翌日、僕とメコとリオとアヤと風で町へと出かけた。

それは、アルが家の中でも過ごせるように、アル向けの大きな植木鉢を買いに来たのだ。

「アルさんを説得できたんですね、柳さん」

「説得というと何か違う気がするけど、とりあえず、できたよ」

ニコニコと納得のいく結果を聞けたのか、メコは笑顔でうなずいた。

「やっぱり柳さんはすごいです」

いや、僕はそこまですごくはない。

僕はアルを追い込んでしまった不器用な奴なんだ…。

でも、不器用なりに、アルと共に変わろうと約束した。

今日と、明日と…一歩一歩変わっていこうと思う。

もうすでに、手を繋いでも震えることはなくなった、それだけで大きな一歩だろう。

「それにしても、この大軍勢で来ることもなかったのではないですか?」

メコは並んで歩いている、三人の魔物を見た。

「魔物は多いほうが楽しいってねっ、荷物もでかいし、ありがたいよ」

「まぁな、力仕事は任せておけって」

「アヤとリオの二人がいてくれると頼もしいよ」

町へと出始めると、以前とは家族が増えた柳達は注目を浴びた。

魔物四人と共に人間である男が歩いているのだから、それは当然である。

「すいません、アルラウネを入れるようなでかい植木鉢ってありますかね?」

「あぁ、それなら向こうの店にあるよ」

魔物との共存が始まってからだろうか、こういった魔物向けの商品が増えてきた。

正直、一発で店を勧められるなんて思ってなかったため、拍子抜けした。

「あっちだって、いこっか」

「結構、俺らって目立ってるんだな」

「人ごみは少々苦手だ…」

リオとアヤが周りを見渡しながらそういった。

「アヤさん、頑張ってください」

メコが胸の前で握りこぶしを二つ。

「確かこの世界って一夫一妻だったよね、だとしたらこの状況は確かに珍しいんじゃないかなぁ」

見世物にされるのは気に食わないけどね。

「お、あったあった」

その店の看板名は「アルラウネ用植木鉢専門店」というものだった。

「せ、専門店まであるんだねぇ…」

しかも、名前がそのままなのである。

早速店の中に入ってみると、植物を入れる植木鉢なんか比じゃないぐらいのでかい植木鉢がそろっていた。

本人が来てくれれば大きさとかわかるんだけど…。

「お客さん、アルラウネ用の植木鉢をお探しでしょうか?」

多分、この店に来たみんながそうだと思うけど、店員さんに決まり文句だから仕方ない。

「うん、成人したアルラウネぐらいなんだけど、大きさってどれぐらいがいいかな?」

店員さんは柳に耳打ちをした。

「後ろの魔物さんに、アルラウネさんもプラスとは、お客さん以外にやりますね」

「へっ?」

そんなことを言われて、柳は変な声で返事してしまう。

「成人したアルラウネの植木鉢ですね?普通ですとこれぐらい、ですねぇ」

と言って店員さんが持ってきたのは、井戸の穴程のでかい植木鉢。

「じゃ、じゃあそれでいいかなぁ…」

「はーい、ありがとうございます!」

基準がわからない柳には、店員の目に頼るしかなかった。

「というか、別に重くはないんじゃないか?」

植木鉢を肩で掲げているリオは言い張っていたので、ためしに持ってみると筋肉が張り裂けるかと思った。

さすがは力持ちだ…。

「パパ、今日はお母様に会いに行かないのですか?」

「そうだね、今日は早めに帰りたいし、アルも待っているからさ…というかメコ、もう柳さんでいいよ」

「むーっ、柳さんっ…」

「だって、柳さんの方がよっぽど…それっぽいよ?」

「柳さんっ!…」

頬を膨らませてすねていた顔が一瞬のうちに、満開の花のように笑顔咲く。

「メコは表情豊かで面白いな」

アヤが二人のやりとりを見ててそう呟いた。

「パパぁ~、お菓子とか何か買ってこーよ?」

柳と同じくらい身長のある風が腕を組みながらおねだりしてくる。

何だろう、この子供っぽい言い草と大人な風貌のギャップ…。

そこが可愛いところでもあるのだけど

「うーん、アルは一人で待ってるからさ、早めに帰ろっ?」

むーっとじと目で見てくるものの、少し頭で考えてから…。

「うん、そだね、やっぱり一番我が家が落ち着くからね」

すりすりと腕に頬をすりつけてそう呟いた。

「むーっ、風ちゃんばっかりずるいですよ」

私も同じことしたいですぅーと反対側の腕を組み始めるメコも同じように、すりすりし始めた。

こちらはこちらでふんわりとしたネコミミが当たってくすぐったい。

「おいおい二人とも、そろそろ行くんじゃないのか?」

「そ、そうだね…リオは荷物を持ってくれてるから、あまり長く持たせるのも悪いね」

「じゃあ、さっさと帰ろうか」と言うと、家族達はそろって「おっー!」と声を上げて、家路へと着こうとしていた。


しかし、先ほどの青空は一変していた、晴れやかであった表情は薄暗く曇り始め、風は激しさを増そうと予告している。

「こ、これは…」

「あ、嵐かもですっ」


「あ、嵐だと!?こんな状況で嵐など来たら、家に帰れなくなるぞ」