使わなければ衰える

北国新聞記事から

「お役御免で認知症になるかも」

良かれと思ってしたことが裏目に出る。ま、よくあることだ。Ｓ子さんは、８３歳になる姑のことで、自分を責めている。

ずっと夫婦共働きだったから、家事は姑にお願いしてきた。その姑も、数年前から腰が痛い、膝が痛いなど体の不調を訴えることが多くなっていた。

ちょうどよいタイミングと、Ｓ子さんは５０歳で仕事をやめた。姑に楽をしてもらうことにしたのだ。最初は喜んでいた姑も、やがて怒りっぽくなり、自分の部屋に閉じこもるようになった。急に、もの忘れが進んだ。同じ頃から、ふらついて、よく転ぶようになった。もうＳ子さんの手に負えない。

脳も身体も、使わなければ働きは落ちてくる。認知機能が低下する。運動機能が衰えて転倒しやすく、寝たきりになったりする。Ｓ子さんのケースでは、彼女の思いやりや、責任感の強さが仇になったのだ。これまでの恩返しと、精いっぱい、姑に楽をさせたのが悪かった。

それまでの姑は、家事に負担を感じることもあった。愚痴の一つも出た。が、自分が家族の役に立っていると思って、頑張ってきたのだ。そんな心の支えが、なくなった。もう何もしたくなくなった。

８０歳代には、３人に１人、９０歳代では半分以上が認知症という統計もある。しかも、男性より女性に認知症が多くなってくるという。が、それは女性ホルモンのせいではなかろう。女性が８０歳代になると、夫はいなくなり、孫たちも離れていく。急に、お役御免で淋しい隠居生活になる。ワッシーは、それこそが、女性に認知症が増える原因ではないかと思う。

もっとも、２０～３０年後の超高齢社会では、老人は楽などできなくなる。子供なんか頼りにならないのだ。おかげで、死ぬまではピンピンしておれるかも。ありがたや。

筆者：ドクター・ワッシーこと石黒修三　（いしぐろクリニック　脳神経外科専門医）

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明日朝までに　８０センチの積雪と聞いて　