それから、アリスとはなんとか和解が出来たのか紅茶やクッキーを出してくれた。

「おぉ、このクッキーうまいな」

最初は毒が入っているかもしれないとか思っていたけど、一口食べてみるとその美味しさに掻き消された。

「私が作ったのよ」

アリスがニコニコと笑う。

素直においしいといってもらえたのが嬉しかったのだろう。

「すげーおいしぃじゃん」

「えぇ、アリスはお菓子作りうまいわね」

先ほどよりも、更に顔を赤らめた。

「そんなことないわよ~」

「やっぱ、焼き菓子っつーのは自分で作った方がうまいよなぁ」

「そうね」

のほほんとした空気の中、一人だけ気絶中。

さすがに同情する。

なめくじを大量に被って気絶ってさすがにきついわ…。

「あ、まだ自己紹介がまだだったわね」

アリスは何か思いついたようにそう言って、視線を俺へと移す。

「そうだな、いい加減なんぱ男もやめてほしい」

そう呼ばれ続けていたら、この幻想郷に変な噂が広まってしまう。

「はいはい、私はアリス・マーガトロイドよ、これからよろしく」

「さっきも言ったけど、私はパチュリー・ノーレッジ」

「よろしく、白鳥神無だ」

ようやく、三人軍団の名前を聞き出した。

以前の目的をやっと達成した気分、とても晴れ晴れとしている。

「ちなみに、あんた以外魔法使いよ」

「あ、そうだったのか…」
 
ま、魔理沙は明らか魔法使いって感じだけど、この二人にしては似合わないというか。

「あ~、頭痛くなってきたわぁ…」

「日差しにあたると頭痛くなっちゃうのか」

といっても、この森にはあまり日差しなんか入ってないんだけどね。

「ずっと図書館に引きこもっているから…。アリス、そろそろ私は帰るわ」

「うん、わかったわ」

「じゃ、俺も森を出ないとな」

「あら、白鳥も帰っちゃうの?」

なんぱ男って言われないだけで、なんだか泣けてきた。

「うむ、ま、二人共仲良くね」

俺とパチュリーは立ち上がって、魔理沙を拝んだ。

これ以上ここに居座ると、気絶から目覚めた魔理沙がまた俺に爆弾を投げ込みそうなので、退散退散。


「それじゃあな」「じゃ、アリス」


「えぇ、また」


大きく手を振って、俺とパチュリーはアリスの家を後にした。

「パチュリーは飛んで帰るのか?」

「そうよ。歩くなんて、私にとっては自殺行為だから」

「そうかぁ…。またこの森を抜けなきゃならんのかぁ」

そう考えただけで全身の力が風船がしぼむように抜けていく。

迷路攻略を書き写した紙はあるんだけど、この地点からだとルートがわからないよ…。

「そう…、じゃあ…魔法で、私のイメージを送ってあげる」

「おぉ、森の抜け道とかわかるんだな!?」

「えぇ、抜け道なら覚えているから、じゃ行くわよ」


こ、これは・・・ありがたい!

パチュリーは目をつぶって呪文を唱えると、言われた通り、イメージが頭に流れ込んできた。



「おぉ…すごい・・・ありがとうな!」

「えぇ、これぐらいなら私にもできるから。じゃあね」

でも、こんなことして家まで体力持つかな?

もしかしたらこの術って大変なんじゃ…?

「・・・なぁ、パチュリー、君って何処に住んでるの?」

「紅魔館よ」

その単語が引っかかる。

「紅魔館って・・なんか聞いた事あるんだよなぁ・・・」

あ・・・そうか、橙からそんな単語を聞いた事があったな。

何か吸血鬼がいるとかいないとか。

「じゃ、またね」

「おぅ、じゃあね!」


パチュリーは飛び去っていった。

彼女の体も心配だが、俺も俺で危険な状況なので、パチュリーに甘えることにした。

「よし、じゃあ森を出るとするか」

貰ったイメージを頼りに、湿った雑草を歩き始めた。


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「おぉぉーい、お前等…あたしを置いていくなよ…」

↑実を言うと気絶したフリをして、三人の激怒を免れた。


ちゃんちゃん♪