グランベリアが部屋から去り、僕は魔王城を出た。

魔王城から出ても、グランベリアの一言がずぅーと頭の中を掻き乱す。

「許婚、か…どこかのお嬢様じゃないんだから、さぁ…」

もしかして、グランベリアってどこかの金持ちの娘で、缶詰状態が嫌で家出してきたとかそんな感じなのかな。

グランベリアにドレスを着せて想像してみる。

僕は少しだけ笑ってしまった、当人がいたらぶっ飛ばされることだろう。

それにしても、話が急すぎるって、許婚がいるとか信じられないよ…。




ぷにゅ。



という効果音でも出てきそうなぐらい柔らかい物が、突然僕の顔を包み込んだ。

「えっ」

「あらルカちゃんったら、積極的なんだから♪」

聞きなれた艶っぽい声が頭上から投げかけられた。

見上げると、僕はアルマエルマの体にすっぽりはまってしまっていたるようだ。

考え事をしていたとはいえ、さすがに気づけ僕っ!

背中に腕が回され、顔面に豊満なメロンが押し付けられている。

アルマエルマから発生している甘い匂いが鼻腔を擽り、脳内が麻痺しそうになる。

「ちょ、ちょちょ」

急いで引き離そうとするも、アルマエルマは「だめ~」と離してくれなかった。

全身の体温が上昇していくのがわかる…離して…。

そのまま引き離すことも、逆に抱きつこうなんて思いもなく、されるがまま。


「おとなしくなっちゃって、かわいいんだからもう~」

アルマエルマはなでなでして僕を解放してくれた。

「ご、ごめん。全く気付かなかった」

顔にまだ、やわらかい感触が残っていて、頭の中がほわほわしていた。

「ひどいわぁ、まぁ、別にいいわよ。それより、なんか悩み事かしら」

「わかるの?」

「THE・話しかけてくださいって言わんばかりだもの、当たり前よ…」

全くもーという呆れ顔。

やば、そんなにわかりやすい感じだったかな。

「折角ルカちゃんが目覚めて挨拶にでもいこうと思ってたのに…。勇者様は大変ね、目覚めてすぐにもう、悩み事を抱えているのだから」

「あはは、まぁね」

戦っていた時も忙しかったけど、目覚めた後もやっぱり忙しい。


「その様子だと、話したくない内容なのね?」

「うぐ」

さすがアルマエルマ、軽いノリでもしっかり見ているところは見ている。

「無理に話さなくてもいいわ、話さないとあなたの貞操が危ないけど」

「話せって言ってるよね!?」

アルマエルマの優しいようで優しくない一言に衝撃を受けた。

そして、そんなルカに衝撃を受けるアルマエルマ。

「ちょ、そんな嫌がらなくていいじゃない…」

「え、ご、ごめん…」

何が悪くて何が良いんだがよくわからないけど、とりあえず謝っておく

「謝ってくれるってことわぁ、食べていいってことかしら?」

いやらしく唇を舌で舐めるアルマエルマに、「本気だっ…!」と僕の脳内が危険信号を示す。

なんだこの誘導は…。

「だめにきまってるっ!!」

「連れないわねぇー。ま、元気出たんじゃないかしら」

「あっ…、あはは」

そういうことか、気を遣わせてしまったな。

アルマエルマは笑みを作って、僕の気持ちを軽くしてくれた。

「話せるようになったら、話せば良いわ」

「そだね、何とか、話せる具合になったら、聞いてくれるかな」

「当たり前よっ。それよりも、今は私の悩みをルカちゃんに聞いてほしいのっ」

アルマエルマの悩み?

先程アルマエルマは僕が悩んでいるのをすぐに見抜いたけど…僕は全然そんなの気がつかなかったぞっ…。


「まずは現場に向かった方が早いと思うの。ついてきて」

アルマエルマは先程と同じように僕を豊満な胸に押し付けると、そのまま羽音を響かせる。

地に足がついているという感覚が遠ざかっていく。

「ちょ、このまま、飛ぶの…?てか、急すぎるよ!」

相変わらずマイペースというか、自分のペースに人を巻き込むのがうまい。

「そうよ、もごもごされるとくすぐったいから、少しだけおとなしく、しててちょーだい」

そう言われたので大人しく目的地へ着くを待っているけど、これ酸素とか大丈夫かな…。

酸欠になったりしないだろうか。

そんな風に考えながら、アルマエルマから発生している甘い香りを嗅ぎ続けなくてはいけないのか。

これもこれで生殺しだ…。脳みそくらくらしてくる。

「ちなみに連れてって何をするの?」


「ナ・イ・ショ♪」


「連れて行って何をするのかを割合でいうと」


「人生相談1%…****(自主規制)99%」

「いやぁああああああっ!!!!」

もう既に飛び立ってしまっているため、もがくことも出来なかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――