「だが、人間達はあたし達を魔物というだけで忌み嫌い。討伐を行い、あたし達の種族は激減したのだ」

パピーの手は、声は震えていた。

それがどれだけつらい過去だったのか…。

僕の想像を超えていた。

「そんな…そんなことって…」

つまり、僕たちがパピーの種族を殺してしまっていた。

「言いたくはなかったのだ。でも、ルカには知っていて欲しかったのだ」


「いいのか、僕が、君の先祖を殺してしまった僕が隣にいて」

いいわけがない。

僕はすぐにでもパピーをイリアスベルクに戻して、旅の続きをしたいぐらい。


でも、今までイリアスベルクで働いていて、パピーは本当に幸せだったのか…?

先祖を殺した種族がすぐ傍にいて、周りにいてパピーは…。

「大丈夫。確かにルカには知っておいて欲しかった。それだけなのだ…今はとても親切にしてもらっていて、感謝しているのだ」

「そうか…」


僕はそれ以上言葉が出なくて、彼女に料理を振舞って就寝した。

パピーは僕の料理をおいしいと笑顔で言ってくれた。

それは僕の顔が優れないための作り笑顔だったのかもしれない。





翌朝、出発の準備をしていると、パピーも早々と支度を終えた。

「パピーもやっぱり来るの?」

「当然なのだ。それとも、あたしには来て欲しくないのか?」

「い、いや、パピーがいいならいいんだ」

昨日の話を思い出して、ピリッと脳みその裏側が痛んだ。

「ルカ、気にすることはないと言ったのだ。今は今、過去は過去なのだ」

「パピーがそう思ってくれているのなら、僕は嬉しいよ・・・」

隣で歩いているパピーへ、力なく呟いた。

今まで僕は魔物と共存を望んできた。

しかし、パピーの経験がその妨げになってしまうかもしれない。

「次はどんな街へ連れてってくれるのだ?」

「次は大陸を跨ぐから、飛んでいかなきゃね」

バサバサという大きな羽の音が聞こえる。




ただ、パピーの考えが閉ざされたものだけではないということ。

…僕は十分嬉しかった。








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次に向かったのはサン・イリア地方(人魚達がいる街等がある地方)を飛ばして、ノア地方(ヤマタイ村がある地方)。

サン・イリア地方にも知り合いはいるが、後回しにしようと思う。

ノア地方の玄関であるグランドノア城(闘技場がある城)へ入ると色んな人たちが歓迎をしてくれた。

この街はなんだかんだいって魔物と人間が共存している、僕の望みの形である。

「うわぁ、でかいお城なのだ」

「あっちの方にはコロシアムがあるんだよ」

とコロシアムを指を指したのだが。

すぐ数ミリ先に覚えるのある…魔物が…。

「ア、アルマエルマか…」

「あら、ルカちゃんじゃない…。コロシアムの前で会うなんて奇遇ね」

どちらかというと、待ち伏せていたという方が正しいかも知れない。

そういえば四天王と会うのはとても久しぶりな気がする。

僕が四天王と戦っている時といい、イリアスと戦っている時といい、四天王にはとてもお世話になった。

僕を強くしてくれて、守ってくれた四天王。

次はいつか、僕が…。