サラ、さすらいと別れ、次の町へ向かう途中。

俺と魔王は剣の稽古をしていた。

「アツキは、ナミのおかげで精霊をより広く使えることになったわ」

「そうだね」

精霊の力を借りなければろくに魔法や魔術を使えなかった。

「今から、剣と精霊を融合させた戦い方をビシバシ教えていくわ」

「剣と精霊を融合?」

「そう、普通の魔術もこれから教えていくとして、まずは得意の剣とともに使った魔術を教えるわ」

「うーん?イメージがあまりつかめないというか…。具体的に言えば?」

「そうね、剣はもともと無属性だけど、精霊の力を借りた一振りなら属性攻撃に変換できたりするわ」

「あぁ、剣に炎をともしたりする奴ね」

「そんな感じよ。アツキはまだあまり大きな魔術は使っていないようだわ…サラマンダーとシルフは別として…」

「…?なんで?」

俺は首を傾げて見せた。

「精霊の力を借りて魔術を発動しやすくさせるのは、何も魔力だけが関係しているわけじゃないわ、精霊との友好関係もばっちり関係してるの」

「へ、へぇ…サラマンダーとシルフは俺に友好的?」

「えぇ、私から見ればそう思えるわ。サラマンダーはあなたのことをとても気に入っているみたいだし、シルフは住処を救い出してもらったのでしょうね、かなり好意的だわ」

…な、なるほど。

「ちなみに、アツキがドラゴンに使った、ノームの鈍足魔術は基礎中の基礎よ。それに対して、サラマンダーの灼熱の炎は比じゃないわ」

そうだ、ウンディーネと戦ったときにはどす黒い炎をまとうことができた。

「とりあえず、魔術を使いこなせるようになることも大切だけど、精霊との友好関係もしっかりね」

「あぁ、まぁ…そういうのは意識しないほうがいい」

「そうね…アツキにはあまり気にしなくてもいいかもしれないわ」

魔王は、今まで見てきた俺の姿を理解し、そう言ったのだろう。

「じゃあ、魔術の基礎を教えていくわね」

それから、魔王の魔術レッスンが始まった。

「魔術は精度の高いければ、より強力になるの。上級魔法だから強いというわけではなく、初級魔法や基礎の魔法だって、強力なものへ変化していくわ」

「なるほど…あのノームの技もか」

多分、ナミの魔力と融合したおかげだろう。

「そうね、一例にすぎないけれど、精度を高くすれば多くの敵の動きを封じることができるわ。他の魔術も同様よ」

「なるほど、魔王はわかりやすいくていいな」

「そう?ふふっ、私だって、魔術暦長いもの」

腰に手を当て、胸を張る魔王。

「さて、ここから本題だけど、精霊の魔術は他の魔術と違って精霊のイメージの共有ができるの」

「ふむ」

「例えば、アツキがなんとなく出した精霊の魔法。それは精霊のイメージの共有によって発動するものなの」

「うーん?」

「わかりづらいわね。例えば魔術を発動するのに必要な魔法陣。この魔法陣のイメージが精霊の中ではできているのに、術者の中ではできていない状態でも、その魔術は発動するの」

「そうなのか」

「うん、その代わり、大量の魔力を消費するわ。だから、あなたはあまり魔術を使えないの」

「うーんと、ってことは、自分の中でのイメージに魔法陣が完成していれば?」

「消費する魔力は低くなって、魔術の精度は上がるわ」

「あぁ…だから、俺は早速魔術が使えてたんだな」

それは、無知な俺じゃなくて、魔法陣のイメージができている精霊のおかげなんだ。

「少し私が教えたからよ。ここまで深く突っ込まなくてもいいかなーって思ってたから、アツキは剣を使うのだし」

「まぁ、そりゃそうだ」

今は事態が変わってしまったのだ。

「では、実践に入るわ、まずは魔法陣のイメージを作ることから」

「おぉ、魔術師っぽい!」

「地面に書く魔法陣をなんとなくでいいからイメージしてみてね」

すると、魔王は簡単に○と☆を書き、その間に数字や記号を並べていった。

「こ、これを覚えろと…」

小さなのくせに、案外複雑。


「上級魔術になると、もっと複雑になってくるわ。でも、イメージができていれば、自然と書く記号も減ってきて、最終的には魔法陣を書かずともイメージだけで魔術を用意に発動できるわ、時間があれば、魔法陣は書いたほうがより強力になるけどね」

「そ、そうか…」

「大丈夫よ。最初っから全部覚えろ何ていわないわ、なんとなくイメージするの」

「わ、わかった…」

○と☆、そして単純な記号を覚えていく。

「たまに呪文が必要な魔術もあるけど、とりあえずイメージだけで発動できるわ」

「お、おぅ…」

「ここではウンディーネを使って、そのイメージをしてみて」

「わかった!ウンディーネ!!」

指輪が光り輝き、ウンディーネが出現する。

「じゃあ、今教えた魔法陣をイメージしてみてね」

言われたとおりイメージしてみると、かかれていた魔法陣から水が飛び出してきた。

それは間欠泉のごとく。

「最初っからこれだけの魔術になるなんて、ナミは相当だったのね…。それとも、アツキとの相性がよかっただけなのかな」

「おぉ、なんだこれ…」

「水の吹き出す圧力で敵をなぎ倒す魔術、スプレッドよ。精度が高ければいろんな位置から、何個も打つことが出来るわ」

「す、すげっ…」

縁遠い存在が、今や手の中にある…。

「アツキさん、久しぶりね」

すると、肩に乗ってたウンディーネが話をかけてきた。

「あ、そうだね」

「私としても、魔術の件に賛成するわ。これからバンバン使ってね」

「ま、まぁ、使うというのは申し訳ないけど…一緒に戦おうね」

「はいっ!」



「魔王、とりあえずこのような練習を続けていけばいいんだね?」

「そう、そうしていくうちにより強力なものになるわ」

「よしっ!俺はやるぜ…!立派な魔術師になってやる!!」

おっと、魔法剣士かな。

「もしもーし、目的かわってませんか…。」




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その日から、魔王との魔術訓練が始まった。

最初の魔術はウンディーネを行使した「スプレッド」。