翌朝、窓からの日差しにより、自然を感じながら朝を迎えた。

体を起こそうと両手に力を入れるものの、重くて起き上がれない・・・。

「…へ…?」

自分の体を起き上がらせることができないなんて現象は、はっきり言うとない!!

だとしたら…。

「って、ちょ、おまっ!」

胸元を見ると、サラが俺の上に乗り、静かな吐息とともに寝ていた。

「んっ…」

目をこすりながら、俺の顔を見る。

「…おはよう、アツキ」

「あぁ;…おはよう」


パチィィィィィィィィィィィン!!

生っぽい音が部屋中に響いた。



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「いてて…相変わらずの強力だなまったく…」

頬に赤くくっきりと手のひらのマーク。

「び、びっくりしたんだ。すまない」

「まったく、何やってるのよ…」

魔王が横で痛々しい頬をさすってくれている。

ちなみに、両頬を両腕ではたかれた。

「で?なんであんたは私達の部屋にいるのよ」

「そのことなんだが、昨日、宴会が終わった後疲れきってしまって…鍵の開いていたこの部屋で休ませてもらおうとしてたら、つい寝ちゃったんだよ」

「…アツキ、鍵掛け忘れたわね」

「ふぅ…すまない、これは俺にも落ち度があるな」

両頬をさする。

「アツキ、そういや、この女性は誰?というかアツキとどういう関係なんだ?」

「…どどどどういう関係って言われても・・・ねぇ?アツキ」

「この人はラズベリーっていう俺の連れだよ」

はたかれて赤くなっているところを何度も魔王に突っつかれた。

「いてて…何すんだよ…」

「知らないっ」

プイッと顔を逸らす魔王。

「そうか、てっきり恋人かと思ってた」

「あははは、やっぱりそう見えるよね~」

頭を掻いて苦笑いしてみる。

「え、アツキ…?」

「何さ?」

驚いたような表情で魔王は俺を見つめる。

「私達ってやっぱり夫婦に見えちゃうのかな…?」

ふ、夫婦…?

「恋人より階級あがってる気がするけど…見える人には見えるだろうね」

「そ、そっか…ふふっ」

魔王は、とても嬉しそうに笑った。

「わしもそう見えるのぅ」

「わっ!」

隣から声が聞こえてきた。

声からしてあの人物ということは予想がつくが…。

「さすらい…気配消して現われないでくれ、びっくりする…」

「すまぬのぅ、ドアをノックしても反応なし、開けて入っても話し込んでいるようじゃから」

「そうか…それはこっちがすまなかった…」

「よいのじゃ」

さすらいは笑顔で頷いた。

「さてと…サラとさすらいはこれからどうするんだ?」

「わしは旅を継続するぞ?サラ殿はどうするのじゃ」

とさすらい。

「俺はここに残って、この町の発展に貢献するつもりだ」

とサラ。

「そうか、サラなら絶対できるよ、応援してる」

サラの肩にポンッと手を置く。

「あぁ、任せておけ」

サラは微笑む。

「二人はどうするのじゃ?」


「俺もこの町へ残って…あ、嘘ですごめんなさい、ラズ!!その固い拳は誰にぶつけるものなんでしょうか…!!!」

はぁーと一つ、魔王は溜息をついた。

「私たちは旅を続けるわ、この次の町へこれから向かう」

「ふむ」

「さすらいとは一緒に行動できないの?」

「残念じゃが、アツキ達が来た方向へ向かう予定なのじゃ」

「そっかー」

なぜか魔王は安堵の息を漏らしていた。

「そんじゃ、俺は朝食作るから、三人で仲良くしててくれぇ~」


「「「…」」」

それから、三人はアツキが朝食を運び終えるまで無言であった。

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朝食を食べ終え、俺達一同は宿屋を出た。

「さて…ここからは別々の道だな」

「そうじゃのぅ」

「さすらいはとはもう三度目の再会になるから、なんだか面白いもんだな」

「そうじゃのぅ、わしも思っておったわ」

「俺とさすらいは、つい前まで赤の他人だったのに不思議なもんだ…だから、サラもきっと、また会えるさ」

「そうだな…」

「俺達は大切な友人なんだからな」



サラは間を置いて、三人を見つめる。

「また、俺を含めた四人で過ごしてみたいと思う…だから、絶対…会いに来てくれよ。ラズベリーも、さすらいも」

と、サラは言った。

「あたりまえじゃ、わしらは死に別れたわけじゃないのだからのぅ」

「そうだな!!」

「えぇ、そうだわ」

四人は笑顔で頷きあい、それぞれの道を歩いた。


「まぁ、私はあまりよくわからないんだけどね」

ポツリと呟く魔王。


「このような友人ができて、わしは嬉しいぞ、それでは、またじゃ、アツキ、サラ殿、ラズベリー殿」

俺達が元来た道を歩いていくさすらい。

「じゃあな、サラ」

「俺はここにいるからな」

腕を組んだサラが、真剣な視線を向ける。

「あぁ…!じゃ、ラズ、いこっか」

「うんっ」

そして、俺達二人は次の町へと歩み始める。


「…またな、アツキ、さすらい、ラズベリー」