黒い雲達が大きな雨粒を降らせ始めたのは、柳達が衝撃な事実を目の当たりにしてすぐだった。
雨は赤い光を消化していったが、赤い光は柳達の大切なものを焼き尽くしてしまっていた。
―――――――――――――――――
家族達の帰るべき場所へ降り立つと。
そこには黒くこげて、崩れ落ちてしまっている家と野菜達があった。
見るにも無残な姿になっていた営んできた場所。
周辺に生えていたであろう木々も黒く色を変化させてあちこちに倒れてしまっている。
薄暗い闇へ雷が炸裂すると、視界は一瞬だけ光を蓄えたため、全て白へと変わる。
畑の隅
真っ白な視界の中で
そこには
黒い灰となった何かが積もっていた。
僕は知っている、ここにいて、ここに引っ越してきて、ここでみんなを迎えて
ここで僕達と生活をした、その存在を…。
膝から崩れ落ちて
黒く、灰になってしまった彼女の目の前で
僕は嵐の雨か、それとも自分の悲しみなのかわからないぐらいの涙を流した。
「そんな、そんなの・・・ないだろ、だって、だって・・・」
こんな現実から目を背けたかった。
彼女が僕の肩に手を置いて、冗談だよと笑ってくれないだろうか。
「だって、彼女は言ってたんだ…人が嫌いだって、人間が嫌いって…。
それなのに人間を愛する世界へと変わってしまったことをなんとか受け止めて、僕と共に変わろうって!!! 変わろうって約束したばかりなのに…。
こんなひどすぎる、ひどすぎる…!!!」
彼女であろう灰を胸の前で握り締めて、天へと泣き叫んだ。
柳だけではない、共過ごしてきた仲間達も悲しみに満ちた表情を受かべ、涙を零した。
「う’うぅ…あ’あ’あ’あ’あ’あああああああああああああああああああッツ!!!!」
そんな柳の叫び声も、嵐は掻き消していった。
その後、ずぶ濡れになった五人を受け入れてくれたのは柳の母親であった。
母親は何も言わずに五人を家へ上げた。
決して理由は聞かなかった。
母親は柳の表情で、何があったのかを悟ったのだ。
「みんな、お風呂に入ってきなさい、今晩はゆっくり、寝なさい」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
翌朝、嵐は全ての雲を取り去ってくれたのか、快晴であった。
しかし、部屋の空気は、とても重い。
柳は沈んだ口を開き、母親へ事情を説明した。
「やーくん、そんなことがあったのね…」
俯き加減の柳とは違い、母親はしっかりと、柳を見つめていた。
「多分、やーくんのことだから、自分のせいで…とか思っているのでしょう?」
「えっ…」
まるで思考を見透かされたような表情。
「違うよやーくん、そのアルラウネちゃんはきっと、やーくんに生きていて欲しいと思っているわ」
「でも、僕は約束したんだ、彼女と変わろうって…」
「だったら、変わっていきなさい。心の中の彼女と共に」
そう言う母さんの声は、とても芯があって…。
まるで、凍っていた湖を中心から揺らしていく。
「彼女の両親はもういないといっていたね?だったらあなた達五人がしっかりと覚えていなとだめじゃない!
もう、あなた達しか覚えている人はいないんでしょ?」
「母さん…」
「彼女を忘れちゃだめ、彼女を心に思い、きちんとあなた達も変わっていきなさい、精一杯前を向いて行きなさい…。それが彼女の願いであるはずよ
きっと…」
出会ったこともないのに、母さんは僕よりもずっと…ずっと…。
アルに顔向けできるような言葉をかけてくれていた。
「母さん、母さん…ありがとう…。まだ完全に立ち直れる気はしないけどさ」
「それでいいの、泣きたい時は泣いて、友人、恋人、誰にでもその重りを傾けなさい…。そうすればきっと前へ向く勇気を持てるはずよ」
「お母様…」
「うん…」
悲しみに暮れていた家族達は、母親の言葉を聞いてそれぞれ頷き、顔を上げ、心を取り戻していった。
「…家は焼けてしまったけど、畑は焼けてしまったけどさ…。また一からやり直そう、そしてみんなで変わっていこう」
そのみんなには、きっと、アルも含まれているはずだ。
「そぅ、やーくんらしく生きていきなさい、そして、また帰ってきた時に迎える場所を作っておくのよ」
帰る、場所…?
最後の言葉はよく、わからなかったけど。
また、一からやり直せばそれでいいという、ことなのだろうか…。
「みんな…まだ、心の傷は癒えないだろうけど…。僕と共に着いてきて欲しい」
家族の方へ向くと、先ほどの暗い表情は変わり、みんなが僕を見上げてくれていた。
とても、真剣な眼差しで…。
「勿論です、私は柳さんの傍にいつでもいますよっ」
「あぁ、あいつと共に過ごした場所を取り戻そう」
「風も手伝うよっ!パパの役に立てるのなら!」
「力仕事なら任せてくれ、それが私にできる唯一のことだからな…」
柳はまた泣いてしまっていた。
それはきっと
悲しみの涙であり、みんなの温かさによって生まれた涙であるのだ。
もう一度、一からやり直そう。
彼女と共に過ごした場所を取り戻そう。
そう 家族達と共に決心したのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
オレンジ色の日光が差し込む畑には、アルの小さなお墓が建てられていた。
誰にも伝えずに、柳は一人で家に登っていた。
「ごめんね、こんな小さなお墓しか作れなくて…」
焼けて死んでしまうなんて…苦しかっただろうね…でも、もう安心していいよ。
ここでゆっくりとおやすみなさい。
焼けて、灰になってしまったアルの形見は何もなくなっていた。
はずなんだ。
でも、僕は持っている、彼女がくれた木のペンダント。
僕と、アルの、絆の証。
奇跡的に、僕の胸の中にはそれがある。
「アル、これは一緒に埋めておこうと思うよ」
それから言葉は必要ないと思った。
―もう一度、この場所を取り戻した時、またこのペンダントを身につけるね。
――そこからまた、変わっていこう。
――そしたら ペンダントの中開けてもいいよね…。
優しい風が焼き尽くされたこの地へと舞い始める。
それはまるで、アルが僕のことを後押ししてくれているように思えたのだ。
――約束だよ
―――――――――――――――――――――――――さようなら
―――なんていわないよ
そう、アルが心の中で呟いた気がした。
雨は赤い光を消化していったが、赤い光は柳達の大切なものを焼き尽くしてしまっていた。
―――――――――――――――――
家族達の帰るべき場所へ降り立つと。
そこには黒くこげて、崩れ落ちてしまっている家と野菜達があった。
見るにも無残な姿になっていた営んできた場所。
周辺に生えていたであろう木々も黒く色を変化させてあちこちに倒れてしまっている。
薄暗い闇へ雷が炸裂すると、視界は一瞬だけ光を蓄えたため、全て白へと変わる。
畑の隅
真っ白な視界の中で
そこには
黒い灰となった何かが積もっていた。
僕は知っている、ここにいて、ここに引っ越してきて、ここでみんなを迎えて
ここで僕達と生活をした、その存在を…。
膝から崩れ落ちて
黒く、灰になってしまった彼女の目の前で
僕は嵐の雨か、それとも自分の悲しみなのかわからないぐらいの涙を流した。
「そんな、そんなの・・・ないだろ、だって、だって・・・」
こんな現実から目を背けたかった。
彼女が僕の肩に手を置いて、冗談だよと笑ってくれないだろうか。
「だって、彼女は言ってたんだ…人が嫌いだって、人間が嫌いって…。
それなのに人間を愛する世界へと変わってしまったことをなんとか受け止めて、僕と共に変わろうって!!! 変わろうって約束したばかりなのに…。
こんなひどすぎる、ひどすぎる…!!!」
彼女であろう灰を胸の前で握り締めて、天へと泣き叫んだ。
柳だけではない、共過ごしてきた仲間達も悲しみに満ちた表情を受かべ、涙を零した。
「う’うぅ…あ’あ’あ’あ’あ’あああああああああああああああああああッツ!!!!」
そんな柳の叫び声も、嵐は掻き消していった。
その後、ずぶ濡れになった五人を受け入れてくれたのは柳の母親であった。
母親は何も言わずに五人を家へ上げた。
決して理由は聞かなかった。
母親は柳の表情で、何があったのかを悟ったのだ。
「みんな、お風呂に入ってきなさい、今晩はゆっくり、寝なさい」
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翌朝、嵐は全ての雲を取り去ってくれたのか、快晴であった。
しかし、部屋の空気は、とても重い。
柳は沈んだ口を開き、母親へ事情を説明した。
「やーくん、そんなことがあったのね…」
俯き加減の柳とは違い、母親はしっかりと、柳を見つめていた。
「多分、やーくんのことだから、自分のせいで…とか思っているのでしょう?」
「えっ…」
まるで思考を見透かされたような表情。
「違うよやーくん、そのアルラウネちゃんはきっと、やーくんに生きていて欲しいと思っているわ」
「でも、僕は約束したんだ、彼女と変わろうって…」
「だったら、変わっていきなさい。心の中の彼女と共に」
そう言う母さんの声は、とても芯があって…。
まるで、凍っていた湖を中心から揺らしていく。
「彼女の両親はもういないといっていたね?だったらあなた達五人がしっかりと覚えていなとだめじゃない!
もう、あなた達しか覚えている人はいないんでしょ?」
「母さん…」
「彼女を忘れちゃだめ、彼女を心に思い、きちんとあなた達も変わっていきなさい、精一杯前を向いて行きなさい…。それが彼女の願いであるはずよ
きっと…」
出会ったこともないのに、母さんは僕よりもずっと…ずっと…。
アルに顔向けできるような言葉をかけてくれていた。
「母さん、母さん…ありがとう…。まだ完全に立ち直れる気はしないけどさ」
「それでいいの、泣きたい時は泣いて、友人、恋人、誰にでもその重りを傾けなさい…。そうすればきっと前へ向く勇気を持てるはずよ」
「お母様…」
「うん…」
悲しみに暮れていた家族達は、母親の言葉を聞いてそれぞれ頷き、顔を上げ、心を取り戻していった。
「…家は焼けてしまったけど、畑は焼けてしまったけどさ…。また一からやり直そう、そしてみんなで変わっていこう」
そのみんなには、きっと、アルも含まれているはずだ。
「そぅ、やーくんらしく生きていきなさい、そして、また帰ってきた時に迎える場所を作っておくのよ」
帰る、場所…?
最後の言葉はよく、わからなかったけど。
また、一からやり直せばそれでいいという、ことなのだろうか…。
「みんな…まだ、心の傷は癒えないだろうけど…。僕と共に着いてきて欲しい」
家族の方へ向くと、先ほどの暗い表情は変わり、みんなが僕を見上げてくれていた。
とても、真剣な眼差しで…。
「勿論です、私は柳さんの傍にいつでもいますよっ」
「あぁ、あいつと共に過ごした場所を取り戻そう」
「風も手伝うよっ!パパの役に立てるのなら!」
「力仕事なら任せてくれ、それが私にできる唯一のことだからな…」
柳はまた泣いてしまっていた。
それはきっと
悲しみの涙であり、みんなの温かさによって生まれた涙であるのだ。
もう一度、一からやり直そう。
彼女と共に過ごした場所を取り戻そう。
そう 家族達と共に決心したのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
オレンジ色の日光が差し込む畑には、アルの小さなお墓が建てられていた。
誰にも伝えずに、柳は一人で家に登っていた。
「ごめんね、こんな小さなお墓しか作れなくて…」
焼けて死んでしまうなんて…苦しかっただろうね…でも、もう安心していいよ。
ここでゆっくりとおやすみなさい。
焼けて、灰になってしまったアルの形見は何もなくなっていた。
はずなんだ。
でも、僕は持っている、彼女がくれた木のペンダント。
僕と、アルの、絆の証。
奇跡的に、僕の胸の中にはそれがある。
「アル、これは一緒に埋めておこうと思うよ」
それから言葉は必要ないと思った。
―もう一度、この場所を取り戻した時、またこのペンダントを身につけるね。
――そこからまた、変わっていこう。
――そしたら ペンダントの中開けてもいいよね…。
優しい風が焼き尽くされたこの地へと舞い始める。
それはまるで、アルが僕のことを後押ししてくれているように思えたのだ。
――約束だよ
―――――――――――――――――――――――――さようなら
―――なんていわないよ
そう、アルが心の中で呟いた気がした。