太陽が山へと隠れ始め、オレンジ色の光が緑を赤く染め上げる。
情熱的な絵の具が、青の絵の具と混ざり合おうとしている時刻。
「…柳ともう少しだけ一緒に作業してたいの」
柳は迷っていた、あの言葉が表なのか、それとも裏なのか…。
本能なのか、精神なのか…。
「もうそろそろ、いいかな?夕食の準備も出来てる頃合だし、農作業終わりにしよっか」
柳は気を遣ってアルへと強引に投げかけて、背を向ける。
しかし、土の中から出てきたツルによって足元を絡め取られてしまう。
「待って、柳!」
「あ、アル…もしかして、無理してるんじゃないのか?僕に気をつか…ッ」
僕に気を遣って長くいようとして、あの時の本音を誤魔化そうとしているのではないか?
そんな残酷な言葉を口にしてしまおうと柳はしてしまった。
しかし…。
「無理しているのは、柳の方だよ!」
柳の言葉を遮ってアルが大きな声をあげた。
「えっ」と動揺を隠せない柳に、アルはツルで柳を手繰り寄せた。
「見ててもわかるよ、柳は無理してる、あたしに気を遣って無理矢理元気に見せて…」
「そんなのちっとも嬉しくないよ!!だからあたしは嫌だった…あたしの本音を話すことが怖かった」
目の前まで手繰り寄せたアルは、柳の肩を全力で掴んだ。
そう、柳は今まで通り接しようと努力するあまり、アルを追い込んでいた。
「今までの生活、明日には変わってしまいそうで怖かった」
「アル…」
柳は言葉が出ないまま、アルをただ、見つめることしかできなかった。
「でも、変わってもいいと思ったの、柳とだったら変われると思ったの!!
あの日、柳が言ってくれた温かさが、まだこの手の中に残ってる。
この温かさを感じさせてくれるのなら、あたしはきっと変われると思ったの!!」
「だから、無理に今まで通りにしようと、しないで…」
アルは、泣いていた。大粒の涙を流して、それでも真剣に柳を見つめる。
アルは自分の過去と向き合おうと決心していた。
「本音を誤魔化そうとしているあたしも、暗い過去を話している時のあたしも
柳に受け止めてほしいの!!…だから無理に見ないふりなんてしないで
きちんとあたしを見つめて、あたしの本音を見てて!!あたしが変われるかどうか、柳が見てて欲しいの」
柳は、自分のやってきたことが大間違いだということに気付き、心を痛めた。
アルを気に掛けるあまり、アルに重い負担をかけていた。
「手、繋いでいいかな」
アルはそっと柳の方へ手を持ってきて、柳は迷いなくアルの手を握った。
「ごめんね、アル…アルにばかり苦しい思いをさせてしまって…」
「ううん、いいよ…あたし、柳のことこれでも、信じてるんだから…」
「…うん、アル、一緒に変わろう…というかこれでも、とかいうな」
アルの手を胸の前で握ってあげると、涙を含んだ表情が微かに揺らいだ。
「温かい…柳の温かさが手の中に伝わってくる」
「柳」
「んっ?」
アルが柳の名前を呼ぶ。
「…あたしもみんなと一緒に家の中で過ごしたいよ」
「その言葉が聞けただけで、僕は精一杯、頑張れるよ」
柳はアルの頭を優しく撫でてあげると、アルは静かに目を細めた。
-----------------------------------------------------
それから、アルは夕暮れを眺めながら、ぽつぽつと過去を話し始めた。
「魔王が代替わりし始める前、あたしの父と母は人間に焼き殺されたの」
その一言だけで、柳は人間が嫌いな理由が把握できた。
柳は間接的な原因であり、間接的な殺害犯でもあった。
「そっか…だから、人間が怖いんだね」
「うん、またあの悪夢が蘇ってくる、みたいで…」
あぁ、似ている、アルと僕は似ているのかも、しれない。
でも、アルは僕の過去を知るはずが無い。
「アルは僕と似ているね。僕も…父と母を魔物に殺されてしまったんだよ」
「えっ…柳、も…?」
柳達は、どちらも間接的な殺人犯であった。
だからこそ…。
「でもね、僕にはいつでも傍にいて、いつでも僕のことを支えてくれるメコがいる、守ってくれるリオがいる
いつでも陽気な君がいる、だから怖くなんかないんだ」
「そう、だね」
「だから、今度は僕がアルを支えてあげる…メコがやってくれたようにね…」
「もぅ、二人っきりの時に他の魔物の話は禁止なのにぃなぁ…」
そう蚊の鳴くように呟いたアル。もちろん、柳に聞こえてるはずもなかった。
夕暮れが終わろうとしている時、アルが柳へとあるものを手渡した。
「ねぇ、柳、これもってて欲しいの」
アルが渡したのは、木でできたペンダントだった。
「…これ、は?」
「柳があたしの手を握ってくれたとき作ったの。柳にずっと持っていて欲しいって思って…」
両手にあるペンダントを優しく包み込んだ。
「そっか、ありがとうね…大切にするよ」
柳の温かさがいつでも手の中に残っているように
そのペンダントであたしの温かさも持っていて欲しいと思ったから…なんていえるわけないよ。
柳はすごいっ…。一日でここまであたしを変えてしまうのだから
・・・。
もう、充分あたしは変わっているかもしれない…。
そんなことを思うアルであった。
情熱的な絵の具が、青の絵の具と混ざり合おうとしている時刻。
「…柳ともう少しだけ一緒に作業してたいの」
柳は迷っていた、あの言葉が表なのか、それとも裏なのか…。
本能なのか、精神なのか…。
「もうそろそろ、いいかな?夕食の準備も出来てる頃合だし、農作業終わりにしよっか」
柳は気を遣ってアルへと強引に投げかけて、背を向ける。
しかし、土の中から出てきたツルによって足元を絡め取られてしまう。
「待って、柳!」
「あ、アル…もしかして、無理してるんじゃないのか?僕に気をつか…ッ」
僕に気を遣って長くいようとして、あの時の本音を誤魔化そうとしているのではないか?
そんな残酷な言葉を口にしてしまおうと柳はしてしまった。
しかし…。
「無理しているのは、柳の方だよ!」
柳の言葉を遮ってアルが大きな声をあげた。
「えっ」と動揺を隠せない柳に、アルはツルで柳を手繰り寄せた。
「見ててもわかるよ、柳は無理してる、あたしに気を遣って無理矢理元気に見せて…」
「そんなのちっとも嬉しくないよ!!だからあたしは嫌だった…あたしの本音を話すことが怖かった」
目の前まで手繰り寄せたアルは、柳の肩を全力で掴んだ。
そう、柳は今まで通り接しようと努力するあまり、アルを追い込んでいた。
「今までの生活、明日には変わってしまいそうで怖かった」
「アル…」
柳は言葉が出ないまま、アルをただ、見つめることしかできなかった。
「でも、変わってもいいと思ったの、柳とだったら変われると思ったの!!
あの日、柳が言ってくれた温かさが、まだこの手の中に残ってる。
この温かさを感じさせてくれるのなら、あたしはきっと変われると思ったの!!」
「だから、無理に今まで通りにしようと、しないで…」
アルは、泣いていた。大粒の涙を流して、それでも真剣に柳を見つめる。
アルは自分の過去と向き合おうと決心していた。
「本音を誤魔化そうとしているあたしも、暗い過去を話している時のあたしも
柳に受け止めてほしいの!!…だから無理に見ないふりなんてしないで
きちんとあたしを見つめて、あたしの本音を見てて!!あたしが変われるかどうか、柳が見てて欲しいの」
柳は、自分のやってきたことが大間違いだということに気付き、心を痛めた。
アルを気に掛けるあまり、アルに重い負担をかけていた。
「手、繋いでいいかな」
アルはそっと柳の方へ手を持ってきて、柳は迷いなくアルの手を握った。
「ごめんね、アル…アルにばかり苦しい思いをさせてしまって…」
「ううん、いいよ…あたし、柳のことこれでも、信じてるんだから…」
「…うん、アル、一緒に変わろう…というかこれでも、とかいうな」
アルの手を胸の前で握ってあげると、涙を含んだ表情が微かに揺らいだ。
「温かい…柳の温かさが手の中に伝わってくる」
「柳」
「んっ?」
アルが柳の名前を呼ぶ。
「…あたしもみんなと一緒に家の中で過ごしたいよ」
「その言葉が聞けただけで、僕は精一杯、頑張れるよ」
柳はアルの頭を優しく撫でてあげると、アルは静かに目を細めた。
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それから、アルは夕暮れを眺めながら、ぽつぽつと過去を話し始めた。
「魔王が代替わりし始める前、あたしの父と母は人間に焼き殺されたの」
その一言だけで、柳は人間が嫌いな理由が把握できた。
柳は間接的な原因であり、間接的な殺害犯でもあった。
「そっか…だから、人間が怖いんだね」
「うん、またあの悪夢が蘇ってくる、みたいで…」
あぁ、似ている、アルと僕は似ているのかも、しれない。
でも、アルは僕の過去を知るはずが無い。
「アルは僕と似ているね。僕も…父と母を魔物に殺されてしまったんだよ」
「えっ…柳、も…?」
柳達は、どちらも間接的な殺人犯であった。
だからこそ…。
「でもね、僕にはいつでも傍にいて、いつでも僕のことを支えてくれるメコがいる、守ってくれるリオがいる
いつでも陽気な君がいる、だから怖くなんかないんだ」
「そう、だね」
「だから、今度は僕がアルを支えてあげる…メコがやってくれたようにね…」
「もぅ、二人っきりの時に他の魔物の話は禁止なのにぃなぁ…」
そう蚊の鳴くように呟いたアル。もちろん、柳に聞こえてるはずもなかった。
夕暮れが終わろうとしている時、アルが柳へとあるものを手渡した。
「ねぇ、柳、これもってて欲しいの」
アルが渡したのは、木でできたペンダントだった。
「…これ、は?」
「柳があたしの手を握ってくれたとき作ったの。柳にずっと持っていて欲しいって思って…」
両手にあるペンダントを優しく包み込んだ。
「そっか、ありがとうね…大切にするよ」
柳の温かさがいつでも手の中に残っているように
そのペンダントであたしの温かさも持っていて欲しいと思ったから…なんていえるわけないよ。
柳はすごいっ…。一日でここまであたしを変えてしまうのだから
・・・。
もう、充分あたしは変わっているかもしれない…。
そんなことを思うアルであった。