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ピレネーMIX多頭飼育崩壊レスキュー


保護した十数頭の
最後の1頭ビルくんが先月、トライアルに出て行ったことは以前の記事に書きました。

それから早くも1ヶ月が経過しました。


これも4月10日の記事に書きましたが、成犬で引き取ったピレミックスたちは、成長過程で一度も飼い主以外の人と触れ合った経験がなかったために、そのほとんどが人を見ると怖がり、吠えながら威嚇しました。


時間をかけて私たちがなんとか触れるようになっても、馴れたと言うにはほど遠く、ただ怯えて硬直するのみでした。

私たちが見ている前では決して食事もせず、散歩に連れ出しても、怯えて一切の排泄もできない。

攻撃性を見せなかったことが唯一の救いでしたが、それでもこれほどまでに臆病で人馴れせず、そして大型の犬を希望してくれる人は、そうそういるものではありません。

そんな中で、ようやく里親希望者さんが現れ、4月初旬にトライアルに送り届けることができました。

初めての環境で、しかも生まれて初めてたった1頭になったビルくんは、夜な夜な泣き続け、里親さんを睡眠不足にし、ご近所にも多大な迷惑をおかけしたことと思います。

里親さんは寂しがるビルくんを不憫に思い、あの手この手でなんとか馴らせようと努力されました。
それでも現実は映画や漫画の世界ほど都合よくはいかず、何日経っても接近する里親さんに向かって吠えたて、逃げ回ります。
食事を持っていっても、なかなか口をつけようとはしませんでした。

せっかく飼った犬を撫でることもできない。
ご近所の犬たちのように甘えついてもくれない。

たとえ、純白の被毛を纏った美しい大型犬であっても、そんな犬を飼ってて楽しいでしょうか?


事前に「馴れるまでには半年から1年は覚悟してください。」とご説明させていただいたとはいえ、見聞きするだけと、実際に暮らして体感するのとでは大ちがいです。

里親さんはたびたびメールで近況を報告してくださりましたが、正直、その報告を受けるにつけ、「いつ戻ってきてもおかしくない。」と内心でヒヤヒヤしておりました。

いつ戻ってくるかわかりませんので、ビルくんのいた犬舎は空けておかねばならず、次々と依頼される新たな保護犬も受け入れることができませんでした。

そんなある日。

お届けしてから3週間後のことです。
このようなメールをいただきました。

「昨日と今日初めて散歩に行けました。
庭に出すだけなのを何日か続けて
今日は外へ出ました。
車や人に怯えるかと思ったのですが
それほど怯えず(ただし警戒はしてるようでした)
公園にも行き気分転換できたかなと思いました。
散歩中は大はしませんが  小はしてくれました。」

そしてその翌日には、

「報告です。
昨夜8時前にビル君と散歩に出掛けたのですが、
出かけてすぐオシッコをしたのですが、その30分後ぐらいの帰り道、
なんと
「うんち」をしてくれました。
奥さんと一緒に感激して帰ってきました。
うれしくて報告まで❗」

まずは、あのビルくんがたった3週間で散歩に行けたことが驚きでした。
さらには、1年半の間私たちとの散歩では一度もしなかった「うんち」を・・・。

ビルくんを知る一同、驚喜いたしました。

「あのビルくんが散歩中にうんちをしたんだって!」
「まさか、あのビルくんがうんちを???」

私たち、ポーズハンズメンバーの中でのちょっとしたニュースになりました。
いい大人が、うんちうんちと騒ぎ立て、他人からはバカバカしく思われるかもしれません。

しかし、このような小さな進歩で喜べることは、愛犬家として大事なことと思っていますし、誇るべきことだと思っています。

犬を飼うと決めた時、人は夢のようなドッグライフを想像します。
犬と一緒にあんなことがしたい、こんなことがしたい。

ですが犬は、人と同じように個性があります。
飼い主の思い描くように都合よく育ってくれることは、まずありません。
中には大半の犬が当たり前にできることが、何一つできない犬だっていますし、
皮肉なことに、その反対に虐待めいた飼い方をしても、優等生のように育つ犬もいたりします。

問題行動を抱える犬に悩む飼い主さんは、手のかからないご近所の犬たちを見ていると、自分の犬が恥ずかしく思えるかもしれません。
「こんなに愛情をかけているのに、どうしてわかってくれないんだ!」
とイラだちも感じるでしょう。
それはあせりになり、やがてあきらめに変わります。
「こいつはバカでダメな犬」なんだと。

そして人は犬を捨てます。
捨てないまでも、「犬にムリをさせちゃかわいそう。」とイイワケをして、小屋に入れっぱなしで餌だけを与える飼い殺しにしたりします。

でも、たった1㎜。
昨日より今日、今日より明日。今日より来週、来月、来年でも、たった1㎜でも進歩したことを喜べる気持ちさえあれば。
今日できなかったことが、いつかできるようになる。
他の犬と比べたりせず、当たり前のことができなくたって、ほんのわずかな進歩も喜び、根気よく愛情をかけ続けていれば、必ず犬はできるようになります。

時にはせっかく1㎜ずつ進んでいたものが、一瞬で1㎝も1mも後退してしまうことだってあります。
ですが、1㎜ずつの歩みはきっとその大きな後退を凌駕する日が来るはずです。

なにより、「手のかかる子ほど可愛い。」と言われるとおり、手をかけて育てるほどに、どんな犬だってかけがえのない存在になります。
そして気がついた時には、誰が見てもうらやむような素晴らしい犬になっていることと思います。

リハビリやしつけ、トレーニングとはそういうものだと思っています。
たかが「うんち」に感動できる人にこそ、犬を飼う資格があるものと思います。

まだまだビルくんが当たり前のことができるようになるまでには課題は山積みです。
ですが私たちのもとで、多数の中の1頭として暮らしていた時に比べれば、格段のスピードで進歩しています。

今後とも里親様には無理せず、
がんばっていただきたいと思います。









ポーズハンズ