それから、今まで出来事を思い返しながら、真っ直ぐに道を進み、自然豊かな町へと降り立った。
「ほぉ・・・ここは今まで見て来た町とは違って、家庭菜園してるんだ」
「自然豊かでいいわね」
風の町で見た風景に似ていた。
「さて、まだ食材はあまってるし、依頼掲示板でも見こようかな」
「いってらっしゃーい、先に宿屋で部屋借りてくるわ」
依頼掲示板というのは、困っていることや討伐して欲しい魔物などを自由に投稿できる掲示板で。
成功すれば賞金等がもらえるのだ。
ちなみに、俺もそれで生活費などをまかなっているので、定期的に利用させてもらっている。
「えーと、この町の依頼掲示板は・・・っと、・・・・お?」
掲示板に張り出されている依頼から外れ、ある人物と目が合った。
この町では結構浮いている・・・・。
「お、お主はアツキではないか、久方ぶりじゃのぅ」
相変わらずのじじ言葉のさすらいだった。
いい加減本名が知りたいところだ。
「久しぶり!・・・俺達と反対の道へ進んだのになんでこんなとこにいるんだよ」
「・・・いや、旅をしている戦士や勇者達と戦い、道を進んでいたらここに着いたのじゃ」
「・・・・え・・・まさか、この大陸一周してきたのか!?」
この大陸は、この世界の中でも一番広い面積を誇っている。
他は島国とかパラパラ大陸があるのだが…すごいことをやってのけちゃうんだもんなぁ。
「そういうことになるじゃろうか」
「すっげ…」
「ここで会ったのも何かの縁じゃ、どれ、我が剣の稽古をつけてやろうか?」
「お、まじでか」
確か、さすらいは強かったはず。
魔王もそうだが、他の人の稽古のやり方にも興味があった。
「よし、のった」
「それでは、外れの草原へ向かうかのぅ」
ついて来るように指示され、広い草原へと出た。
「ここなら、思いっきり剣を振るうことができるのじゃ」
ふぅーと背伸びをするさすらい。
「よっしゃー!さすらいに稽古つけてもらえるのはありがてー」
「アツキー喜んでおらんで剣を抜くのじゃ」
「あっ、わかった」
銀色の剣を抜く。
「アツキは我の攻撃スピードに追いついてくればよい、それが今回の稽古じゃ」
「追いつく?」
「そう、我に一撃も与えられないように防ぐのじゃ、これも一種の稽古じゃぞ」
なるほど・・・さすがさすらいだ。
「では、行くぞ」
さすらいは早いスピードで俺との距離を縮めて剣を抜いた。
二本。
「・・・って、ええ!?双剣かよ」
「そうじゃ、ほれ、一本と二本、どうやって防ぐかのぅ」
さすらいは二本の剣を同時に振り下ろしてきたので、俺は剣を盾にして防ぐ。
同時なのはいいのだが、左右交互に攻撃されては・・・。
「まずは右じゃ」
右の剣が横振りで迫ってくるのを、剣で防ぐ。
「次は左じゃぞ」
「くそっ」
右の剣を跳ね返して、左の剣を防ぐ。
「ほれ、次は右じゃぞ」
くそ、左の剣を跳ね返そうとしても、力強く俺の剣へ張り付いているみたいにびくともしない。
右の剣が迫ってくる。
「ちっ・・・!」
俺はさすらいの右手を押さえて、剣の動きを封じた。
「ほぅ、そうきたか」
それから、両手のたいみんぐを合わせてさすらいを吹き飛ばした。
「ふ、次はこうならないぞよ、さて、どうするかのう」
すぐに距離を縮めて、左右の剣を交互に、そしてあらゆる角度から振り下ろしてくる。
「くそ」
飛び上がったり、しゃがんだりしながら、俺の隙を突いてくるが。
なんとか避けたり、剣で防いだりしながらやり過ごす。
「どうしたのじゃアツキ!それでは体力が持たぬぞ」
剣を握っていた右腕に、防いでたときの衝撃が伝わり、もう痛みが生じてきた。
「くっ」
俺は攻撃してはいけない、この素早い衝き、振りをすべて防ぐには・・・・。
一本で・・・。
「右腕が・・・」
いや、まだまだ!!
「うぉら!!」
素早い動きになんとか一本で着いて行こうとするものの、やはり時間的に間に合わない。
な、何かさすらいの攻撃を防ぐ方法は・・・!
左の攻撃を剣で防ぐものの、痛みの蓄積により、剣を手放してしまった。
「あっ・・・・」
そのまま飛んでいく剣をなんとか左腕で掴み、右の攻撃を防ぐ。
「・・・っ!」
「ほぅ、なるほどぉ」
その瞬間、ひらめきが生まれた。
まずさすらいの重い一撃を左腕に持っている剣で、衝撃が左腕に蓄積されない程度に防ぎ、その衝撃をそのままに剣を空中に浮かせ。
素早く右腕で取り、左の攻撃を防ぐ。
まるで剣が俺のまわりを舞っているような感じで、衝撃の強さ等を感覚で覚え、跳ね返る場所などを計算する。
こうすることによって双剣の攻撃を防ぐ手段が生まれた。
「ふむ、面白いのぅ」
二本、同時の突きを剣の盾にして防ぐ。
その衝撃のまま後ろへ後引きずられてしまう。
「・・・アツキは面白い、見ていて飽きないのじゃ。よし、今日の稽古はここまでとするかのぅ」
「はぁ・・・はぁ・・・そ、そうだね」
「片腕だけに頼っていると隙が生まれやすいのじゃ、両腕を使い分け、剣をすり替えて防ぎ、攻撃することが大切じゃぞ」
「・・・なるほど、さすがだな」
「しかし、アツキの剣技はとても上等なものだったのじゃ・・・一体誰から教わったのじゃ?」
「旅の連れの人さ」
「・・・ふむ、あの女性のことかのぅ?」
「まぁそうだな」
「あの女性とも一戦交えてみたいものじゃ」
それはやめておいたほうがいい、消し飛ぶ。
「じゃ、ありがとうなさすらい」
礼をして、俺とさすらいは依頼掲示板へ戻った。