こんにちは、詩人オウィディウスです。
またご無沙汰してしまったけど、前回は
アモル(キューピッド)は少年アキレウスみたいなもので、
反抗的で手のかかる生徒だ、ってところまでだったね。
それでは『アルス・アマトリア』の本文の続き。
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だけど、牡牛の首にも重い犂(すき)はつけられるし、
気位の高い馬だって轡(くつわ)をかまされている。
だからアモルも僕には従うんだ、いくら弓矢で
僕の胸を傷つけ、たいまつをかざして振り回しても。
アモルが僕を射抜き、ひどく焼きこがせばこがすほど
僕は受けた傷に対して一段上の復讐をするつもりだ。
(『アルス・アマトリア』1.19―24)
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僕らの時代には、ガソリンエンジンなんてないから、
牛に畑を耕させたり、馬にひかせた戦車で外出したり、ってことが
あたりまえだったわけ。
犂は大きなへらをつけた道具で土を掘り返すもの、
轡は馬の口にかませて手綱を結び付けるもの、
って言ったらわかるかな。
どんな暴れ馬でも手なずけることはできる、というわけで、
「アモルも僕には従うんだ」っていうのは、実はパロディー。
僕の大先輩に、ウェルギリウスっていう人がいる。
彼が「アモルはすべてに打ち勝つ。だから我々も
アモルに従おうではないか」って書いてるんだ。
これを逆にしたわけ。
前にも言ったように、アモルはたいまつを持っていて
その火の粉でやけどをすると、恋に落ちるんだったね。
日本語でも「恋に身をこがす」って言ったりするよね。
アモルのせいでどんなに恋愛で苦しい思いをしたとしても、
いや、苦しい思いをすればするほど、
僕は復讐として、アモルの秘密を暴いて
人間たちに恋の攻略法を教えちゃおう、ってことなんだ。
まあ、前宣伝が長くてなかなか肝心の恋愛テクまでいかないけど、
もう少し待っていてください。
では、また次回。