓喜する若者たちにまじって少女たちも見物しているだろう。
その日はすべての人が喜びにあふれることだろう。
そして、そうした少女たちのうちの誰かが、敵の王の名を聞いたり
運ばれていくのはどこの土地、どの山、どの川の像かと尋ねたりしたら
なんでも答えるんだ。いや、聞かれた場合に限らなくてもいい。
たとえ知らないことでも、よく知っているように答えよう。
たとえば、こっちの、額に葦を巻きつけているのはエウフラテス川だ。
藍色の髪をたらしているのは、ティグリス川だろう。
こっちの連中はアルメニア人だということにしておこう。こっちはダナエゆかりのペルシスだ。
そっちのはアカイメニア人の住む谷にある町だ。
あれとあれは敵の将軍だ。君にも言える名前があるだろうから
言えればそれも言おう。言えなくても、それらしい名を言っておこう。
(『アルス・アマトリア』1. 217―228)
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ローマの凱旋パレードでは、敵国の山や川なんかを
人の形で象徴した像(たとえば川だったら、どの川にも神さまがいるって信じられてたから
その神さまの像といった方がいいかもしれないね)だったり
絵に描いたものだったり、そういうのをいっしょに運ぶ習慣があったんだ。
それを見物人の女の子が見て、あれは何?って聞くわけ。
ティグリス・ユーフラテス川って、世界史で習わなかったかい?
メソポタミア文明発祥の地を流れる川だね。
ユーフラテスというのは、エウフラテスの英語読みなんだ。
ティグリスの髪が藍色っていうのは、水の色から来てるんだろうね。
昔のペルシャの首都はペルセポリスといったんだけど
ペルシスっていうのは、もともとはペルセポリスから南西に広がる地方の名前だ。
ペルシャと同じ意味になることもあるけど。
で、ダナエというのはギリシャの王女。
ゼウスと結ばれて英雄ペルセウスを産んだ人だ。
ペルセウスの息子がペルシャを建国したという言い伝えがあるんで
ペルシスはダナエを王の祖先に持っているということになるね。
アカイメニア人というのは、ペルシャ王アカイメネスの名前から来た民族名だ。
要はこれもペルシャ人かパルティア人のことなんだけどね。
アケメネス朝ペルシャって、聞いたことないかな?
アケメネスも、アカイメネスの英語読みだよ。厳密にはちょっとローマ字読みも混ざってるけど。
まあそんなわけで、恋のきっかけ作りとして知識を披露しようということを挙げてみた。
君たちの時代は、知ったかぶりをするなという考え方が主流のようだから
無理には勧めないけどね。
それじゃ、また次回。