少し前、ネットで「成功者の言葉しか世の中に残らないから『やればできる』というのが格言になる」という文章を見かけた。確かに、幾ら頑張っても必ず目標が達成できる訳ではない。何かを成功させるためには努力だけではなく、時間、体力、人間関係、資本、運など、色んなものが必要だ。それを考えずに、真面目に暮らしている普通の人達に、「お前らはやらないから出来ないんだよ」と嘲る人がいたら、それは腹も立つだろう。

 

 

 それにも関わらず、私はまだ「やればできる」と信じている。

 

 

 目標は、コントロールできる目標と、できないのがある。

 例えば、「英語のテストで100点を取りたい」というのはやればできる目標ではない。テストで低い点数を取りたがる人は殆どいないだろう。一方で、「毎日英単語を10個暗記する」という目標は、頑張ればできる。毎日10個ずつ覚えたら、100日後には1000個の英単語が覚えられるか?大抵の人は覚えられない。途中で忘れるからだ。それでも、恐らく3、400個くらいは頭に残る。それをやらなかった人は何も残らない。前者と後者の差は、時間と共にどんどん大きくなる。だから今自分にやればできることが何かを考えて、ずっと続くのが大事だと思う。

 

 

 

 私は5年前まで、水泳が出来なかった。日本と違って、韓国ではプールのある学校が少なく、当然水泳の授業もなかった。それに私は幼い頃から水が怖かった。プールの底に足が着いても、頭を水の中に入れたら3秒を耐えられなかった。なのに30歳を過ぎて急に泳ぎたくなったのだ。

 

 

 

 流石に最初からグループレッスンは無理だと思って、個人レッスンを探した。最初の授業はプールの端の方に立って、壁を掴んだまま頭を水の中に入れて直ぐ出すのをずっと繰り返した。3秒も我慢できなかったのが5秒、10秒になり、今は4つの泳法が全部できるようになった。もっとやればオリンピック選手になれるか?そんなことは無いだろう。それはやってもできない。でも、水泳ができるようになってから、以前より自信が湧いてきた。その後、従妹に頼んで自転車の乗り方を教えて貰った。(私は体育関係は全部駄目な人間だった)自転車は水泳よりもっと簡単で、直ぐ乗れた。天気がいい日に自転車に乗って川沿いを走ったら、凄く幸せな気分になった。

 

 

 

  勿論、何かに挑戦し、それをずっと続くのはそう簡単ではない。食事、仕事など、必須的な活動さえ、毎日やるのはきつい。私も毎日運動したくない、本読みたくない、授業取りたくないと自分と戦って、しょっちゅう負ける。それに時間と体力は限られているのに上達したいことは山ほどある。いつ何をしたら効率的に全部やれるのか分からない。これを頑張ればあれの実力が落ちる。それに皆が私のように自分に集中できる時間が多いとは限らない。子育てをする人とか、毎日残業をしないといけない人は、自分のために何かをやる自体が贅沢なのかも知れない。

 

 

 

 それでも、毎日5分、10分でもいいから何かをやってみるのは大事だと思う。大したことでなくてもいい。いつもやっていた仕事のやり方を変えたり、意識して周りの人達に優しくしたり、運動がてらバスに乗らずに30分程歩いて帰たり、できることは幾らでもある。私だって大したものではないけど、何かをずっとやっていたお陰で、10代、20代の頃よりもっとましな人間になったと自負している。これから40、50、60になっても、自分ができることをやり続けて、自分の可能性を広げたい。