サラが間違えて町の中で黒い鱗を身にまとったドラゴンを披露してしまったせいで・・・。

俺は町の人達に「ドラゴン族が襲撃に来る」と伝えてしまったんだ。

単なる出来事が積み重なって、今の悪夢を呼んだ。

サラは拒絶されてしまったんだ・・・・。

「サラを追う!!さすらいは今の状況を説明してくれ」

「しょ、承知した」


シルフの力を借りて、俺はサラの元へ急いだ。

「皆の者、聞いて欲しいのじゃ、先ほど御主達が追い返した人間に化けたドラゴンは、我達と共に戦った、町の恩人ぞよ」

「なんだと・・・?」「それは本当か」

「本当じゃ、御主達が追い返したせいで彼女は深く傷ついておるのじゃ、戻ってきたときには歓迎して欲しいぞ」

「・・・そうだったのか・・・」「悪い事してしまったな・・・」

正義を達成した快感に包まれていた住人のムードは一変した。

「わかってくれて嬉しいぞ・・・」

後はアツキがどうするかじゃ、頼んだぞ・・・アツキ。

「おっと…てめぇも魔物じゃねーか、魔物のいうことなんか聞けるかよ」



町人その一言に、さすらいの眉はピクンッと動いた。

「なんじゃと?」

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「サラ・・・どこだサラ!!」

広い草原を越えて、森の中へと入った。

町からは随分、離れてしまっている。

サラはこんなところまで来ているのだろうか。

そんな不安が渦巻く中、サラの背中を見つけた。

「さ、サラ・・・よかった無事で・・・」

彼女は森の中、独りでうずくまっていた。

「・・・なんだ、俺を笑いに来たのか」

「何言ってんだよ、俺はそんな奴じゃない」

「本当か・・・?」

「どんなにサラが変な顔でも笑ったりはしな・・・グッ・・・」

素早く強烈ストレートが、そのほっそりとした腕から放たれた。

腹が吹き飛んだかと…思った・・・。

「む、ムードって奴を考えろよな・・・全くよぉ」

「お前は手加減を考えろ…」

腹を抱えてうずまってしまう。

サラの顔を見上げると、彼女は涙を流していた。

「な、泣いてたのか?」

「わ、悪いかよ・・・」

「悪ぃ・・・・グハァァァ」

次に頭が吹き飛んでしまう。

「・・・ふんっ」

腕を組んでプンスカしてるサラ。

「・・・俺にもやっと居場所ができたと思ったのによ・・・こんなんじゃ・・・いつまで経っても独りじゃねーか・・・」

そんな彼女がポツンと弱い部分を吐き出した。

「群れにいたときもずっとずっと独りで・・・種族は違うけど、人間達と仲良くなれると思ったのによぉ・・・」

組んでいた腕を離し、目の当てて…。

サラは涙を流した。

長い間、辛い思いをしてきたのだろう。

「さ、サラ聞いてくれ、町の住人は勘違いしていただけなんだ。今、さすらいがきちんと説明してくれてわかってくれるさ」

「ほ、本当か?」

「あぁ、それに、隠したままよりかは、理解してもらった上で仲良くなった方がいいさ・・・それと・・」

俺を見下げているサラはパァと笑顔へ変わっていく。


「サラはもう独りじゃない、俺もいるさ」

さすらいもな。

「・・・アツキ・・・」

「帰ろうぜ、もうこんなしみったれたのは嫌だ」

「・・・おぅ!」


女っぽい一面があると思ったら、結局、男勝りな返事しやがって…。

「結構距離あるけど?」

「歩いていくほうが落ち着くから…」

「そっか、じゃまったりとな」

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