「えっ…」
では、俺達を襲っていた妖怪はどこへ行ったのか?
爆発の後、景色がはっきりしてくると、黄色い髪をした少女が倒れており。
「大丈夫か」
俺の横には銀色の長い髪をした女性が立っていた。
その姿を、俺は舞い降りてきた神様と思い込んでしまった。
そして、俺の胸の中にある少女を俺は再び見つめる。
「橙…き、気絶しているだけか…」
橙が生きていてくれたことに、ホッと胸をなでおろした。
「そこか」
女性が発した言葉とともに、周りを眩しく光らせるするほどの炎の玉が繰り出された。
その火の玉の先で、一人の少女が見えた。
「藤原…」
怯えた声が誰かの名前を呼んだ気がした。
ふじ、わら…?
繰り出された炎は真横の木に当たり、根元がどす黒く焼け始めて当たりの闇よりも深いものへ変化する。
そして、木は当然のように根元に損傷をうけたことにより、倒れ始めようとする。
「ひっ…」
軋む音。
計算されたように、その少女へと焼き続ける幹が倒れていく。
怯えた妖怪の声が耳に届いた時。
家族が遠くなっていく、映像が、脳裏を流れた。
あの頃、何度も夢に見たあの光景。
もうあんな思いしたくなかった。
焼けた木とともに、あの妖怪が焼けて死んでしまう…。
死んでしまう。
あんなに怯えているじゃないか。
「あっ、危ない!!」
妖怪を助けようと、俺は走り出してしまった。
それは、反射とも言うべき。
「お、おぃ!!」
俺を助けてくれたであろう女性の声が響くが、俺の目にはもう、あの少女しか映っていなかった。
間に合ってくれ…!!
強く心の中で思う。
神様は俺に一度舞い降りてきてくれた。
だけど、もう一度!
もう一度だけ…見ていて…ください!!
もう、嫌なんだ!!
焼き続ける木がその少女へと直撃しようとした。
走りこんだ勢いを殺さずそのまま滑り込み。
地面と制服がこすれる音が奇妙に耳に響いて埃を撒き散らしながら。
ぎりぎりその妖怪を助けた時、その瞬間は助けてあげられた喜びで一杯になった。
「だ、大丈夫…か…?」
そして、複雑な感情が、後から流れ込んできて、俺は闇を見つめて止まってしまう。
今にも泣き出しそうな表情を浮かべている少女は、食べようとしていた人間に助けられたことに驚きを隠せないのか、
受け止めた手の中でうろたえていた。
お、俺は…一体…。
「ふんっ、お人好しめ」
俺を睨みつけて、助けてくれた女性は去っていってしまった。
一瞬静止してしまうものの、その女性を追いかけようと、受け止めた少女を優しく地面へ預けて走り出そうとする。
しかし…。
「まっ、待って」
振り向くと、腰が抜けてしまっているのか、その妖怪は立てないまま俺の手を握っていた。
その瞳は微かに揺れていて、目の端には涙が浮かんでいる。
「あなた、名前は…?」
体は動かないのだろう。
それでも、その手はしっかりと強く握られていた。
「白鳥だ、急ぐからな」
そう簡単に終わらせると、しっかり握ってくれた手を離してくれた。
少女にも優しさがある、その点が確認できただけで俺は満足だ。
暗い闇の中、なんとか橙を探し出す。
すぅ、すぅ、とこの窮地を脱出できたのを感じているのか、優しい寝息が聞こえてきた。
「橙、よく頑張ったね」
その頭を優しく撫でてあげると、猫なで声を漏らした。
「よし、もうちょっとだけ我慢してね」
起こさないように橙をおんぶして、俺はあの女性を追った。
「ま、待ってくれよ!」
闇に叫ぶも、返事は聞こえなかった。
――――――――――――――――
「る、ルーミアちゃん、大丈夫?」
抜けていた腰がやったとこさ戻ってきたのだろうか、翼の生えたその少女は、もう一人の妖怪へ近寄った。
「…大丈夫、なのかなぁ~…」
服がもともと黒いのか、それとも、先ほどの爆発で焦げてしまったのかわからないところである。
「…私、人間食べようとするの、やめようと、思ったの…」
「……もともと、人間食べる妖怪は、どうするのかぁ…」
「それは、力を強くするためだけじゃないのぉ?」
「…そーなのかー?」
「……」
―――――――――――――――――――――――――
では、俺達を襲っていた妖怪はどこへ行ったのか?
爆発の後、景色がはっきりしてくると、黄色い髪をした少女が倒れており。
「大丈夫か」
俺の横には銀色の長い髪をした女性が立っていた。
その姿を、俺は舞い降りてきた神様と思い込んでしまった。
そして、俺の胸の中にある少女を俺は再び見つめる。
「橙…き、気絶しているだけか…」
橙が生きていてくれたことに、ホッと胸をなでおろした。
「そこか」
女性が発した言葉とともに、周りを眩しく光らせるするほどの炎の玉が繰り出された。
その火の玉の先で、一人の少女が見えた。
「藤原…」
怯えた声が誰かの名前を呼んだ気がした。
ふじ、わら…?
繰り出された炎は真横の木に当たり、根元がどす黒く焼け始めて当たりの闇よりも深いものへ変化する。
そして、木は当然のように根元に損傷をうけたことにより、倒れ始めようとする。
「ひっ…」
軋む音。
計算されたように、その少女へと焼き続ける幹が倒れていく。
怯えた妖怪の声が耳に届いた時。
家族が遠くなっていく、映像が、脳裏を流れた。
あの頃、何度も夢に見たあの光景。
もうあんな思いしたくなかった。
焼けた木とともに、あの妖怪が焼けて死んでしまう…。
死んでしまう。
あんなに怯えているじゃないか。
「あっ、危ない!!」
妖怪を助けようと、俺は走り出してしまった。
それは、反射とも言うべき。
「お、おぃ!!」
俺を助けてくれたであろう女性の声が響くが、俺の目にはもう、あの少女しか映っていなかった。
間に合ってくれ…!!
強く心の中で思う。
神様は俺に一度舞い降りてきてくれた。
だけど、もう一度!
もう一度だけ…見ていて…ください!!
もう、嫌なんだ!!
焼き続ける木がその少女へと直撃しようとした。
走りこんだ勢いを殺さずそのまま滑り込み。
地面と制服がこすれる音が奇妙に耳に響いて埃を撒き散らしながら。
ぎりぎりその妖怪を助けた時、その瞬間は助けてあげられた喜びで一杯になった。
「だ、大丈夫…か…?」
そして、複雑な感情が、後から流れ込んできて、俺は闇を見つめて止まってしまう。
今にも泣き出しそうな表情を浮かべている少女は、食べようとしていた人間に助けられたことに驚きを隠せないのか、
受け止めた手の中でうろたえていた。
お、俺は…一体…。
「ふんっ、お人好しめ」
俺を睨みつけて、助けてくれた女性は去っていってしまった。
一瞬静止してしまうものの、その女性を追いかけようと、受け止めた少女を優しく地面へ預けて走り出そうとする。
しかし…。
「まっ、待って」
振り向くと、腰が抜けてしまっているのか、その妖怪は立てないまま俺の手を握っていた。
その瞳は微かに揺れていて、目の端には涙が浮かんでいる。
「あなた、名前は…?」
体は動かないのだろう。
それでも、その手はしっかりと強く握られていた。
「白鳥だ、急ぐからな」
そう簡単に終わらせると、しっかり握ってくれた手を離してくれた。
少女にも優しさがある、その点が確認できただけで俺は満足だ。
暗い闇の中、なんとか橙を探し出す。
すぅ、すぅ、とこの窮地を脱出できたのを感じているのか、優しい寝息が聞こえてきた。
「橙、よく頑張ったね」
その頭を優しく撫でてあげると、猫なで声を漏らした。
「よし、もうちょっとだけ我慢してね」
起こさないように橙をおんぶして、俺はあの女性を追った。
「ま、待ってくれよ!」
闇に叫ぶも、返事は聞こえなかった。
――――――――――――――――
「る、ルーミアちゃん、大丈夫?」
抜けていた腰がやったとこさ戻ってきたのだろうか、翼の生えたその少女は、もう一人の妖怪へ近寄った。
「…大丈夫、なのかなぁ~…」
服がもともと黒いのか、それとも、先ほどの爆発で焦げてしまったのかわからないところである。
「…私、人間食べようとするの、やめようと、思ったの…」
「……もともと、人間食べる妖怪は、どうするのかぁ…」
「それは、力を強くするためだけじゃないのぉ?」
「…そーなのかー?」
「……」
―――――――――――――――――――――――――