「なんだよ?お前等を参考に化けたんだが、何か間違いでもあったか?」
・・・。
俺とさすらいは顔を合わせて、汗を一つ垂らす。
「い、いや、間違いは無いんだけど、俺達の認識が誤っていたというか」
「ま、まったくじゃ・・・。我も勘違いしておったわ」
「??」
「御主、女じゃったのか」「君、女だったの!?」
「俺はどこからどうみても女だろうが!」
「・・・」
その言葉に対しては、なんともいえなかった。
人間の姿に化けた彼女はとても美しい格好をしていて、一目で女だとわかった。
「こりゃ、人間の町へ言ったら人気者にでもなりそうだな」
はっきりいって、かわいいのだ。
「そうじゃのぅ、隠しきれない美の魅力というわけか・・・人間限定じゃが」
「まぁ、こんなもんでいいんだろ?初めて人間の町へ向かうな、少しワクワクしてきたかもしれない」
口調も少し緩くなったか?まぁ、女性として見れるものではないが。
「ほら、さっさと行くぞ」
二人の首根っこを引っ張って歩き始める黒竜。
「そういや、黒竜、名前はなんていうんだよ」
「サラだよ」
・・・。
また、俺達は顔を見合わせた。
「・・・ドラゴンがサラって・・・ククク・・・」
ゴンッ!!!
と、鈍い音をたてて、俺の頭蓋骨を固い拳が貫いた。
さすらいはなんだか「あぶねー」って顔をしてそっぽを向き気味だ。
「・・・めちゃくちゃ痛い・・・」
「人の名前で笑う奴が悪いんだ」
確かにそうだけど・・・。これは…ひどく痛い。
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少し歩いて町へ到着すると、サラは目を輝かせて町を見渡した。
「いつも、中へ入ることはなかったのだが、改めてみると楽しそうだな」
やっぱり、人間に変わってから、女性という認識が強くなってきた。
「クエストの報酬は後で貰うとして、どこか行きたいところでもあるの?」
「俺は中に入ったことないから、何があるのかもわからない。アツキ達の好きにしてくれ」
「・・・サラに名前教えたっけか」
「そのリザードマンが呼んでたから呼んだんだ。悪いか」
「いや、それでいいよ・・・」
なんともとっつきにくい奴だなぁ。とか思いながら、目の前にあったものに注目する。
「そうだな、食材買いに行ったりするついでに色々見てみるか?」
「おぅ」
それから、サラとさすらいと食材を見て買ったり、ペットとして売られている生き物を見たり。
また魔法書や人間が扱う武器を見たりしていた。
「これ、おいしそうな実だな…ん?」
サラが指差した実を買ってやった。
「ほれ、食べていいよ」
「い、いいのか?」
「うん」
ハート型をした桃をかじったサラの頬が薄紅色に染まる。
「お、おいしいな…」
「こういうの食べたことないの?」
「俺等は基本、力がつくように肉とかしか食べないんだ…だが、たまにはいいものだな」
桃を見て嬉しそうに微笑む。
「喜んでくれようでなにより」
買ったかいがあるというものだ。
さすらいは人間の町とか良く慣れているのか、時々商人達と仲良く話している姿が見られた。
「さすらいは、何か欲しいものとかないの?」
「我は、我で買えるから大丈夫じゃ」
「さすらいには色々と世話になったから、何かあったら言ってくれよー」
「承知じゃ」
コクンと頷くさすらい。
「むっ!」
その刹那、さすらいは鋭い視線を上に向ける。
「アツキ!下がっておれ」
さすらいはそう言うと、双剣を抜いて上へ飛び上がった。
X字に重ねた剣をむけた瞬間、何かが青空から急降下してさすらいの剣とぶつかった。