「離れるのはなんて、嫌…もう、独りぼっちは、嫌…」

私はルカちゃんの腕に抱きついたまま、まるで赤子のようにわがままを呟いてしまう。


でも、そうしなければ、私はいなくなってしまうような気がして。

私という存在がこの世界から消えてしまう。

だって、そうでしょう…。

ルカちゃんと関わりを持たなくなる、なんて。

居場所がいなくなるなんて。

世界の誰からも認知されなくなるなんて、消えてしまうも当然よ…。




「だが」


魔王様の凜とした声がまた空気を震わせる。

「我は四天王の試験という前提で、その条件を下したんだ…。さて、お前は四天王になりたいのか?」

四天王になりたいか…。

そんなの、決まっている…。



「――もう私に四天王という飾りは必要、ありません…」


だって、ルカちゃんがいてくれれば私はそれでもういいから。


でも、もう私はルカちゃんにすら、会えなくなる。


「じゃあ、さっき下した条件は無効だな…。後は二人で、好きにするといい」

「えっ…」

魔王様の言っていることが最初はわからなくて、私はじっと見つめてしまう。


「四天王になりたくないのなら、私が提示した条件は無効になるはずだ。…幸せにな」


魔王様は背中を向けてそう言うと、この場から出て行ってしまった。

それを追うように出て行くたまも。

「おい、大丈夫かアルマエルマ」「…大丈夫?」

グランベリアとエルベティエは魔王様を追いかけずに、私の元へと駆け寄ってくれた。

「平気よ…。少し休憩したら治るわ」

「よかった…本当に良かったよ」

一時はどうなることかと思ったけど、何とか丸く収まってくれたみたいで…。

「…ルカちゃんといれることがわかって、私は、それで、十分だから…」

いろんなことを言いたくて、謝りたくて…。

それでも、今は押しとどめた。

「アルマエルマ…」

魔王様、ありがとうございます…。








「以前とは雰囲気変わったね」

「もぅ…。」

そんなやり取りに笑い合えるのが嬉しかった。
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その頃、アリスフィーズはアルマエルマとの戦いを終え、風に当たっていた


後ろでパタパタと追いかけてくるのはたまも。


「魔王様、むちゃしおってからに…」

「…」

「あんな意地をはらんでも、素直に好きと言って、振られた方がまだ清清しいじゃろう」

「我はたまもみたいに素直になれんのでな…」

ハァとため息をつく。

「全く魔王様の嫉妬も大概じゃな…ウチはこれも試練で、乗り越えられたらと話したじゃろう」


「…むぅ」





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それから、僕はアルマエルマとの生活を始めた。


僕の故郷へアルマエルマと戻り、彼女が思い出したことについて話して貰ったのだ。


「私は力が制御できなくて、サキュバスの村を破壊して、両親を殺してしまった、の…」

目を閉じて、そう言うアルマエルマ。



「そんなことが…。ごめんね、辛い事言わせちゃって」


「ううん、ルカちゃんには知っておいてほしかったから」



それを聞いて、申し訳ないと思いつつも嬉しかった。

その時、コンコンと玄関がノックされたので、二人してビクッと体を震わせた


僕が身構えつつ扉を開けると。

そこに人がいた気配などなく、地面には一枚の手紙が置いてあった。

「…?」

疑問に思って手紙を拾い上げると同じくして、アルマエルマも不思議そうにくっついてきた。

「アルマエルマ宛だよ…?」

「開けていいわよ」


アルマエルマは僕の肩に頭を置き、腰に手を回して、手紙をじーと眺める。

手紙を開けてみると、一枚の紙が入っていた。

そこには一言こう書いてあった。

――アルマエルマの両親はまだこの世界のどこかで生きている。と。

END