脳のサイズが記憶の喪失に影響を与える
アルツハイマーといえば、ほとんどの人がどのようなものか分かることでしょう。ご存じの通り、脳が萎縮して正常な判断ができなくなる病気ですが、脳内のある部分と関わりがあることが分かってきました。アルツハイマーを発症せずに亡くなった人たち
検死を行った際、正常な判断力を持ったまま、そして記憶力にも全く問題がない状態で亡くなった一部の人たちの中に、脳にアルツハイマー症の兆候や、プラークが広がっている人がいることは、長い間研究者たちの間ではよく知られた事実でした。そして、新しい研究により、そのような人々が海馬と呼ばれる脳内のある器官が大きいと言うことを明らかにされました。
「このような大きな海馬はこれらの人々がアルツハイマー症の影響による脳内の変化によって引き起こされる影響から脳を防いでくれるかもしれません。」とオレゴン保健科学大学のデニス・エルテンリヨン医師は述べています。
「将来的にこの事が、我々を予防策の確立に導いてくれることを期待しています。」
具体的な調査内容
調査のため、研究者は記憶力も確かで、亡くなるまで考える能力を有していた12人の人たちの脳を評価しました。しかし、検死の結果それらの人たちの脳内にはアルツハイマー症を引き起こす多数のプラークが見られたことを明らかにしました。彼らの脳は、同じように脳内にプラークが蓄積していて、亡くなる前にアルツハイマー症と診断された23人と比較されましたが、プラークの量は同等でした。
研究者たちはアルツハイマー症を発症したグループに比べて、そうでなかったグループでは海馬のサイズが20%大きかったことを発見しました。
残念ながらこの調査はまだまだ始まったばかりで、これ以外に統計を取った結果はありませんが、海馬という記憶に密接に関わる脳内の領域が、脳内の他の部分の機能低下を補えるほどの可能性を秘めているのかもしれません。
ちなみに、海馬というのは脳内に存在する領域のことで、短期記憶を司っているとされています。人間の記憶は実は2段階に分かれており、最初見聞きした事柄は、一旦短期記憶として海馬へ保存されます。その後、その中から特に印象の強いものが長期記憶として記憶される仕組みとなっています。
大抵の人は一度経験しただけではその詳細を事細かに記憶できませんが、繰り返し何度も同じ体験をすることでそれは何もしなくても思い出せるものに変わっていきます。それが短期記憶から長期記憶になったことを意味します。
脳は未開拓の森
コンピュータなどの導入によって大幅に進歩したとはいえ、未だに脳は未知の世界といえます。海馬の役割がはっきり分かったのもそれ程古い話でもなく、今後も新たな、全く想像もつかなかった働きが明らかになるかもしれません。
今回の報告ももしかしたらそのような隠れた役割の一つなのかもしれませんね。
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