サッカーに限らず、多くのチームスポーツ競技の国際試合では開始前に国歌を流す。そして、多くの選手が胸に手を当てながらわが祖国の国歌を歌うのであるが、サッカー・ワールドカップ史上初めて決勝戦に進出したスペインの選手達は国歌を歌わない。

  厳密に言えば、「歌わない」ではなく「ハミングしかしない」となるし、「歌わない」ではなく「歌えない」のだ。なぜなら、スペイン国歌には正式な歌詞がないからだ。

スペインの国歌は「国王行進曲」と呼ばれ、その歴史はヨーロッパの中で最も古い部類に入るという。18世紀後半から王室の公室行事などで演奏されるようになったことから国歌として認識されるようになった。

現在まで一貫して歌詞がなかったわけではなく、1931年の王政廃止前最後の国王だったアルフォンソ13世の時代、そしてフランコ独裁政権下の2度にわたって制定された。

しかし75年の王政復古後はいずれの歌詞も非公式のものとなっている。

  以後、国歌に正式な歌詞のない状態が続いているスペインでも、2008年の北京オリンピックを前に他の多くの国歌同様歌詞を採用しようという動きが見られた。

しかし、歌詞が決まって制定の動きが大詰めを迎えたところでプランは白紙に戻ってしまった。

候補となった歌詞に偏りがあるとの意見が多かったことと、独自の「国歌」を持つカタルーニャ地方など一部の地域からの反発を受けたことが大きな原因となったようだ。

かくして、今大会でも歌詞なしの国歌のもとにスペインは決勝まで勝ち上がってきたのである。

  強豪と呼ばれながらもワールドカップの栄冠には全く縁がなかったスペイン。

世界的にはあまり多くない歌詞なしの国歌が、南アフリカの地で勝利の凱歌となることを、多くのスペイン国民が望んでいる。

記事提供サーチナ 編集担当:柳川俊之