イタリア、ローマの
サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会に
ミケランジェロ作
モーセ像があります
1505年、ローマ教皇ユリウス2世の依頼による
教皇の墓の建設の一部として
1516年に完成
全体としてはこんな感じ
下段中央がモーセ像
シナイ山で神から授かった
十戒を刻んだ石板を抱えています
よく見ると
モーセの頭には
角があります
YouTubeでも話してます👇
なぜ角があるのか、については
2つの説があるそうです
ひとつは
聖書の「ウルガータ訳」
による説
「ウルガータ」とは
「一般の」「大衆の」「共通の」「公開された」という意味で
共通訳のこと
4世紀後半から5世紀にかけて
聖職者ヒエロニムスが
友人である教皇ダマスス1世から
ヘブライ語聖書からの直訳と
誰にでも理解できる「共通訳」
の聖書を求められ、翻訳しました
ヘブライ語でには母音の表記がないので
「角」を意味する言葉は
「光り輝く」とも解釈でき
「モーセの顔が光を放っていた」
というのを
「モーセの顔に角が生えていた」
と訳したから、というものです
現在の聖書では、一般的に
「輝く」と訳されています
もう一つの説は
ヴルガータとは関係なく
モーセの顔が光り輝く様子を
角のような形で表現した
というものです
訳とか角とかとは別に
とにかくモーセの顔が光り輝いていたことは
間違いないようです
「角がある」と訳すのが正しい
と言っている学者もいます
旧約聖書のなかの「詩編」でも
牛との関連で使われている「角のある」という意味のものが沢山あり
それとの呼応である、というのです
牛や山羊、羊、鹿などの角は
「豊穣=富と子孫繁栄」の象徴です
ユーラシア大陸の各地に
太古から、有角神への信仰があり
儀式の際には角の被り物をするなどの風習もありました
こういったことから
「角がある」と訳することは
むしろ正当な発想とも言えます
異形である角は
善(神)であも、悪(悪魔)でも
人を超えた神聖な存在、権威ある者、であることを示す
表現方法でもあるのです
それを、聖書のギリシア語訳である七十人訳
ラテン語読みではセプトゥアギンタでは
「光り輝いた、栄光化された」と意訳しました
七十人訳(セプトゥアギンタ)とは
紀元前3世紀から1世紀にかけて
エジプトのファラオ・プトレマイオス2世の命で、
ヘブライ語の聖書をギリシア語に翻訳したものです
言い伝えでは、イスラエル12氏族から
6名ずつ派遣された長老たちが
72日間で翻訳した、と言われています
いきなり
「顔から角が生えている」といわれても
奇妙な感じがするので
七十人訳のほうに従っているのでは、
ということです