軍隊的異常心理 | 伊藤 禎高

伊藤 禎高

たまに書きます

元陸軍兵「自分の脚を切断する時、のこぎりの音が聞こえた」
 破片が私の左足を砕いた。骨は砕け、飛び出した血管が土の中に埋もれていた..........≪続きを読む≫


軍医が手当てをしてくれた。といっても、骨や肉片を拾い集めて包帯で縛るだけだ。木の枝で造った担架に乗せられそうになって、私は必死に抵抗した。敵前で小隊長が退くわけにはいかないからだ。
「俺は下がらないぞ!」
 敵弾が飛び交う中で叫んだ。軍医は「何を言うか!」と無理やり兵に命じて私を担架に乗せた。俺は下がらないとまた叫んだが、身体は後方へ運ばれていった。悔しさのあまり涙が出た。


このくだりの心理状態、
とてもよくわかると同時に、
医者が冷静に対処してくれて
命を落とさずに済んで、正解だったと思う。

こういう時に日本人というのは、
損得でなく、
仲間の前で裏切るような真似が出来るか、
という気持ちになる。

どうせみんなで行かなきゃならないなら、
自分が一番に弾の飛び交う所へ出ないと、
だれが一体そんな役目をやりたいと思うか。

だったら俺が行くしかない。

こういう心理状態は、
甲子園の高校球児なんかも似ている。

ここまで3試合完投してきて、
2回目の延長戦で
肩は痛いし
爪は割れているし、
あまりの疲労にさっきは便所で吐いた。

なんだかずっと地面が揺れているような感じがして
もう体は悲鳴を上げているが、
俺が泣き言を言うわけにはいかない。

チームメイトにはきつい言葉をかけているが、
そうでも怒鳴っていないと、
自分がくじけそうだ。

1ミリでもくじけたら、
そのまま気を失って布団に入ってしまう。

1ミリたりとも押されるわけには行かない。

もうこれが最後だ。
肩がくだけようと、
爪がはじけようと、
二度とボールが握れなくてもいい、
今日だけは最後まで戦い抜いて、
決勝へ行くんだ。

そんな心境で、仲間がつらそうな顔をしているのを
罵倒して、
自分が弱気になったら
全員に悪影響を与える、
と思って、
余裕のある表情を作る。

あるいは、
たしか空手の全日本選手権で、
黒沢という選手は
道着に小指が引っかかって折れ、
骨が見えているような状態でも
たたき続けていた、
その心理も似ているかもしれない。

非常に純粋な、
まじりっ気のない心です。

でも、
やはりそんな大けがで
パンチし続けるのはいいわけがないし、
将来のことを考えたら、
そこでストップするべきですが、
黒沢選手は、
何かを背負っていたのでしょうか。

じつは、
これには答えがあるのです。

今の人は知らないかもしれませんけど、
坂口安吾という小説家が、
戦後、
堕落論
という文を書いています。

そこに答えが書かれています。

ま、
数学ではないので、
解は1個とか2個とかいう物ではないですけど、
考え方ですね。
どういうふうにとらえるのが賢いか、
そういう、提案があります。

憲法改正で戦争に向かっている今こそ、
再度、
戦後無頼派の論調を感じてみてほしいです。




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