【婆ちゃん、助けて】
「もしもし、婆ちゃん? オレだよ」
「えっ、だーれ?」
「オレだよ、ほら、オレ、、、」
「あー、、サトルかね?」
「そーだよ。サトルだよ」
「どうしたね?」
「婆ちゃん、実はね。大変なことやっちゃった。
さっきね、電車の中に、カバンを忘れてしまって。
その中に、会社の重要な書類と、契約のために渡された
現金30万円が入ってたんだ」
「えー、そりゃ大変だね、すぐ駅員さんに言ったのかい?」
「言ったんだけどね。駅員さんは、現金は、まず出てこないよ、だって。
どうしよう。困ったよ。オレまだ、見習い中だから、会社にばれたら、
絶対、クビになっちゃうよ」
「それは、困ったねー」
「ねー、婆ちゃん、助けてくれないかなー。頼むよー」
「そうだね、30万円でいいのかい。なんとかしよーかね」
「ありがとう、助かるよ、オレの口座に振り込んでくれるかなー」
「あー、分かったよ、、、、、、。
ちょっと待って、サトルは確か、まだ学生だったよね。
会社に入ったのは、確か、タケシの方じゃなかったかね?」
「あっ、オレ、タケシだよ。さっきタケシって言ったよ」
「そうだったかねー。婆ちゃん、最近ボケてきてね。
そうだね。タケシって言ったよね」
「やだなー、婆ちゃん、まだボケるのは早いよ。
ところで、オレの口座番号はね、、、」
「ちょっと、待っておくれ。今書くものを用意するから」
「うん、だから、今日中にこの番号に振り込んでくれるね」
「あー、分かったよ、これからすぐに警察に行くからね」
「えっ、あっ、、警察じゃないだろ。銀行に行くんだろ?」
「あっ、そうそう、銀行だよね。やだね、婆ちゃん、やっぱりボケてきたかね」
「、、ったく、もう、、、。早く行ってね」
「でも変だねー。タケシは確か、交通事故で先月から入院中じゃなかったかねー」
「い、、いや、、もう治って、退院したんだ。昨日から、会社に行ってるよ」
「あー、そうかい。それは良かったね。ごめんね、見舞いに行けずに」
「いいよ、いいよ、それより早く、銀行に行ってね」
「あー、それじゃ、全快祝いもかねて、40万円振り込んでおくよ」
「ありがとう、助かるよ」
「あっ、そうそう、クニオ。母さんは元気かい?」
「えっ、、、オレ、、、タ、ケ、シ、、、、」
「クニオだよね。お前の母さんから、最近連絡がなくてね。
薄情な娘だよね」
「う、うん、母さん、元気だよ」
「そーかい。で、母さん、私との約束、覚えてるかな?」
「えっ、約束って?」
「あれ、あの時、クニオもいたじゃない。」
「あーー、、、そうだったっけ」
「あっ、クニオじゃなかったかね。
というこは、ヒロシ、アキラ、ケイコ?」
「えっ、いや、分かんないな」
「えーーと、あんたは、誰だっけ?あっ、、ケイコだよね」
「あっ、あーー、、、そうよ、ケイコよ。ねー、婆ちゃん、早く銀行に行こうね」
「えっ、銀行?どうして?」
「だから、あたしが、電車に、30万円、忘れたから、、、」
「あっ、そうそう、思い出した。30万円、振り込むんだね。この番号に」
「えーー、40万円だけど、いいよ、30万円でも。
婆ちゃん、ボケてないよね。大丈夫だよね」
「えー、大丈夫だよ。最近は、水知らずの人から時々電話がかかってくるからね。
こうして、楽しく話ができてね。おかげでボケずにすんでるよ。
じゃ、早速、警察に行ってくるよ」
「あっじゃーーー」
(END)