。  だが,謎が解き明かされることで,すべての問題が綺麗に片付くかというと,そうではない。たとえ秘密が明らかになっても,それが生まれるに至った事情を解決することはそう簡単な話ではないのだ。物語のラストで里志は奉太郎に向かって言う。 「僕達は所詮、高校生だ。学校の外には手を伸ばせない。ホータロー、最初からどうしようもなかったんだよ」  そうしたほろ苦い,一抹の余韻を残していくのが〈古典部〉シリーズのもう一つの魅力だ。また本作では,大日向の問題に自分から踏み込んでいったりと,奉太郎にも成長の兆しがはっきりと見える。今後シリーズが進んでいくにつれて,奉太郎がどう成長し,古典部メンバーの関係にどのような変化を生じさせていくのか。ぜひ,シリーズの続きを楽しみに待ちたい。しかし,シリーズの第1巻が2000年か……2000年ねえ……(遠い目)。 ■古典部じゃなくても分かる,米澤穂信作品 『折れた竜骨』(著者:米澤穂信/柧﹦撛纾?br>  米澤穂信は今回紹介した〈古典部〉シリーズの1作め『氷菓』で,第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し,2001年にデビュー,戦国IXA RMT。初期には,ユーゴスラビアから来た少女?マーヤと高校生たちの交流を描いた『さよなら妖精』や,小市民を目指しつつも,どこかうまくいかない高校生2人組を描いた〈小市民〉シリーズなど,高校生を主人公にした青春色の強いミステリーを主に手がけていたが,その後は犬捜し専門の探偵を主人公にした『犬はどこだ』,SF的設定を取り入れたパラレルワールドを描いた『ボトルネック』,メイプルストーリー RMT,高給に釣られて集まった人々によるデスゲーム『インシテミル』など,常に新しい作風に挑戦している。  そして2010年には,12世紀のヨーロッパを舞台に,魔術と剣の世界に推理を持ち込んだ意欲作『折れた竜骨』を発表。魔術と推理という相反する組み合わせでミステリーとして成立するのかと思う人もいるかもしれないが,本作は見事,第64回日本推理作家協会賞を受賞いる。  また作者がゲーマーであることもよく知られており,「タクティクスオウガ」の大ファンでもある。そう考えて読むと,『折れた竜骨』の世界観は「タクティクスオウガ」を彷彿とさせるものがあるし,また手がける作品の大半で女性キャラが妙に強かったりするのも,カチュア姉さんの影響だったりするのかもしれない。というわけで,米澤穂信ファンは「タクティクスオウガ」をプレイして,「タクティクスオウガ」好きは米澤穂信を読んでみよう
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